チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』

4年前にみた『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』は割とまだ記憶に新しいが、「ソリッド」に賭けてみにいった。 ストーリーやセリフはほぼ同じ。役者は7人中5人が残留。使われている音楽もバッハの平均律クラヴィーア第1番で同じだ。ただし演奏が前回電子音だったのがピアノになっている(演...

モメラス『28時01分』

『これは演劇ではない』というフェスティバル参加作品。『28時01分』というタイトルだし、ちょっとはじまる前に間があったので、『4分53秒』的な作品かと身構えたが、むしろどこが演劇ではないのかわからないような完璧に演劇らしい演劇沙品だった。 モメラス名義ではないが松村翔子作、演出とい...

青年団リンク キュイ『プライベート』

『これは演劇ではない』というフェスティバルの参加作だが、今年最初に見た演劇と言っていいのだろうか。 あたかもドキュメンタリー的に、舞台で稽古の日の様子を断片的に再現する。奇妙に自己言及的だが、これが不思議におもしろいのだ。過去の記憶を想起する行為の中にすでに詩情が含まれているのかも...

ジエン社『ボードゲームと種の起源』

タイトル通りテーマはボードゲーム。この作品のために作ったオリジナルのボードゲームを登場人物4人がテストプレイしているシーンから始まる。ボドゲ作家中大、長らくひきこもりだったその妹個子、中大の恋人というわけじゃないのに彼らと同居している謎の同居人ニホエヨ、そして中大がボドゲ会でひろ...

オフィスマウンテン『能を捨てよ体で生きる』

ぼくがよい観客になれないことは観る前からわかっていたのだが、スパイスのインタビューに啓発されて、自分の目で確かめようと思った。結果として、中に入り込めない完全な傍観者として60分間、ここにいていいのかという居心地の悪さを感じ続けたのだけど、それでも一部始終見届けたつもりではある。...

城山羊の会『埋める女』

俳優が観客に語りかけるシーンからはじまる。演劇ではふつうのことだけど考えてみると不思議だ。それはこの舞台の上の空間でも不思議なこととみなされて、トラックの運転手ゆたかがする話——真夜中にヒッチハイクの少女をひろって……——は往来の通行人に向けて話しているということになり、ごく自然...

お布団の哲学『対話篇』

プラトン『対話篇』の中の一篇『クリトン』が原作。誹謗中傷で死刑に処されようとしているソクラテスを脱走させるために友人のクリトンがやってくるが、ソクラテスは悪法ともいえども法という論理を振りかざして、それを拒絶するという有名な話だ。この舞台では、それが漫才の話に移しかえられている。...

お布団の哲学『想像を絶する』

二演目のダブルヘッダーの一本目。ひとり芝居だ。 二部構成。第一部では男性、第二部では女性が語り手で、本来二人の役者で上縁するところをあえて女性ひとりでやっている。しかも戯曲の言葉を細かく区切って暫定的な意味を浮上させつつ、次の言葉をつなげることによりそれを裏切っていくという興味深い...

『セールスマンの死』

戯曲は読んでいたがようやく舞台をみることができた。演出の長塚圭史さんがCINRA.NETのインタビューで「ほとんど演出の余地がないんです。ト書きまで細かく書き込まれているから、演出家が自分の色を出しにくい」と言っていた通りではあるが、だからこそ、戯曲をそのまま舞台に現出させるとい...

KERA・MAP『修道女たち』

前回のナイロン本公演はいつもの本多劇場ではなく芸劇だったが、今回のKERA・MAPが本多。劇団員が3人でているし、むしろこっちが本公演のような気がしてくる。 新しい国王から嫌われて迫害されるようになった宗教の修道女たちが主人公。47人いた修道女たちのうち43にんが国王の陰謀で毒殺さ...

