城山羊の会『温暖化の秋』

舞台に限らずテレビドラマなんかでもコロナはなかったことにされている作品が多い気がするが、『ワクチンの夜』に続いて、コロナをちゃんと作品の背景としてとりいれているのは希少かもしれない。 これから人に会うのでコロナの検査を受けてきた若いカップルねるりとコウが近くの公園にやってくる。そこ...

ポール・ベンジャミン(田口俊樹訳)『スクイズ・プレイ』

ポール・オースターが他の長編小説発表前に別名で書いたハードボイルド探偵小説。 検察をやめて探偵業を営むマックス・クラインに、元メージャーリーガーで政界進出が噂される、ジョージ・チャップマンが依頼をもちかけてくる。心当たりのない脅迫状が届いたというのだ。クラインは、5年前チャップマン...

青年団リンクキュイ『あなたたちを凍結させるための呪詛』

上演時間40分だけど短いという感じがまったくない凝縮された時間だった。 2022年2月、正社員として働く独身女性のモノローグ。注意してたのにコロナに罹患するが回復する。そのあとの物語。たぶんコロナ以前はかろうじて耐えられた、日々の理不尽が耐えがたくなり、呪詛をはく。それは「あなたた...

マイクル・Z・リューイン(石田喜彦訳)『沈黙のセールスマン』

再読のはずだが例によってまったく覚えてない。主人公の私立探偵アルバート・サムソンはもう少しおとなしい常識人かと思っていたがかなり唐突に過激な行動をするし、単なる医療事故の隠蔽か何かの地味な案件かと思っていたら二転三転して複数のとんでもない陰謀が明らかになる。 そして語り口もソフトだ...

ヨーロッパ企画『あんなに優しかったゴーレム』

コロナ以降観劇の回数がガクンと落ちた中、1年に2回ヨーロッパ企画をみるとは、なかなか奇遇だ。 あるプロ野球選手の半生記のような番組の撮影のため彼の故郷にやってきたテレビクルーたち。町の人たちは、ゴーレムという巨大な土の像が意識を持って動き回りいろいろ人々のためになることをしていると...

M&Oplaysプロヂュース『クランク・イン』

2020年の年末に上演された朗読劇『そして春になった』の続編(もちろん見てなくても大丈夫)。あちらは女性関係が派手な映画監督の妻と彼の愛人である若手からベテランに差し掛かりつつある女優がある若手女優の「事故死」をめぐって手紙のやり取りをするという作品だった。 今回はそれから数年が経...

松浦寿輝『半島』

再読。ご多分に漏れず記憶はあやふやで、迷宮的な半島の中を動き回る冒険小説みたいに認識していたが、かなり違った。もっとダークで思索的な物語だった。 なんとなく舞台は江ノ島みたいな首都圏から近いところを想像していたが、とあるように僻た。 天涯孤独の四十男の主人公迫村は大学教員を辞め、かつ...

Odéon - Theatre de l`Europe 《The Glass Menagerie》

以前長塚圭史演出でみたが今回はベルギーのIvo Van Hove演出。(原語は英語なのに)上演も全編フランス語で日本語と英語の字幕が表示される。英語以上にフランス語だと字幕に頼るしかなく、舞台よりそちらに注意をもっていかれたり、スペースのせいで細かいニュアンスが省かれたりするのはまあ仕方...

小川哲『嘘と正典』

長いことぼくにとって小川哲さんは小説家ではなく村上Radioプレスペシャルのラジオパーソナリティーだったのだが、はじめて作品を読んでみた。 小説家を分類するには何に忠実かということをみればいいと思っていて、倫理感や思想性、文体を含めた詩情、SFというジャンルならジャンル特有の世界観...

松浦寿輝『幽 花腐し』

松浦寿輝作品では『半島』が好きで今回あらたに購入して読み返すことにしたのだけど、そのついでに他の作品も読んでみようと選んだのがこの短編集だ。 6編からなる。ジャンルでいうと幻想文学。何らかの理由で世の中との流れから取り残されて孤立した男が主人公なのが共通だ。『無縁』では歌舞伎町との...