演劇ノート

昨日の祝賀会『冬の短編』

短編集だし脱力系の歌が冒頭や途中にはさみこまれるから、気を抜いてみていると、にじみ出てくる毒にあてられる。思ったより骨太な芝居だったのだ。 最初この「昨日の祝賀会」というユニットの性格を知らず、なぜ永井若葉さんが前面に立ち続けすべてをかなぐり捨てる奮闘をしているのかわからなかったが...

『音のいない世界で』

欲をいえば。 と感想の冒頭に書きたくなる芝居だった。音楽や鳥のさえずりなどの「音」が失われてしまった世界、その音を取り戻すためにはぐれて別々に旅をする夫婦の物語。とてもよくできた大人のメルヘンだった。登場するキャラクターがそれぞれ個性的で子供がみても十分楽しめる内容だが、欲をいえば...

『祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~』

今年の観劇納め。のはずが納まらないもやもやが残る舞台。4時間超の今年最大の失敗作というのもそれほどひどい表現じゃなくて、というのもあえて成功パターンをはずしにきてこうなっているからだ。その心意気は買いたい。 以下の記述はネタバレ含む。 ウィルヴィルという町を暴力で支配するエイモス家、...

『ポリグラフ 嘘発見器』

<img src="http://i2.wp.com/asharpminor.com/wp-content/uploads/2012/12/polygraphe.jpg?resize=171%2C240” alt="polygraphe” class="alignleft” wp-image-3820” data-recalc-dims="1” /> カナダのフランス語圏ケベックで活躍する Robert Lepage の映像作品の舞台化。未解決の女性惨殺事件の関係者3人が登場人物。被害者女性をモデルにした映画のヒロインに抜擢された女優ルーシー、ルーシーの隣人で偶然被害者女性の友人で第一発見者でもあったゲイ男性フランソワ、そしてフランソワの...

城山羊の会『あの山の稜線が崩れてゆく』

前作は架空の国の設定でリアリティが感じられず入り込めなかったのだが今回は現代日本の一般的な家庭が舞台。父、母、高校生の娘、の三人家族に、今日は家庭教師の先生(男)がきている。成績があがったお祝いにみんなで外食にいこうという話になるが、そこに予期せぬ訪問者がやってきて……。 ちょっと...

イキウメ『The Library of Life まとめ*図書館的人生 ㊤』

開演直前に大きめの地震というハプニング。そのあと芝居の中にも大きな地震のシーンが出てくるというシンクロニシティー。 イキウメをみはじめて日が浅いので受け売りだが、『図書館的人生』というのは数編の短いストーリーをつなげたオムニバス作品のシリーズでこれまでに3作品上演されている。今回は...

ハイバイ『霊感少女ヒドミ』

映像と演劇がシンクロするハイブリッド演劇。リリカルな映像と詩情がすばらしい凝縮された60分間。散歩中に迷って10分遅れたのが痛恨だった。ぜひ、もう一度みたい。 ひとりの女の子と彼女を見守る2人のゾンビの物語。演劇で表現できないことを映像で補完するというより、演劇と映像を組み合わせた...

水素74%『バラバラ姉妹に憐れみを』

今回に限らず田川啓介の作品はみなそうなのだが、登場人物はみなだれかから掛け値なしの全幅の愛情を得ることを希っている。でも、求めた相手はまったく無関心で別の人に愛情を求める。というn=5のウロロボスの蛇的な構造がある。その円環の内側にはただ一人イマジナリーな女性が存在していて、彼女...

青年団『アンドロイド版 三人姉妹』

ぼく的にも初のアンドロイド演劇だが、これまでのアンドロイド演劇は30分弱で通常の演劇と同じ時間くらいの尺ははじめてということだし、ちょうど今日が初日というはじめてづくしだった。そのおかげで平田オリザさんと、アンドロイドの技術を提供した石黒浩さんのアフタートークをきくことができたが...

パルコプロデュース『ヒッキー・ソトニデテミターノ』

かつて自身が引きこもりだったという岩井秀人が、引きこもりの青年たちとその家族、彼らの社会復帰を手助けする団体の人々を多面的に描いた作品。自身の引きこもり時代を描いた『ヒッキー・カンクーントルネード』の続編ということらしいが、そちらは未見。 引きこもりという現象を通して、人間、セカイ...

