『重要物語』

今年初観劇。気づいたときには前売りの予定枚数が終わっていたが当日券をゲットした。 ブルー&スカイ作品を見るのはなんと10年ぶり。世の中はこの10年間に大きく変わってしまったけど、アートとか批評に流れずとことん無意味なナンセンスを追求するスタイルはまったくかわってなかった。こ...

P・D・ジェイムズ(小泉喜美子訳)『女には向かない職業』

22歳の女性であるコーデリア・グレイはこの物語の開始時点で小さな探偵事務所の共同経営者だが、冒頭で所長のバーニイが病気を苦に自殺してしまい、彼女がひとりで事務所をきりもりしていくことになる。コーデリアの半生や探偵になるまでの経緯は、回想的に合間合間で語られる。 本書の主題は、コーデ...

斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

特殊設定ミステリーという言葉をはじめてみた。最近現実に世界にありえない特殊な設定のミステリーが増えてきて。ジャンルを形成しつつあるらしい。 この作品では、天使と呼ばれる、翼があり目鼻口のないのっぺりした顔という異形の生き物が多数降臨し、二人以上殺した人間を地獄に引きずり込んでしまう...

村上春樹『女のいない男たち』

初読以来8年たって再読したのは、映画『ドライブ・マイ・カー』をようやくみたからだ。完膚なきまでに忘れていて潔いくらいだった。 初読時には各作品の内容にはほとんど触れなかったので、今回は映画とからめつつ各編の内容に触れていこう。 映画のタイトルになった『ドライブ・マイ・カー』からは主要...

岡崎藝術座+那覇文化芸術劇場なはーと『イミグレ怪談』

同窓会ということでやってきた3人がかわるがわる自分の物語を語る。冒頭の松井周さん(役名は役者の名前と同じになってる)はタイに移住してラオスで焼酎工場を経営している。そうなるにいたった経緯を語ろうとしているのだが、次々と脱線して、バンコクで見つけた野外のバーの話から、そこで出会った...

呉明益(天野健太郎訳)『歩道橋の魔術師』

著者名はカタカナではウー・ミンイーと書くらしい。 1971年生まれの台湾の小説家だ。内容紹介の中にあった「マジックリアリズム」という言葉に反応して読もうと思った。 台北にかつてあった中華商場という巨大なショッピングモールを舞台にした連作短編。ショッピングモールといっても職住一体となっ...

城山羊の会『温暖化の秋』

舞台に限らずテレビドラマなんかでもコロナはなかったことにされている作品が多い気がするが、『ワクチンの夜』に続いて、コロナをちゃんと作品の背景としてとりいれているのは希少かもしれない。 これから人に会うのでコロナの検査を受けてきた若いカップルねるりとコウが近くの公園にやってくる。そこ...

ポール・ベンジャミン(田口俊樹訳)『スクイズ・プレイ』

ポール・オースターが他の長編小説発表前に別名で書いたハードボイルド探偵小説。 検察をやめて探偵業を営むマックス・クラインに、元メージャーリーガーで政界進出が噂される、ジョージ・チャップマンが依頼をもちかけてくる。心当たりのない脅迫状が届いたというのだ。クラインは、5年前チャップマン...

青年団リンクキュイ『あなたたちを凍結させるための呪詛』

上演時間40分だけど短いという感じがまったくない凝縮された時間だった。 2022年2月、正社員として働く独身女性のモノローグ。注意してたのにコロナに罹患するが回復する。そのあとの物語。たぶんコロナ以前はかろうじて耐えられた、日々の理不尽が耐えがたくなり、呪詛をはく。それは「あなたた...

マイクル・Z・リューイン(石田喜彦訳)『沈黙のセールスマン』

再読のはずだが例によってまったく覚えてない。主人公の私立探偵アルバート・サムソンはもう少しおとなしい常識人かと思っていたがかなり唐突に過激な行動をするし、単なる医療事故の隠蔽か何かの地味な案件かと思っていたら二転三転して複数のとんでもない陰謀が明らかになる。 そして語り口もソフトだ...