テアトロコントspecial『寸劇の庭』

3つの団体による。短編2つ、中編ひとつのコント集。ジャンルでいうとどれもナンセンスコメディー。浮世離れした毒にも薬にもならない笑いのはずで、まあそういうのを求めてもいたのだが、今回はこのジャンルがあまりにピッタリ世の中とリンクしていて驚いた。今やナンセンスコメディーをやるだけで鋭...

M&Oplaysプロデュース『峠の我が家』

これまでみてきたなかで一、二を争う難解な作品。岩松作品はもともと登場人物の心の動きが、饒舌に本心を隠す形で難解になるのが味なのだが、今回はその本心がなかなか見えない。しかもストーリーも錯綜としている。 あまりネタバレにもならないと思うのでストーリーを書き下してみる。 季節はずれで休業...

『ピローマン』

とある独裁国家の警察の取調室が舞台。売れないショートストーリーを書きためているカトゥリアンはトゥポルスキ、アリエルという二人の刑事の取り調べを受けている。最初カフカ『審判』のような不条理な告発かと思うが、カトゥリアンの書く陰惨な物語をまねた子どもの連続殺人事件が起きていることがわ...

劇壇ガルバ『ミネムラさん』

峯村リエさんは、これまで何回も舞台を見てきて大好きな俳優さんだけど、タイトルになっているとは、どういうこと?という感じだったが、思いがけずいい舞台だった。 3人の作家による3つの短編だが、それを順番に別々のものとして描くのではなく、枠物語の構造にして有機的に組み合わせる演出が成功し...

イキウメ『小泉八雲から聞いた話 奇ッ怪』

次の小泉八雲の怪談5篇が百物語的に舞台上で物語られる。 常識 破られた約束 茶碗の中 お貞の話 宿世の恋 『宿世の恋』は『牡丹灯籠』の再話だがそれ以外は耳馴染みがなかった。個人的には『茶碗の中』がシュールでおもしろかった。 過去の怪談話と並行して、警察の遺体安置所から死体が行方不明になる現代進...

ナイロン100℃『江戸時代の思い出』

ナイロン30周年記念公演の第2弾とのことで実際31年周年だがそこがナイロンらしい。自分がそのうち25年間みてきたことにびっくりだ。 江戸時代の峠の茶屋みたいなところで二人の男がすれちがい、そのうちのひとり町人の風体の武士之介が武士の風体の人良に自分の思い出話を無理やり聞かせようとす...

チェルフィッチュ×金氏徹平「消しゴム山」

2018年に陸前高田で進む震災からの復興工事を目撃した経験に触発されて、「人とモノが主従関係ではなく、限りなくフラットな関係性で存在するような世界を演劇によって構築できるのだろうか?」という問題提起から生まれた作品。舞台に配置されたさまざまなモノは美術家の金氏徹平さんによるもの。...

青年団『S高原から』

5月で閉館するこまばアゴラ劇場のサヨナラ公演と銘うたれた公演のひとつ。これはいかねばなるまい。アゴラでみる49個目の公演だ。 『S高原から』をみるのはなんと25年ぶり。高原のサナトリウムが舞台という以外ほとんどなにも覚えてなかった。25年前はまだ下敷きとなったトーマス・マン『魔の山...

ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

演劇の世界では、待つ対象はゴドーのはずだが、ゴドーはもう歩くAIアシスタントとしてここにいる。戦火から逃れ移民としてこの国にやってきた美容外科医が待っているのは船だ。 一日は無為に過ぎていき船は来ない。そこに上の神社から貧しい現地民エイが流されてくる。彼らは最初反目するがエイの兄が...

テアトロコントspecial『寸劇の館』

今年初の観劇。昨年に続いて今年もブルー&スカイ作品からのスタートだ。『寸劇の館』というタイトルからわかるように実質寸劇4編のコントライブなのだが、それを、理不尽な理由で処刑されてしまいそうな息子の命を救うため森に探索に行った母親が「寸劇の館」という館に迷い込み寸劇を見せら...