劇団、本谷有希子『遭難、』

6年前の再演ということだけど、ぼくは初見。 生徒の自殺未遂があった中学校の職員室が舞台。一見しっかりしていて頼りがいのある女教師里見は、実は極端に自己中心的な性格で、自殺しようとした生徒からの手紙を無視していた。さらに、そのことを隠蔽するために陰謀をはりめぐらす。 里見先生というキャ...

五反田団+ASTROV『アンダスタンダブル?』

五反田団とフランスの劇団ASTROVのコラボレーション。台本は前田さんが書いたが、演出は ASTROV の Jean de Pange が担当して、前田さんは稽古場にほとんど顔をださないようにしていたそうだ。日本側の出演者のちらしのコメントから、意思疎通をはかる上での苦労ぶりが伝わってくる。 タイトルでもわかるようにテ...

野田地図『エッグ』

改装されてからはじめての芸劇。 前作『南へ』同様、日本人の影の精神史を描いた作品。『南へ』では自然災害と天皇制をテーマにしていたが、今回はオリンピックと満州、731部隊、そしてもうひとつ噂という名の言霊。エッグという架空のスポーツを媒介に現代、1964年の東京オリンピック、1940...

中井美穂×シアターグリーン企画 水素74%『師匠の部屋』

中井美穂さんが出した「落語」、「師匠の部屋」というお題に沿って若手三劇団が競演するという企画。水素74%の田川啓介はそれに対して、共依存的な師弟関係をもってきた。暴力を媒介にしてちょっと同性愛的なニュアンスのある関係。師匠が弟子に教えているのは、落語でもそのほかの芸事や武道でもな...

M&Oplays プロデュース『鎌塚氏、すくい上げる』

前作『鎌塚氏、放り投げる』に続いて、世間から完璧な執事といわれる鎌塚アカシを主人公にしたシリーズ第2作。前作もそうだったけど、とことんエンターテインメントに徹しきろうという姿勢が潔くていい。全編笑いにあふれて、しかもチケット代に見合った上品さに仕上げているのはさすがだ。 今回の舞台...

こどもとおとなのためのお芝居『暗いところからやってくる』

母と姉と共に祖母が住んでいた古い家に移り住むことになった中学生の輝夫。家がきしむ音や、大きなクモ、何かいる気配におびえる輝夫が、夜一人でマンガを読んでいると姿は見えないのにすぐそばで男の声が聞こえる。それは暗闇にひそみ人間を観察する使命をおびた種族の一人で、いずれ人間のすむ世界に...

ハイバイ『ポンポンお前の自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン』

ちょっとだけみてすぐ離れてしまったハイバイの芝居をまたみてみようと思ったのは、岩井秀人の役者としての面白さによるところが大きい。妙に弁が立って時折攻撃的になるんだけど、いがかわしくて小心で女々しくてという役を演じさせたらピカイチ、彼が出てくるだけでおかしくなってしまう。このおかし...

『温室』

病人を収容する国立の施設が舞台。そこでは代表のルートを頂点に専門職員、一般職員、患者という厳然としたヒエラルキーが存在し、患者は番号で呼ばれている。そんな中、患者6457号が死亡し6459号が出産するという想定外の事件が連続して起きる……。 冒頭部の不条理さとブラックな笑いに大いに...

ままごと『朝がある』

A県のK町。東京から360kmはなれたその町で、2012年7月9日午前7時39分通学のために最寄りのローカル駅に向かう女子高生が水たまりを飛び越えくしゃみをした一瞬を停止させて、その一瞬を何度何度も変奏曲というかラヴェルのボレロみたいに少しずつ肉付けをしていきながら物語っていく。...

表現・さわやか『ロイヤルをストレートでフラッシュ!!』

5月に主宰のイケテツこと池田鉄洋が、この表現・さわやかのほうに専念したいということで、古巣の劇団猫のホテルを退団したとのこと。出演者がかなり共通していることもあって、表現・さわやかは猫のホテル内のプロジェクト的な色彩が濃かったが、これからは名実ともに独立した劇団としてやっていくよ...