峯村リエさんは、これまで何回も舞台を見てきて大好きな俳優さんだけど、タイトルになっているとは、どういうこと?という感じだったが、思いがけずいい舞台だった。 3人の作家による3つの短編だが、それを順番に別々のものとして描くのではなく、枠物語の構造にして有機的に組み合わせる演出が成功し...
現代語訳というよりかは音楽でいうところのカバーというのが近そうだ。 古典の説話集『宇治拾遺物語』のなかから33編選んで、ストーリーは細部を含めて同一のまま語り口をカタカナ言葉や関西弁が入り混じる、いかにも町田康調のはっちゃけた感じに置き換えている。たとえば『奇怪な鬼に瘤を除去される...
次の小泉八雲の怪談5篇が百物語的に舞台上で物語られる。 常識 破られた約束 茶碗の中 お貞の話 宿世の恋 『宿世の恋』は『牡丹灯籠』の再話だがそれ以外は耳馴染みがなかった。個人的には『茶碗の中』がシュールでおもしろかった。 過去の怪談話と並行して、警察の遺体安置所から死体が行方不明になる現代進...
近未来の日本。仕事はほぼロボットとAIによって代替され、人々にはいわゆるベーシックインカムであるところの「生活基本金」が全市民に支給され、人口の99%にあたる「消費者」と呼ばれる人々は労働をせずに暮らしている。残りの1%が「生産者」と呼ばれ、労働に携わっているが、必ずしも特別な能...
ナイロン30周年記念公演の第2弾とのことで実際31年周年だがそこがナイロンらしい。自分がそのうち25年間みてきたことにびっくりだ。 江戸時代の峠の茶屋みたいなところで二人の男がすれちがい、そのうちのひとり町人の風体の武士之介が武士の風体の人良に自分の思い出話を無理やり聞かせようとす...
あちこちで聞きかじったあやふやな知識を整理しておこうと読み始めた。 量子場というのは計算の便宜を図るものくらいに考えていたら実は本質的なもので、今まで粒子だいや波だと言っていた素粒子の実体はこの量子場の励起状態と考えたほうがいいらしい。素粒子の種類ごとにこの場が宇宙全体に広がってい...
2018年に陸前高田で進む震災からの復興工事を目撃した経験に触発されて、「人とモノが主従関係ではなく、限りなくフラットな関係性で存在するような世界を演劇によって構築できるのだろうか?」という問題提起から生まれた作品。舞台に配置されたさまざまなモノは美術家の金氏徹平さんによるもの。...
初回からずっときいてるTBSラジオの文化系トークラジオLifeのZINE。2023年11月の文学フリマ東京37に向けたもので、ずっとほしかったのだが、ようやく入手できたのだ。稿者は番組出演者総勢20名。冒頭の長谷川PによるこのZINE発行の経緯を綴ったエッセイからはじまり、ちゃん...
リアル書店で赤っぽい表紙で漢字二文字のシンプルなタイトルということで記憶したのだけど、書名を確認するには再度同じ書店に行く必要があった。 最初に見かけたときに帯の言葉を誤読して特殊設定ミステリーだと思い込んでいた。冒頭も殺し屋が登場してその誤解に拍車がかかる。実は、古今からの文学的...
5月で閉館するこまばアゴラ劇場のサヨナラ公演と銘うたれた公演のひとつ。これはいかねばなるまい。アゴラでみる49個目の公演だ。 『S高原から』をみるのはなんと25年ぶり。高原のサナトリウムが舞台という以外ほとんどなにも覚えてなかった。25年前はまだ下敷きとなったトーマス・マン『魔の山...