ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

演劇の世界では、待つ対象はゴドーのはずだが、ゴドーはもう歩くAIアシスタントとしてここにいる。戦火から逃れ移民としてこの国にやってきた美容外科医が待っているのは船だ。 一日は無為に過ぎていき船は来ない。そこに上の神社から貧しい現地民エイが流されてくる。彼らは最初反目するがエイの兄が...

テアトロコントspecial『寸劇の館』

今年初の観劇。昨年に続いて今年もブルー&スカイ作品からのスタートだ。『寸劇の館』というタイトルからわかるように実質寸劇4編のコントライブなのだが、それを、理不尽な理由で処刑されてしまいそうな息子の命を救うため森に探索に行った母親が「寸劇の館」という館に迷い込み寸劇を見せら...

城山羊の会『萎れた花の弁明』

城山羊の会の三鷹公演では劇場支配人の森元隆樹さんの前説が通例になっている。今回の舞台は劇場の前になっていて、前説からなめらかに物語がつながっていく。見知らぬ中年男が森元さんのまえにあらわれて唐突に性欲について質問する。新入職員の佐藤が呼ばれて彼の相手をする。基本的にはこの佐藤くん...

劇壇ガルバ『砂の国の遠い声』

昨年惜しくも亡くなった宮沢章夫の1994年初演の作品の再演。演出は彼の作品を俳優や制作として近くで見てきた笠木泉さんが担当している。 砂漠監視隊というただ砂漠を監視する組織に派遣された7人の男たち。誰もが、あまりにも手持ち無沙汰で、割り当てられた作業を他人に渡すまいとしている。隊員...

阿佐ヶ谷スパイダース『ジャイアンツ』

初老男性が夢の中みたいにぼんやり歩いていると、離婚して依頼疎遠になっていた息子と出会う。息子はぎこちない感じながら自宅に誘い、ささやかな歓待を受ける。翌日ワインとケーキをもって同じ部屋を訪ねると、そこには別の人が住んでいた。男は、不意にあらわれた目玉探偵と名乗る男とその助手ととも...

『無駄な抵抗』

主催は劇場だが脚本、演出、出演者、イキウメづくしのほぼイキウメ作品。 あるときからまったく理由の説明がなく列車が通過するようになってしまった駅の前の広場が舞台。元テレビの占いコーナー担当者で今はカウンセラーをしているサクラは依頼者の山鳥メイと会うが彼女は小学生の時の同級生だった。メ...

青年団リンク キュイ『非常に様々な健康の事情』

三篇から構成される短編集。 冒頭の『非常に様々な健康の事情』は現時点での最新作。3人の元同級生の女性がカフェでかわるがわるそれぞれの不健康な状況について語り合う。彼氏のDV、上司のハラスメント、親族の迷惑な干渉など一見バラバラなことについて語っているようにみえるが・・・・・・。綾門...

ヨーロッパ企画『切り裂かないけど攫いはするジャック』

劇団結成25周年とのこと。今回はSFではなくミステリー。19世紀末のロンドンを舞台に、同じ街角で乞食の老人、ミルク売り、花売り娘など次々と人が消え失せる謎の連続失踪事件が発生する。周囲の人びとや刑事や探偵が侃侃諤諤で推理し謎を解いていく……と思いきや、謎が解かれたと思った瞬間に新...

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アメリカの時計』

『アメリカの時計』はアーサー・ミラーの後期に書かれたあまり知名度の高くない作品だ。エンタメに振り切った改訂版は興行的に成功したようだが、この舞台は改訂前のバージョンがベースになっている。舞台は大恐慌時代のアメリカ。大恐慌は名前だけであまりよくわかっていなかったのだけど、今回ちゃん...

コンプソンズ『愛について語るときは静かにしてくれ』

SNSでみかけて急遽みることにした。聞き覚えのある劇団だと思ったのは道理で、2度目のコンプソンズだった。 これぞ小劇場というテンション高めのノリと演出は相変わらず不慣れで、加えて今回気づいたのはこれが演劇であることへの自己言及的なセリフの多さだ。しかし、そういう個人的な違和感とは違...

