前作は架空の国の設定でリアリティが感じられず入り込めなかったのだが今回は現代日本の一般的な家庭が舞台。父、母、高校生の娘、の三人家族に、今日は家庭教師の先生(男)がきている。成績があがったお祝いにみんなで外食にいこうという話になるが、そこに予期せぬ訪問者がやってきて……。 ちょっと...
開演直前に大きめの地震というハプニング。そのあと芝居の中にも大きな地震のシーンが出てくるというシンクロニシティー。 イキウメをみはじめて日が浅いので受け売りだが、『図書館的人生』というのは数編の短いストーリーをつなげたオムニバス作品のシリーズでこれまでに3作品上演されている。今回は...
映像と演劇がシンクロするハイブリッド演劇。リリカルな映像と詩情がすばらしい凝縮された60分間。散歩中に迷って10分遅れたのが痛恨だった。ぜひ、もう一度みたい。 ひとりの女の子と彼女を見守る2人のゾンビの物語。演劇で表現できないことを映像で補完するというより、演劇と映像を組み合わせた...
今回に限らず田川啓介の作品はみなそうなのだが、登場人物はみなだれかから掛け値なしの全幅の愛情を得ることを希っている。でも、求めた相手はまったく無関心で別の人に愛情を求める。というn=5のウロロボスの蛇的な構造がある。その円環の内側にはただ一人イマジナリーな女性が存在していて、彼女...
ぼく的にも初のアンドロイド演劇だが、これまでのアンドロイド演劇は30分弱で通常の演劇と同じ時間くらいの尺ははじめてということだし、ちょうど今日が初日というはじめてづくしだった。そのおかげで平田オリザさんと、アンドロイドの技術を提供した石黒浩さんのアフタートークをきくことができたが...
かつて自身が引きこもりだったという岩井秀人が、引きこもりの青年たちとその家族、彼らの社会復帰を手助けする団体の人々を多面的に描いた作品。自身の引きこもり時代を描いた『ヒッキー・カンクーントルネード』の続編ということらしいが、そちらは未見。 引きこもりという現象を通して、人間、セカイ...
6年前の再演ということだけど、ぼくは初見。 生徒の自殺未遂があった中学校の職員室が舞台。一見しっかりしていて頼りがいのある女教師里見は、実は極端に自己中心的な性格で、自殺しようとした生徒からの手紙を無視していた。さらに、そのことを隠蔽するために陰謀をはりめぐらす。 里見先生というキャ...
五反田団とフランスの劇団ASTROVのコラボレーション。台本は前田さんが書いたが、演出は ASTROV の Jean de Pange が担当して、前田さんは稽古場にほとんど顔をださないようにしていたそうだ。日本側の出演者のちらしのコメントから、意思疎通をはかる上での苦労ぶりが伝わってくる。 タイトルでもわかるようにテ...
改装されてからはじめての芸劇。 前作『南へ』同様、日本人の影の精神史を描いた作品。『南へ』では自然災害と天皇制をテーマにしていたが、今回はオリンピックと満州、731部隊、そしてもうひとつ噂という名の言霊。エッグという架空のスポーツを媒介に現代、1964年の東京オリンピック、1940...
中井美穂さんが出した「落語」、「師匠の部屋」というお題に沿って若手三劇団が競演するという企画。水素74%の田川啓介はそれに対して、共依存的な師弟関係をもってきた。暴力を媒介にしてちょっと同性愛的なニュアンスのある関係。師匠が弟子に教えているのは、落語でもそのほかの芸事や武道でもな...
前作『鎌塚氏、放り投げる』に続いて、世間から完璧な執事といわれる鎌塚アカシを主人公にしたシリーズ第2作。前作もそうだったけど、とことんエンターテインメントに徹しきろうという姿勢が潔くていい。全編笑いにあふれて、しかもチケット代に見合った上品さに仕上げているのはさすがだ。 今回の舞台...
母と姉と共に祖母が住んでいた古い家に移り住むことになった中学生の輝夫。家がきしむ音や、大きなクモ、何かいる気配におびえる輝夫が、夜一人でマンガを読んでいると姿は見えないのにすぐそばで男の声が聞こえる。それは暗闇にひそみ人間を観察する使命をおびた種族の一人で、いずれ人間のすむ世界に...
ちょっとだけみてすぐ離れてしまったハイバイの芝居をまたみてみようと思ったのは、岩井秀人の役者としての面白さによるところが大きい。妙に弁が立って時折攻撃的になるんだけど、いがかわしくて小心で女々しくてという役を演じさせたらピカイチ、彼が出てくるだけでおかしくなってしまう。このおかし...
病人を収容する国立の施設が舞台。そこでは代表のルートを頂点に専門職員、一般職員、患者という厳然としたヒエラルキーが存在し、患者は番号で呼ばれている。そんな中、患者6457号が死亡し6459号が出産するという想定外の事件が連続して起きる……。 冒頭部の不条理さとブラックな笑いに大いに...
A県のK町。東京から360kmはなれたその町で、2012年7月9日午前7時39分通学のために最寄りのローカル駅に向かう女子高生が水たまりを飛び越えくしゃみをした一瞬を停止させて、その一瞬を何度何度も変奏曲というかラヴェルのボレロみたいに少しずつ肉付けをしていきながら物語っていく。...
5月に主宰のイケテツこと池田鉄洋が、この表現・さわやかのほうに専念したいということで、古巣の劇団猫のホテルを退団したとのこと。出演者がかなり共通していることもあって、表現・さわやかは猫のホテル内のプロジェクト的な色彩が濃かったが、これからは名実ともに独立した劇団としてやっていくよ...
劇場がある場所も含めて何の予備知識もなく初マープとジプシー。 今までみてきたいくつかの劇団の芝居が頭にオーバーラップする。音楽の有機的な使い方はままごとの『わが星』だし、身体を酷使するする動きがあるところは東京デスロック?(一度しかみてないのであやふや)、役者がある役を演じていうセ...
本多劇場の地下にある楽園という名の不思議な劇場。もともと飲食店だったものを改装したようだ。 スキラギノエリという架空の王国の王宮を舞台にした作品。妖艶な王妃、頼りない国王、問題児の王子、そこに異国から突然あらわれた家庭教師と、のっけからこれからどこへ連れて行ってくれるのかワクワクさ...
もし江戸時代の剣豪と呼ばれた人たちが、現代の日本人みたいな柔和で小ずるい小市民的なメンタリティーをもっていたら、というところからうまれるおかしさと、前田司郎が演じる宮本武蔵の卑屈さと卑怯さのリアリティーがからみあって、奇妙な魅力をもつ時代劇だった。佐々木小次郎と武蔵の決闘があるも...
原因がわからないまま高速道路で果てしない渋滞にまきこまれる人々。解決の見込みがないまま何日も経過し最初はいがみあっていた人々の間には連帯がうまれる。やがて一年の月日が流れ…… 物語が進むにつれてどんどんおもしろくなっていった。だからラストが一番すばらしい。美しい、美しすぎる共同体の...