演劇ノート

ナイロン100℃『イモンドの勝負』

ナイロンとしては3年ぶりの新作公演とのこと。今回は徹頭徹尾100%混じり気なしのナンセンスコメディー。主人公は鈴木タモツという持病をもつ少年(でも39歳)で、実の母親に保険金目当てで殺されそうになるが助かって孤児院に入る。そこを訪ねてきた政府関係の組織の会長に見初められ、近々開催...

阿佐ヶ谷スパイダース『老いと建築』

80歳を目前にした女性というか彼女が住む築40数年の家が主人公と言った方がいいかもしれない。亡き夫の命日で家族が集まる日。彼女にはこの家を設計した建築家の姿が見え、話すことができるが、他の人には見えない。彼は現実の建築家の幽霊というよりこの家の精霊のようだ。 孫の質問を契機としてこ...

M&Oplaysプロデュース『いのち知らず』

タイトルと男ばかりの配役からギャングものを想像していたが、よい意味で裏切られた。 夢を共有する幼なじみのロクとシドは、とある療養施設で警備の仕事をし、施設内の同じ部屋に住んでいる。その施設には死者を蘇生させる研究をしているという噂があり、疑いをもっている先輩警備員モオリは、兄が施設...

猫のホテル『ピンク』

なんと2010年以来の猫のホテル。30周年記念公演とのこと。劇中のセリフに、季節が変わるたび自分が置いていかれているような気がする、というのがあるのだが、みなさん驚くほどお変わりなく、相変わらず絶妙な笑いを繰り広げていて、誰も置いていかれてはなかったと思う。 家庭教師の大学生カヨと...

『近松心中物語』

『ロミオとジュリエット』も含めて広い意味で心中ものは苦手だが演出家とキャストにひかれてみることにした。 二組のカップルが主人公。まじめ一方だった飛脚宿の養子忠兵衛は偶然遊女梅川と出会い互いに思い合う仲になる。折り梅川には身請け話が持ち上がる。忠兵衛と同郷の幼なじみ古道具屋の若旦那与...

ケムリ研究所『砂の女』

『砂の女』の原作を読んだのははるか昔で、ストーリーは骨格だけ覚えていた。タイトルに引きずられて女が主体的に男を監禁するような印象を持ち続けていたが、実のところ女もまた被害者で、砂を中心としたシステムが主体で、そのシステムの維持のための労働力として男が必要とされたのだった。 砂といえ...

イキウメ『外の道』

出身地と離れた地方都市で二十年ぶりに再会した同級生山鳥芽衣、寺泊満の会話が物語のペースメーカーになる。最初ありきたりの近況報告なのだが、話すことがなくなり、それぞれが最近体験している奇妙な出来事にうつる。寺泊満は、ある手品師との出会いを機に世界の新しい見方を習得し、その本質的な美...

野田地図『フェイクスピア』

二組の親と子の物語。親が子になにを伝えるかということがテーマだと思う。母は、50年間イタコ見習いの娘を不憫に思い、自ら伝説のイタコとなる。一方、父は神から盗み出した「言の葉」を息子に伝えようとする。父と母を年若の高橋一生と前田敦子が演じ、息子と娘をはるかに年長の橋爪功と白石加代子...

コンプソンズ『何を見ても何かを思い出すと思う』

なんと今年初めての観劇。演劇という習慣がぼくの人生からドロップしそうな雰囲気を感じていたところで、偶然この公演をみつけてチケットをゲットした。 久々の観劇ということもあって、小劇場演劇特有のハイテンションと、知らない固有名詞の羅列に最初ついていけるか心配したが、すぐに入り込めた。 コ...

パラドックス定数『プライベート・ジョーク』

とあるスペインの学生寮が舞台。そこに暮らす学生三人と講演のために訪れた高名な学者と画家。5人の人物はそれぞれ歴史的に名をなした人物をモデルにしているけど、その名前は劇中では明かされない。それぞれ歴史の流れの中で翻弄されながら、この学生寮の一室で人生が交錯する。 時系列を行き来する技...