モメラス『反復と循環に付随するぼんやりの冒険』

お金がテーマということで、路上で1000人の人に「あなたにとって、お金とはなんですか?」とインタビューしたそうだ。そのときの映像が舞台にも投影されて使われていた。 登場するのはほぼ直接にはお金と関係なく(とはいえお金に無関係な人間は現代にひとりもいない)、日本社会の片隅で生きる8人...

早稲田小劇場どらま館×遊園地再生事業団『14歳の国』

20年前の初演もみていた。うまく消化できなくて、そのときまだ芝居を見始めたばかりだったので、はじめてのうまく消化できなかった芝居だったかもしれない。それだからこそいまだに印象に残っている。 今回あらためてみて、かなりそのときのもやもやが晴れた気がする。消化できたというのではなく消化...

阿佐ヶ谷スパイダース『MAKOTO』

メンバーが大量に増えた新しい阿佐ヶ谷スパイダースの第一作。 妻を医療事故でなくした水谷は、それが担当医師の個人的事情による過失だったということを知り精神の平衡を失う。水谷は、医師に会うため、オオカミタクシーに乗り込み、大久保に向かい、さらに渋谷を経由して代官山と、夜の東京を疾走する...

野田地図『贋作桜の森の満開の下』

坂口安吾の作品をベースにした、夢の遊民社時代から上演している野田秀樹の代表作だが、初見。予備知識なしでみた。 みたあとにいろいろ知識を仕入れたのだが、「贋作」とはいうものの、坂口安吾の作品『耳男と夜長姫』にかなり密接に基づいている。そこにタイトルになっている『贋作桜の森の満開の下』...

ホエイ『スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア』

青年団リンクがとれて独立した最初の公演。2014年の再演らしい。 僻地の中学校の教室でおきるオカルト的な騒動。演出や俳優陣のがんばりもあってテンションがあがりとてもおもしろかった。 女性教師の設定が特異だ。ネットで妄想にかぶれている人の脳内のみ存在するような左翼教師という設定。実際に...

ナイロン100℃『睾丸』

タイトルのインパクトも大きいが、下北沢でなく池袋、実際の日本戦後社会がベースのストレートプレイという、これまでのナイロンからは驚きな舞台だ。 バブルがはじけた直後の1993年に25年前の全共闘学生運動が重なりあう。タイトルの「睾丸」には、人々を解放しようという運動の中でも女性を利用...

庭劇団ペニノ『蛸入道 忘却ノ儀』

開演前の説明では「儀式」と言っていたが、とある架空の宗教儀式を舞台化したもので、演劇というよりは音楽ライブに来たような感覚だ。陶酔感のある音響・音楽と、役者の苛酷そうな状況(中心部は90℃とモニターに流れた)が観客に一体感とグルーブをもたらす。これまで見た舞台で一番近いのは東京デ...

青年団『日本文学盛衰史』

青年団2年ぶりの新作とのこと。原作は未読なので(近日中に読むつもり)、以下の感想には今回の脚色と上演に対するものと、原作に対するものがシームレスに入り交じっているはず。 4場構成で各場は以下にリストアップする著名文士の通夜または葬儀のふるまいの席だ。 北村透谷 - 1894年(明治27年...

モメラス『青い鳥 完全版』

劇場に着くまで、タイトルだけ借りた別作品だと思っていたが、メーテルリンクの有名な童話劇そのものの上演だった。チルチルとミチルの兄妹が最後に自宅で幸せの象徴の青い鳥を見つけるということ以外、実はくはなにも知らなかったことに気づいた。 『青い鳥』の主要なテーマのひとつに死があるようなの...

五反田団『うん、さようなら』

知らない間にやっていることが多くて久々の五反田団。 70代後半以上の「お婆ちゃん」4人の熱海旅行を軸に、時間軸をなめらかに行き来して、過去の親娘旅行、葬式、痴呆になった仲間との再会などのエピソードを通して、「お婆ちゃん」と呼ばれる時間の長さ、その中にさまざまな記憶が重層的に積み重な...