ナイロン100℃『Don't Freak Out』
登場人物全員の顔が白塗り。そのことにDon’t Freak Out(ひかないで)というより、白塗りによりあらかじめ無用な感情移入の余地をなくしておいて、これから舞台で起きることにDon’t Freak Outという感じだった。
山奥で精神病院を経営する天房家に女中として奉公する姉妹くもとあめが主人公。くもは天房家の当主にして院長の征太郎の妾だったがのちに征太郎は発狂して地下に幽閉されその世話をする。あめは数学塾の主宰カガミとの縁談がもちあがるが、カガミは結婚直前に生徒と心中してしまう。という過去をふまえての物語。現在の当主夫妻(征太郎の妻が征太郎の弟茂次郎とそのまま結婚している)、長女颯子、長男清、征太郎と茂次郎の母など天房家の一族ほか、でてくるほとんどの人々はくもとあめ以外は因果応報で破滅する。
最後は意外にも笑い声で終わるが、救いのない笑いだ。結局くもとあめは過去と因習のなかにとどまり続ける。
好き嫌いでいうと苦手な部類だがしっかり構成された作品だった。ナイロンの舞台をスズナリ、しかもかなり前のほうでみられるというのも得がたい経験だった。
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/ザ・スズナリ/指定席7600円/2023-03-04 19:00/★★
出演:松永玲子、村岡希美、みのすけ、安澤千草、新谷真弓、廣川三憲、藤田秀世、吉増裕士、小園茉奈、大石将弘、松本まりか、尾上寛之、岩谷健司、入江雅人