ミクニヤナイハラプロジェクト『東京ノート』
ぼくは初演から4年後の1998年に戯曲の作者の平田オリザ自身の演出で見ている(そのあと2007年にも見ている)。その時はヨーロッパの戦争で有名な絵画が避難してきていて日本も戦争に巻き込まれそうになって徴兵の話まで囁かれているという状況が絵空事に感じられたものだけど、今や数年後のシナリオとして十分ありうる状況なのがすごい。
さて今回は「静かなる演劇」の代表作ともいえるこの作品をサンプリングして、役を複数人に割り振り、それを早いスピードでシャッフルしてゆく。大変賑やかな舞台になっていた。
ぼくはさすがに二度見ているのでこれはあのシーンだというように元の戯曲を頭の中で再構成できたけど、セリフも早口で聞き取りにくいし、初めて見た人にはつらかったかもしれない。
でも、ミクニヤナイハラでせっかくこの作品をやるなら、ふつうに演出してもつまらないし、こういう形に振り切ってよかったような気がする。役とセリフがバトンのように舞台を循環してゆくのはスポーツ競技を見るみたいで面白かったし、床に投影された映像もいつもながら効果的で美しかった。
作:平田オリザ、演出:矢内原美邦/吉祥寺シアター/自由席3500円/2016-03-27 14:00/★★★
出演:石松太一、稲継美保、笠木泉、門田寛生、川上友里、川田希、河村竜也、熊谷祐子、酒井和哉、重岡 漠、島田曜蔵、立蔵葉子、永井秀樹、沼田星麻、橋本和加子、兵藤公美、細谷貴宏、光瀬指絵、緑川史絵、守 美樹、森山貴邦