シベリア少女鉄道『君がくれたラブストーリー』

かなり間があいて3度目のシベ少。黒服の登場人物たちによってある犯罪グループのノワールみたいな物語が展開する。なぜかそれぞれカードを持っていて、なにか話すごとに一枚ずつテーブルの上に置いていくのでわけもわからずにやついてしまう。その理由は前半の最後の方で判明してそれを受けての怒濤の...

『ドッグマンノーライフ』

前作『海底で履く靴には紐が無い』から1年が経過していることに驚かされた。ほぼ大谷能生さんのひとり芝居だった前作とはことなって今回は集団劇。オーディションで選ばれた若い俳優たちが出演している。 夫がリストラで主夫になり妻がスーパーに働きに出た夫婦を大谷能生、松村翔子の常連が演じ、その...

イキウメ『太陽』

人類が2つの種キュリオとノクスに分かれた近未来。キュリオというのは今のぼくたちと同じ不完全な種族だが、ノクスはより頑健で自己統制がきき老化もしない。ただし、一つだけ大きな弱点があって、太陽の光を浴びると致死的なダメージを受けるのだ。キュリオがノクスになる方法は存在するが、なぜかそ...

ロロ『あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語』

ロロの読み方もはっきりしないまま(クチクチやシカクシカクの可能性を排除できなかった)初観劇。同じ姓の三浦大輔との連想からワイルドでドロドロした芝居を想像したり、タイトルから喪失感あふれる恋愛ものを想像したりしていたが、どちらも全く的外れでいい意味で裏切られた。 一言でいえばメルヒェ...

『8月の家族たち August: Osage Country』

アメリカで2007年に初演され高い評価を勝ち得た戯曲。メリル・ストリープとジュリー・ロバーツ主演で映画化もされている。 オクラホマ州オーセージ郡、大草原の片隅で二人だけで暮らす夫婦。夫ベヴァリーは元詩人で現アル中。妻ヴァイオレットはガンの闘病中で薬物の過剰摂取。うだるような8月、住...

ナカゴー特別劇場『もはや、もはやさん』

初めてのナカゴー。最初洋食屋を舞台にした人情ものかと思うが、いい意味で期待が裏切られ、まさかのホラー展開。しかもよくできた落語のオチみたいに怒涛のハッピーエンド?になだれ込んだ。 文字通りのモンスター採用希望者を演じた菊池明明さんも鬼気迫っていたし、荒唐無稽のかなたに落ちてしまいそ...

Wけんじ企画『ザ・レジスタンス、抵抗』

演劇活動開始当初より「青年団の山内健司さんとは別人の」と名乗り続けてきた城山羊の会の山内ケンジ(本名は山内健司)が満を持してその青年団の山内健司とタッグを組む。主演は山内健司、その他の俳優陣も全員青年団だ。 主人公は排ガス不正が発覚した某ドイツ系自動車のディーラーに勤める中年男性。...

ミクニヤナイハラプロジェクト『東京ノート』

ぼくは初演から4年後の1998年に戯曲の作者の平田オリザ自身の演出で見ている(そのあと2007年にも見ている)。その時はヨーロッパの戦争で有名な絵画が避難してきていて日本も戦争に巻き込まれそうになって徴兵の話まで囁かれているという状況が絵空事に感じられたものだけど、今や数年後のシ...

M&Oplays プロデュース『家庭内失踪』

定年を迎え悠々自適の生活の元教師の夫野村と年の離れた後妻雪子、そして婚家から出戻り中の先妻との間の娘かすみ。かすみの夫石塚は舞台に登場せず、代わりに彼からのメッセンジャーとして部下の若者多田が定期的にやってくる。実は多田は雪子に会いにきているのではないかと、かすみは疑いの目を向け...

テアトル・ド・アナール『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ構成の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“――およそ語り得ることについては明晰に語られ得る/しかし語りえぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語りえずただ示されるのみの事実にまつわる物語』

タイトルが長い! 何より哲学者、しかもその人生だけでなく哲学にもスポットライトをあてる演劇を作るという試みが素晴らしい。「およそ語り得ることについては明晰に語られ得る/しかし語りえぬことについて人は沈黙せねばならない」という彼の主著『論理哲学論考』の末尾のあまりにも有名な言葉。結構...

