ナイロン100℃『イモンドの勝負』

ナイロンとしては3年ぶりの新作公演とのこと。今回は徹頭徹尾100%混じり気なしのナンセンスコメディー。主人公は鈴木タモツという持病をもつ少年(でも39歳)で、実の母親に保険金目当てで殺されそうになるが助かって孤児院に入る。そこを訪ねてきた政府関係の組織の会長に見初められ、近々開催...

アレックス・パヴェージ(鈴木恵訳)『第八の探偵』

7編からなるミステリー短編集なのだけど、作中作という趣向が凝らされている。グラント・マカリスターという数学者が、ミステリーの構成についての自らの論文の実例として書いた短編集ということなのだ。各短編の合間に、作者グラントと出版のために彼を訪ねてきた編集者ジュリアとの対話が挟み込まれ...

阿佐ヶ谷スパイダース『老いと建築』

80歳を目前にした女性というか彼女が住む築40数年の家が主人公と言った方がいいかもしれない。亡き夫の命日で家族が集まる日。彼女にはこの家を設計した建築家の姿が見え、話すことができるが、他の人には見えない。彼は現実の建築家の幽霊というよりこの家の精霊のようだ。 孫の質問を契機としてこ...

Pedro Domingos “The Master Algorithm: How the Quest for the Ultimate Learning Machine Will Remake Our World”

次の本までのつなぎとして軽い気持ちで読みはじめたらちょうど半年かかってしまった。理由その一、英語だということ。日本語の3倍くらいかかる。理由そのニ、緊急事態宣言で通勤時間がなかったこと。通勤が一番の読書シチュエーションなのだ。そして理由その三。思ったよりずっと本格的に書かれた本で...

M&Oplaysプロデュース『いのち知らず』

タイトルと男ばかりの配役からギャングものを想像していたが、よい意味で裏切られた。 夢を共有する幼なじみのロクとシドは、とある療養施設で警備の仕事をし、施設内の同じ部屋に住んでいる。その施設には死者を蘇生させる研究をしているという噂があり、疑いをもっている先輩警備員モオリは、兄が施設...

猫のホテル『ピンク』

なんと2010年以来の猫のホテル。30周年記念公演とのこと。劇中のセリフに、季節が変わるたび自分が置いていかれているような気がする、というのがあるのだが、みなさん驚くほどお変わりなく、相変わらず絶妙な笑いを繰り広げていて、誰も置いていかれてはなかったと思う。 家庭教師の大学生カヨと...

『近松心中物語』

『ロミオとジュリエット』も含めて広い意味で心中ものは苦手だが演出家とキャストにひかれてみることにした。 二組のカップルが主人公。まじめ一方だった飛脚宿の養子忠兵衛は偶然遊女梅川と出会い互いに思い合う仲になる。折り梅川には身請け話が持ち上がる。忠兵衛と同郷の幼なじみ古道具屋の若旦那与...

ケムリ研究所『砂の女』

『砂の女』の原作を読んだのははるか昔で、ストーリーは骨格だけ覚えていた。タイトルに引きずられて女が主体的に男を監禁するような印象を持ち続けていたが、実のところ女もまた被害者で、砂を中心としたシステムが主体で、そのシステムの維持のための労働力として男が必要とされたのだった。 砂といえ...

イキウメ『外の道』

出身地と離れた地方都市で二十年ぶりに再会した同級生山鳥芽衣、寺泊満の会話が物語のペースメーカーになる。最初ありきたりの近況報告なのだが、話すことがなくなり、それぞれが最近体験している奇妙な出来事にうつる。寺泊満は、ある手品師との出会いを機に世界の新しい見方を習得し、その本質的な美...

野田地図『フェイクスピア』

二組の親と子の物語。親が子になにを伝えるかということがテーマだと思う。母は、50年間イタコ見習いの娘を不憫に思い、自ら伝説のイタコとなる。一方、父は神から盗み出した「言の葉」を息子に伝えようとする。父と母を年若の高橋一生と前田敦子が演じ、息子と娘をはるかに年長の橋爪功と白石加代子...