城山羊の会『萎れた花の弁明』

城山羊の会の三鷹公演では劇場支配人の森元隆樹さんの前説が通例になっている。今回の舞台は劇場の前になっていて、前説からなめらかに物語がつながっていく。見知らぬ中年男が森元さんのまえにあらわれて唐突に性欲について質問する。新入職員の佐藤が呼ばれて彼の相手をする。基本的にはこの佐藤くん...

劇壇ガルバ『砂の国の遠い声』

昨年惜しくも亡くなった宮沢章夫の1994年初演の作品の再演。演出は彼の作品を俳優や制作として近くで見てきた笠木泉さんが担当している。 砂漠監視隊というただ砂漠を監視する組織に派遣された7人の男たち。誰もが、あまりにも手持ち無沙汰で、割り当てられた作業を他人に渡すまいとしている。隊員...

阿佐ヶ谷スパイダース『ジャイアンツ』

初老男性が夢の中みたいにぼんやり歩いていると、離婚して依頼疎遠になっていた息子と出会う。息子はぎこちない感じながら自宅に誘い、ささやかな歓待を受ける。翌日ワインとケーキをもって同じ部屋を訪ねると、そこには別の人が住んでいた。男は、不意にあらわれた目玉探偵と名乗る男とその助手ととも...

『無駄な抵抗』

主催は劇場だが脚本、演出、出演者、イキウメづくしのほぼイキウメ作品。 あるときからまったく理由の説明がなく列車が通過するようになってしまった駅の前の広場が舞台。元テレビの占いコーナー担当者で今はカウンセラーをしているサクラは依頼者の山鳥メイと会うが彼女は小学生の時の同級生だった。メ...

青年団リンク キュイ『非常に様々な健康の事情』

三篇から構成される短編集。 冒頭の『非常に様々な健康の事情』は現時点での最新作。3人の元同級生の女性がカフェでかわるがわるそれぞれの不健康な状況について語り合う。彼氏のDV、上司のハラスメント、親族の迷惑な干渉など一見バラバラなことについて語っているようにみえるが・・・・・・。綾門...

ヨーロッパ企画『切り裂かないけど攫いはするジャック』

劇団結成25周年とのこと。今回はSFではなくミステリー。19世紀末のロンドンを舞台に、同じ街角で乞食の老人、ミルク売り、花売り娘など次々と人が消え失せる謎の連続失踪事件が発生する。周囲の人びとや刑事や探偵が侃侃諤諤で推理し謎を解いていく……と思いきや、謎が解かれたと思った瞬間に新...

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アメリカの時計』

『アメリカの時計』はアーサー・ミラーの後期に書かれたあまり知名度の高くない作品だ。エンタメに振り切った改訂版は興行的に成功したようだが、この舞台は改訂前のバージョンがベースになっている。舞台は大恐慌時代のアメリカ。大恐慌は名前だけであまりよくわかっていなかったのだけど、今回ちゃん...

コンプソンズ『愛について語るときは静かにしてくれ』

SNSでみかけて急遽みることにした。聞き覚えのある劇団だと思ったのは道理で、2度目のコンプソンズだった。 これぞ小劇場というテンション高めのノリと演出は相変わらず不慣れで、加えて今回気づいたのはこれが演劇であることへの自己言及的なセリフの多さだ。しかし、そういう個人的な違和感とは違...

スヌーヌー『長い時間のはじまり』

タイトルに「はじまり」とあるがむしろ終わりからみた物語だ。 舞台は前作『モスクワの海』から引き続いて多摩川西岸の町登戸。ぼくはみてないがその前の作品も登戸が舞台で登戸三部作らしい。 その登戸の多摩川沿いにある小さなアパートCASA Yoknapatawpha(フォークナー作品の舞台の架...

野田地図『兎、波を走る』

まったく予備知識なしにみた。不思議な国のアリス、ピーターパン、桜の園などさまざまなシーンの間を言葉遊びで行き来してがどこに行き着くのか不安に思う瞬間もあったが、ちゃんとすべての言葉がつながって着地した。お見事。 以下ネタバレを含む。 最近の野田地図の着地点は現実に日本でおきた事件で、...