M&Oplaysプロデュース『そして春になった』

例によってまったく予備知識のないままみたので、出演者の欄に名前を連ねていた松雪泰子さんがでてこないまま1時間足らずで終わってしまって謎だったが、実はAキャスト、Bキャストみたいに分かれていて、ぼくのみた方には登場しないのだった。 二人の出演者による朗読劇。ある映画監督の妻と、愛人の...

KAAT神奈川芸術劇場プロヂュース『人類史』

もともとはユヴァル・ノア・ハラルの『サピエンス全史』の舞台化という話だったけど、幕が開いてみると、ダイレクトな舞台化というわけじゃなく、参考文献的な扱いになっていた。だが、インスピレーションの大きな源なのは間違いない。どうやって舞台化するんだろうと思ってたが、思った以上に「忠実な...

青年団『馬留徳三郎の一日』

地方の限界っぽい集落の、老夫婦二人が住む家が舞台。息子を名乗る男から電話がかかってきて、今から部下が訪ねるから金を渡してほしいという。古典的な詐欺の手口だが、金を受け取りにきた蔵本は、夫婦二人や近隣の人々の話に逆に翻弄されてしまう。ここでは誰も彼もが多かれ少なかれ認知に問題をかか...

五反田団『いきしたい』

男二人、女一人の三人芝居。夫婦がこれから別居しようとしていて運び出す荷物を整理している。妻の方の荷物の一つである男の死体が、傍から引っ張り出されてくる。このままではまずいということで二人は捨てにいくための旅行の相談を始める。死体を車に積み込むと、やがて死体は平然と話し始める。彼は...

シス・カンパニー『あなたの目』

長いブランクから二度目の観劇だけど、なんというか一度目より今日の方が、こういうものを求めて劇場に通っていたんだな、という気づきが大きかった。前回の芝居も申し分なくおもしろいと思ったのだが、ぼくが芝居に求めているものは微妙に違っているらしい。すぐに思いつくのは劇場のサイズだが、それ...

ケムリ研究室『ベイジルタウンの女神』

コロナの影響でずっと観劇できない状態が続いていて、その魅力は頭ではなんとなくわかるものの、具体的な感覚としては忘れかけていた。そのリハビリを兼ねて6ヶ月ぶりの観劇。 このチケットをとるまでも紆余曲折があった。座席数が半分以下になっているためもあって発売日には瞬殺という状態でとれなか...

ジエン社番外公演『わたしたちはできない、をする。』

配布されたリーフレットによると、主宰の山本健介さんは去年の半年間金銭的理由で演劇ができずまったく別の賃労働をしていたそうだ。今回の公演の形態はその「できない」から生まれたもので、「演劇ができないのなら、演劇で、演劇ができない、という事をしてみたかった」という通り、「脚本を書いて言...

岡崎藝術座『ニオノウミにて』

詩的なモノローグを重ねてゆくこれまでの岡崎藝術座とは異なる新機軸に挑戦している。それが何かというと「能」だ。 難民的な境遇で日本にいる外国人男性が夜湖で釣りをしていると琵琶(実際は琵琶の画像が写ったタブレットに木の枠と柄がとりつけられたもの)を拾う。すると女があらわれ漁師の祖父(ジ...

宮崎企画『つかの間の道』

今年初観劇。 三組の人々のある一日を描いている。特に大きな出来事が起きるわけではないが、それぞれ人の同一性が揺らぐ(例えば連絡が取れなくなった友人と瓜二つの別人と会って行動を共にするなど)ような思いを感じて、そのことで少しだけ癒される。テーマが保坂和志の小説に重なるように思えた。 作...

『常陸坊海尊』

常陸坊海尊。初めて聞く名前だったが、源義経の従者の一人とのこと。途中で逃げ出して生き延びてその後不老不死の身となり何百年間も源平や義経の物語を見てきたように語ったという説話が残っている。 それで歴史物だと思っていたが、昭和の戦中から戦後にかけてが舞台だった。疎開で東京から東北地方の...