ヨーロッパ企画『九十九龍城』

今年初観劇は久々のヨーロッパ企画。 今はなき香港の九龍城とそっくりな九十九龍城という魔窟が舞台。事件の捜査で二人の刑事が遠隔から九十九龍城の屋上の一角を監視する。彼らは謎の最新技術を使って壁の裏側までみることができる。肉屋の家族、パイフォンというバチものを作っている作業場、行方不明...

中井英夫『虚無への供物』

日本探偵小説史上の三大奇書の一角を占める作品なので当然昔読んでいて忘れているだけだろうと思っていたが、読み進めてみても一行も記憶に引っかかる部分がないこと以上に、この作品を読んで忘れるはずがない。つまり、まさかの初読だった。 舞台は1954年(昭和29年)暮れから翌1955年夏にか...

カミュ(中条省平訳)『ペスト』

アルジェリア(当時はフランスの植民地)のオランという街にペストが蔓延し封鎖されるという状況で、町の外との別離に苦しむ人々や果敢にペストとの戦いに挑む人々の姿が描かれる。ジャーナリスティックな筆致でリアルに描かれているので、実際にあったことかと思ってしまうが、完全なフィクションで、...

劉慈欣(大森望、ワンチャイ、光吉さくら、泊功訳)『三体Ⅲ 死神永生』

三体三部作の完結編読み終えた。間違いなくオールタイムベストに入る作品だ。 本作の主人公は程心という女性。彼女は運命の巡り合わせで、前作で明らかになった黒暗森林という宇宙の弱肉強食の現実の中で人類の生き残りを賭けた選択を何度も担うことになる。その度に彼女は、自らの頼る原理である愛と平...

城山羊の会『ワクチンの夜』

2018年12月以来の城山羊の会。前回のときにしばらくおやすみといわれてさみしく思っていたが実は昨年末も公演があったらしい。教えてほしかった。 ワクチンをうった日の夜というのは考えてみると特別なシチュエーションだ。副反応の可能性があって多少のことは大目に見てもらえそうだしそれが一種...

ナイロン100℃『イモンドの勝負』

ナイロンとしては3年ぶりの新作公演とのこと。今回は徹頭徹尾100%混じり気なしのナンセンスコメディー。主人公は鈴木タモツという持病をもつ少年(でも39歳)で、実の母親に保険金目当てで殺されそうになるが助かって孤児院に入る。そこを訪ねてきた政府関係の組織の会長に見初められ、近々開催...

アレックス・パヴェージ(鈴木恵訳)『第八の探偵』

7編からなるミステリー短編集なのだけど、作中作という趣向が凝らされている。グラント・マカリスターという数学者が、ミステリーの構成についての自らの論文の実例として書いた短編集ということなのだ。各短編の合間に、作者グラントと出版のために彼を訪ねてきた編集者ジュリアとの対話が挟み込まれ...

阿佐ヶ谷スパイダース『老いと建築』

80歳を目前にした女性というか彼女が住む築40数年の家が主人公と言った方がいいかもしれない。亡き夫の命日で家族が集まる日。彼女にはこの家を設計した建築家の姿が見え、話すことができるが、他の人には見えない。彼は現実の建築家の幽霊というよりこの家の精霊のようだ。 孫の質問を契機としてこ...

Pedro Domingos “The Master Algorithm: How the Quest for the Ultimate Learning Machine Will Remake Our World”

次の本までのつなぎとして軽い気持ちで読みはじめたらちょうど半年かかってしまった。理由その一、英語だということ。日本語の3倍くらいかかる。理由そのニ、緊急事態宣言で通勤時間がなかったこと。通勤が一番の読書シチュエーションなのだ。そして理由その三。思ったよりずっと本格的に書かれた本で...

M&Oplaysプロデュース『いのち知らず』

タイトルと男ばかりの配役からギャングものを想像していたが、よい意味で裏切られた。 夢を共有する幼なじみのロクとシドは、とある療養施設で警備の仕事をし、施設内の同じ部屋に住んでいる。その施設には死者を蘇生させる研究をしているという噂があり、疑いをもっている先輩警備員モオリは、兄が施設...