ミクニヤナイハラプロジェクト『シーザーの戦略的な孤独』

シーザーの戦略的な孤独

遅ればせながら今年初めての観劇。

シェークスピアの有名な戯曲『ジュリアス・シーザー』からタイトルはとっているが、実際はその中のこれまた有名なセリフ「ブルータスお前もか」の「も」について書いたという作品。だからシーザーもブルータスも出てこない。

2030年の日本。そこでは放射能に耐性を持ち通常の2倍以上の寿命をもつスーパーという新人類が誕生している。その中の二人小川と山村はある工場のようなところで働いている。小川は「影」に自分の存在を乗っ取られながら、空を見上げることで自分を取り戻すということを繰り返している。男性から女性に性転換した山村は、「向こう側」に残してきた店と仲間のことを気にかけているが、確かめに行くきっかけと勇気がない。そして小川の幼なじみでスーパーでないノーマルの清水、彼にはあと多くても10年くらいしか余命が残されてない。この3人の交流、旅立ち、そして最終的な孤独を描いた作品。

ノーマルの清水役の本田力さんが出てくる場面では大丈夫なのだが、スーパー役の二人のシーンはとにかくテンポが速くてセリフもところどころ聞き取れず意味内容が失われて、直前に食事をしてしまったせいもあって、あろうことか断続的に睡魔に襲われてしまった。話の流れはかろうじて把握できたのだが、個々のセリフの味わいは抜けてしまった。好きなタイプの話だけに、残念としかいいようがない。

ただ終演後の作・演出の矢内原美邦さんによるアフタートークは、観客からの質問が活発に飛び交い、その欠落した部分を大いに補ってくれたのだった。最後の孤独は絶望じゃなく、希望だったそうだが、観客からはそれはひとりよがりになってしまうんじゃないかと鋭い質問が投げかけられていた。そういうやりとりのひとつひとつがとても刺激的だった。

作・演出:矢内原美邦/吉祥寺シアター/自由席2800円/2014-02-01 19:30/★★

出演:足立智充、光瀬指絵、本田力