偏見とか差別などのいやな感情を正論のように語る人たちが増えているような気がして、息苦しさを感じていた。その空気から抜け出す清涼剤のようなものがほしくなって買ってみた。 姜尚中という在日韓国人の政治学者と、森巣博というオーストラリア在住の作家という、いわば日本をちょっと外からの視線で...
少年時代に殺人を犯してしまった男の回想という形で物語は語られる。主人公の少年はどこか『ライ麦畑でつかまえて』のホールデンを思い起こさせる。こちらは寡黙で饒舌なホールンデンとは正反対だが、周囲への不適応、ものの本質をみぬく大人びた視線、自分自身への苛立ちは共通だ。最初は、そういう少...
少年時代に昆虫に興味をもったことをのぞいて生き物に興味をもったことはほとんどない。昆虫のときは、彼らにとっては迷惑な話で、ちょっとした虐殺行為をやったりした。 今なぜ鳥かというと、同じ街に棲む仲間だと思えるからだ。散歩していると、さまざまな鳥を見かける。その名前や習性を知りたくなっ...
才能ある作家だったサックスという男が、いくつかの偶然の積み重ねから、幸福な家庭を投げ捨てて、全米の自由の女神を破壊してまわるテロリスト(人の命は奪わず、メディアを通じてアメリカという国のありかたを改めようというメッセージを流す)になり、結局は爆死してしまう。その事故を知った、やは...