ナイロン100℃『睾丸』

睾丸

タイトルのインパクトも大きいが、下北沢でなく池袋、実際の日本戦後社会がベースのストレートプレイという、これまでのナイロンからは驚きな舞台だ。

バブルがはじけた直後の1993年に25年前の全共闘学生運動が重なりあう。タイトルの「睾丸」には、人々を解放しようという運動の中でも女性を利用して搾取してきた男の卑小なエゴが表現されている。

正味3時間の舞台だが、まったく飽きさせないというのは、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品ではあたりまえでもはや褒め言葉にもならないかもしれない。要所に要所にはさみこまれる笑いの強度とレベルもすばらしい。

ただ、個人的な感触としては作品としての統合性がちょっと足りないかと思うところがあり、あえて、もっとこうしたほうがよかったんではないかということを2つ書いておく。ネタバレを含む。

まずは一般的なこと。最後の惨劇は必要だったのだろうか。かなり本編との関係性が薄いので、むしろノイズになってしまった気がする。拳銃(今回は包丁もだけど)は使用されなくてはならないというチェーホフの言葉もあるので、もしやるならそれによって本編でかくされたものが比喩的にあぶりだされるとかの趣向があればよかったのだが。

もうひとつは単なる個人的な趣味の話。最後夫婦の関係を再び修復させなくてもよかった気がする。ばらばらになるけどつながりは残るという関係性のほうが奥行きが感じられる。

役者陣は、ナイロンメンバー、客演の人たち、みなすばらしかった。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/東京芸術劇場シアターウエスト/指定席6900円/2018-07-14 18:30/★★

出演:三宅弘城、みのすけ、新谷真弓、廣川三憲、長田奈麻、喜安浩平、吉増裕士、眼鏡太郎、皆戸麻衣、菊池明明、森田甘路、大石将弘、坂井真紀、根本宗子、安井順平、赤堀雅秋