演劇ノート

遊園地再生事業団『ヒネミの商人』

ぼくが演劇をみはじめたのは世紀末も押し迫ってからからなので、1990年代前半のヒネミシリーズには立ち会えてない。ヒネミシリーズは今はもうないヒネミという田舎町を舞台にしたサーガ的な作品群で、『ヒネミの商人』はそのヒネミシリーズの2作目だ。この作品単独ではヒネミという町が今はもうな...

地点『悪霊』

つい最近『悪霊』を読んだタイミングで今回の上演。グッドタイミングというしかない。 長大な小説だし、地点なので、ストレートな演劇化ではない。舞台には雪が降っていて、池に見立てられたとおぼしき中央の沈み込んだ穴のまわりを安部聡子さんがハイペースでジョギングしているシーンからはじまってま...

岩松了プロデュース『宅悦とお岩〜四谷怪談のそのシーンのために〜』

前作のチェーホフ『カモメ』を上演しようとする若者たちの姿を描いた群像劇から3年ぶりの岩松了セルフプロデュース公演。思いおこせば前回は地震の直後で不透明感漂う中での観劇だった。 今回も演劇を上演しようとしているというシチュエーションは同じ。題材は四谷怪談。その中から毒で顔がただれたお...

水素74%『荒野の家』

これまでシュールで抽象的な人間関係を描いてきた田川啓介が、若干リアルに寄って家族というものに向き合おうとした作品。 引きこもりの息子、共依存の母親、家庭から逃避している父親、嫁ぎ先から一時帰宅の娘の4人家族。父親は母親に内緒で大山登山スクールというスパルタ施設に息子を送り込もうとす...

射手座の行動『行動・1』

大雪の中転んで強かに腰をうちつけるもどうにか会場にたどりついた。こんな悪天候にもかかわらず意外にも盛況。 4編のコント集。ストーリーは独立しているが、一部の登場人物が共通して微妙な統一性がある。 新幹線の運転席に新婚の妻を連れ込む「こだま」、整骨院の院長の道ならぬ恋「ある院長の憂鬱」...

ミクニヤナイハラプロジェクト『シーザーの戦略的な孤独』

遅ればせながら今年初めての観劇。 シェークスピアの有名な戯曲『ジュリアス・シーザー』からタイトルはとっているが、実際はその中のこれまた有名なセリフ「ブルータスお前もか」の「も」について書いたという作品。だからシーザーもブルータスも出てこない。 2030年の日本。そこでは放射能に耐性を...

直人と倉持の会『夜更かしの女たち』

2013年最後の観劇。下北沢で観るのは久しぶりだ。 直人と倉持の会初回だが、竹中直人自身は脇にまわっている。スキャンダルに疲れて人気女優トワコが久しぶりに故郷に帰ってくると、ちょうど恩師の送別会兼同窓会が行われていた。誰からともなく、高校時代自殺した人気者の男子のことを口にし、その...

チェルフィッチュ『地面と床』

衰退と戦争のふちにある近未来の日本。ある家族を通して生者と死者それぞれの倫理の葛藤を描く。 母は亡くなって地面の下で眠っている。いや幽霊として歩き回っている。その姿は長男由多加の妻遥には見える。しかし彼女は霊の存在やささやかな要求を徹底的に無視する。対照的なのが次男由起夫だ。ことあ...

フェスティバル/トーキョー13『石のような水』

メロドラマだった。 松田正隆脚本の舞台をみるのは9年ぶりくらい。よく平田オリザとくんでいたときに見にいっていたがその叙情、美学(滅びの美学とでもいおうか)がすばらしかった。途中からグロテスクで過剰に観念的になってきてしまってあれと思っている間にこのコラボレーションがなくなり、観る機...

フェスティバル/トーキョー13『光のない。(プロローグ?)』

見ててきょとんとしてしまった。「プロローグ?」のクエスチョンマークが頭に張り付いて離れない感じ。 福島原発事故をテーマにした抽象的で詩のようなテキストだ。それを(単純なリーディングではなく)演劇化するのはたぶん2つの方法がある。愚直になるのを恐れずにテキストに寄り添ってそれをわかり...