スヌーヌー『長い時間のはじまり』

タイトルに「はじまり」とあるがむしろ終わりからみた物語だ。 舞台は前作『モスクワの海』から引き続いて多摩川西岸の町登戸。ぼくはみてないがその前の作品も登戸が舞台で登戸三部作らしい。 その登戸の多摩川沿いにある小さなアパートCASA Yoknapatawpha(フォークナー作品の舞台の架...

野田地図『兎、波を走る』

まったく予備知識なしにみた。不思議な国のアリス、ピーターパン、桜の園などさまざまなシーンの間を言葉遊びで行き来してがどこに行き着くのか不安に思う瞬間もあったが、ちゃんとすべての言葉がつながって着地した。お見事。 以下ネタバレを含む。 最近の野田地図の着地点は現実に日本でおきた事件で、...

M&Oplaysプロデュース『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』

舞台は銀座。かつて海でいまもカモメの菅がかいま見え、風向きによっては潮の香りがする場所。とある兄妹を主軸とする物語。彼らの家庭を崩壊させた父のかつての愛人葉子と兄アキオはいま親しい関係にある。兄に弁当を届けに来た妹イズミはそれを知る。というベースラインの物語は、銀座で暮らす若年浮...

イキウメ『人魂を届けに』

森の最奥の家が舞台。そこの主人山鳥は、森で迷ってる人たちを救って自分の家に住まわせており。彼らからママと呼ばれ共同生活を送っていた。そこに八雲という刑務官が奇妙な届け物をもってたずねてくる。届け物はかつてその家に住み街に戻ってからテロを起こし処刑された男からでてきた黒い物体だ。そ...

KAATプロデュース『掃除機』

岡田俊樹脚本でドイツで上演された作品の日本初演。本人じゃなく本谷有希子演出だ。 3人家族が暮らす家が舞台。妻に先立たれた80代の男性、その娘で学生時代から50代の今まで引きこもりの姉、40代無職の弟。そして話すことができる掃除機が狂言回しとして登場する。現代のある側面を凝縮したよう...

ナイロン100℃『Don't Freak Out』

登場人物全員の顔が白塗り。そのことにDon’t Freak Out(ひかないで)というより、白塗りによりあらかじめ無用な感情移入の余地をなくしておいて、これから舞台で起きることにDon’t Freak Outという感じだった。 山奥で精神病院を経営する天房家に女中として奉公する姉妹...

『重要物語』

今年初観劇。気づいたときには前売りの予定枚数が終わっていたが当日券をゲットした。 ブルー&スカイ作品を見るのはなんと10年ぶり。世の中はこの10年間に大きく変わってしまったけど、アートとか批評に流れずとことん無意味なナンセンスを追求するスタイルはまったくかわってなかった。こ...

岡崎藝術座+那覇文化芸術劇場なはーと『イミグレ怪談』

同窓会ということでやってきた3人がかわるがわる自分の物語を語る。冒頭の松井周さん(役名は役者の名前と同じになってる)はタイに移住してラオスで焼酎工場を経営している。そうなるにいたった経緯を語ろうとしているのだが、次々と脱線して、バンコクで見つけた野外のバーの話から、そこで出会った...

城山羊の会『温暖化の秋』

舞台に限らずテレビドラマなんかでもコロナはなかったことにされている作品が多い気がするが、『ワクチンの夜』に続いて、コロナをちゃんと作品の背景としてとりいれているのは希少かもしれない。 これから人に会うのでコロナの検査を受けてきた若いカップルねるりとコウが近くの公園にやってくる。そこ...

青年団リンクキュイ『あなたたちを凍結させるための呪詛』

上演時間40分だけど短いという感じがまったくない凝縮された時間だった。 2022年2月、正社員として働く独身女性のモノローグ。注意してたのにコロナに罹患するが回復する。そのあとの物語。たぶんコロナ以前はかろうじて耐えられた、日々の理不尽が耐えがたくなり、呪詛をはく。それは「あなたた...