『ドクター・ホフマンのサナトリウム 〜カフカ第4の長編〜』

ドクター・ホフマンのサナトリウム

カフカが遺した長編小説(どれも未完)は3篇だけだが、4作目が発見されたという設定で、小説の中の世界と、2019年の小説の発見者の家族の物語が交互に描かれ、やがて二つの物語は交錯する。

小説の主人公はカーラ・ディアマントという若い女性。婚約者の戦死という報せに疑問を抱き、伝えに来た兵士たちについて戦地に向かう。ある意味『失踪者(アメリカ)』の裏返しのような話だ。

発見者は晩年のカフカとベルリンの公園で交流のあった幼い少女だ(この交流は実話)。彼女は亡くなって公園にこなくなったカフカのアパートメントを訪ね、偶然草稿を発見し持ち帰る。それが95年後の2019年後再発見される。発見者の少女はまだ存命で孫の兄妹と暮らしている。彼らは兄の仕事の不始末で莫大な借金をつくり困っていた。この小説の出版権で挽回しようと考える。

物語の流れが唐突に断ち切られ新たな流れに合流していく。このつながらさこそカフカ作品の魅力なのでそこは忠実に再現していた気がする。

はじめてみる役者が多かったけど、みんな声がいい(席が遠くて顔がわからなかった)。プロジェクションマッピングを駆使した舞台美術がいつも以上に美しかった。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/神奈川芸術劇場ホールS席/9500円/2019-11-23 18:30/★★★

出演: 多部未華子、瀬戸康史、音尾琢真、大倉孝二、村川絵梨、谷川昭一朗、武谷公雄、吉増裕士、菊池明明、伊与勢我無、犬山イヌコ、緒川たまき、渡辺いっけい、麻実れい、王下貴司、菅彩美、斉藤悠、仁科幸、(演奏: 鈴木光介、向島ゆり子、高橋香織、伏見蛍、関根真理)