城山羊の会『身の引きしまる思い』

二年前この三鷹で上演された『探索』につづいて、また劇場職員の森元さんが前口上およびそれに引き続いて殺される役で登場する。前回は戸惑いが感じられたが今回は楽しんでやっておられるご様子だった。 城山羊の会で一番好きなのは悪夢的なたたみかける不条理さなんだけど、今回はいきなり悪夢のシーン...

サンプル『永い遠足』

これまでのサンプルの作品はすべてこの作品への布石だったのかもしれない。そう思わせるような最高傑作。 生みの母を妻にして子供までつくってしまうオイディプス王のギリシア悲劇をベースに、血のつながらない娘との関係に悩む家族、桃太郎と名乗る妙なカリスマのある男、電脳空間をかけめぐる仮想人格...

『シダの群れ 第三弾 港の女歌手編』

第二弾は見逃したので、第一弾以来のシダの群れ。阿部サダヲ演じる森本という男以外は新顔だが、劇中第一弾の登場人物に対する言及がある。わからなくても問題はないが、第一弾を見ていたほうが森本という不可解な男に対する理解は深まるだろう。 今回もゴッドファーザー的なヤクザたちの友情と裏切りの...

青年団『もう風も吹かない』

もう風は吹かない 財政が破綻した近未来の日本。青年海外協力隊の廃止が決まり、最後の派遣隊員となる若者たちの、訓練所を舞台にした群像劇だ。訓練生の間の恋愛、ドロップアウトして退所する者、所内での飲酒禁止をやぶる、本部からの視察など、人間模様のおもしろさを味わいつつも、それを通じて社会...

イキウメ『片鱗』

片鱗 黒沢清監督が映画にしそうなモダンホラー。客演の手塚とおるさんがセリフなしで名前もない不気味な男という大胆な配役で驚いた。人の良さそうな父と娘の二人家族が引っ越してきた途端、怪しい人影がうろつき、植物が枯れ、住民が精神の平衡を崩しはじめる……。 ある呪いをめぐる物語だ。今回の舞台...

野田地図『MIWA』

「えー、美輪明宏?!」と最初この公演の話をきいたときは what?, how?, why? と疑問の洪水だった。見たことはないけどテレビのスピリチュアル番組の片棒を担いでいた人というイメージが強かったのだ。 しかし、さすが野田秀樹。美輪明宏という類まれなキャラクターのたどった人生の軌跡を見事に演劇化していた。長崎...

文学座アトリエの会『未来を忘れる』

サンプルの松井周の書き下ろし作品ということで初めての文学座。 薬品の力でゴキブリの姿で生まれた新世代の人間が語る黙示録的な近未来日本史。彼の父と母(ふたりとも普通の人間)の物語が主軸になっている。 いつもそうなんだけど、松井周の戯曲は観念的だ。おそらくサンプル作品では俳優との稽古の中...

青年団国際演劇交流プロジェクト『愛のおわり[日本版]』

舞台がまるでボクシングのリングみたいに男と女が対角線上に位置し言葉による戦いが行われる。ただしほんとうのボクシングとパンチの応酬はなく攻撃するのはどちらか一方のみ。前半は男が攻撃し、後半は攻守所をかえて女のターンになる。賭けられているのは二人の「愛のおわり」だ。 最初に別れを切り出...

五反田団『五反田の朝焼け』

五反田団の劇団員だけで作った舞台。前作『五反田の夜』から2年ぶりだ。登場人物が共通しているので、一瞬同じ作品の再演に来てしまったのかと思ったが、続編だった。前作もおかしかったけど、今回も腹を抱えて笑えた。連休最終日の憂鬱を吹き飛ばしてくれた。 元祖アンドロイド演劇ということで人形の...

ハイバイ『月光のつゝしみ』

2002年に岩松了自身の演出、竹中直人、桃井かおり主演でみたときは軽い芝居だと思っていた。今日観て思ったのは、岩松了の書くセリフの困難さだ。 姉弟の物語。年の離れた若い妻と結婚したばかりの弟の家に、事情があって職を辞した姉が一時的に同居している。それにたまたま遊びに来ている同郷の友...