野田地図『逆鱗』

「人魚」についての物語。 野田秀樹が作り出す物語は、前半荒唐無稽ともいえる言葉遊びと比喩の奔流から、後半一転してシリアスなテーマが浮かび上がってくるという構造が共通している。前半軽快に浮いていた言葉が後半で繰り返されるときにはずしりと響くのだ。今回も、そうくるかという感じで、見事な...

岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』

プリミティヴで奇怪な面をつけた俳優5人がひとりずつ舞台にあらわれ全員揃ったところで、一斉に足を踏み鳴らし、面の裏からどこから出しているかわからない奇妙な音を発し民族音楽のセッションみたいになる。それが収まるとともに突然一人が朗々と語り始める。 ある島についての物語(isla というの...

ハイバイ『夫婦』

岩井秀人の自分史演劇化シリーズの最新作。今回は、理不尽な暴力で子供たちを押さえつけてきた父親の死が描かれる。電話で母から呼び出されて病院にいってみると父親は見る影なくやつれて死に瀕していた。彼は家族全員が揃ったその日のうちに亡くなる。その死の裏には医療ミスがあったんじゃないかと原...

リクウズルーム『アマルガム手帖+』

まったく予備知識なしでチラシに書かれていた「美しき数式戯曲エンターテインメント」という惹句を見て見にいくことにした。どの辺が数式かというと、戯曲の一部の役名やセリフが数式みたいな形式で書かれている。数学的に厳密な数式ではなく、数学記号に接続詞的な役割をもたせたなんか不思議な記法だ...

青年団リンク ホエイ『珈琲法要』

史実に基づいた物語。 19世紀初頭江戸幕府の封建鎖国体制が続く日本に対してロシアは開国を求めて度々南下してきていた。そこで幕府は弘前藩に命じて藩士、領民を動員して蝦夷地の警護に当たらせる。ロシアからの攻撃はまったくなかったが、寒さと栄養失調により彼らは次々と病に斃れてゆき、7割以上...

ナイロン100℃『消失』

11年前の初演を見ているし、キャストはその時とまるっきり同じだし、3年前に戯曲を読んだばかりだし、新鮮味を感じないんじゃないかと危惧していたが、ぼくの忘却力は思っていたより偉大だった。初演同様いやそれ以上に鮮烈な観劇体験だった。というのには、11年前より現在のほうが戦争やテロ、ま...

『タニノとドワーフ達によるカントールに捧げるオマージュ』

カントールって集合論の人かと思ったら違った。タデウシュ・カントール。ポーランド出身の前衛的な演出家、美術家で今年が生誕100周年だったらしい。日本では主に寺山修司によって紹介されたそうだ。今回は彼へのオマージュということで庭劇団ペニノのタニノクロウに委託して新たに作り出された(と...

城山羊の会『水仙の花』

城山羊が三鷹でやるときにはつい期待してしまうが、今回も劇場の名物担当者森元さんが出てきて拳銃で撃たれてくれた。 城山羊の会はどの作品にも多かれ少なかれ暴力の香りを感じる。前作はリミッターを外しきった感じだったが、今回は血のにおいを花のにおいの裏に隠して、スタイリッシュになっていた。...

『God Bless Baseball』

日韓合同作品。舞台上では日本語、韓国語、そして英語が飛び交い、それぞれの翻訳が表示される。 岡田利規は日韓関係は扱わないと決めていたそうだ。 野球のルールがわからないという若い女性二人に男性がルールを教えようとするがどうもうまく伝わらない。そういう彼も少年時代のトラウマで今は野球が嫌...

地点+空間現代『ミステリヤ・ブッフ』

どんな材料を使ってもみじん切りにして餃子になってしまうのが地点の芝居だ。今回はその餃子に生演奏がついている。 もともと地点の芝居は観念性はほとんどなくて、ほぼ身体性で構成されているのだけど、音楽が加わったことで、さらに際立った。途中、音楽的な興奮がとても高まる箇所があり、ちょっと感...