演劇の世界では、待つ対象はゴドーのはずだが、ゴドーはもう歩くAIアシスタントとしてここにいる。戦火から逃れ移民としてこの国にやってきた美容外科医が待っているのは船だ。 一日は無為に過ぎていき船は来ない。そこに上の神社から貧しい現地民エイが流されてくる。彼らは最初反目するがエイの兄が...
中央に白い机と椅子、棺のような箱が置かれ、その周りを客席が取り囲んでいる。ちょっとままごとの『わが星』を思い出した。 事故で10年以上植物状態でいよいよ人工呼吸器を外すという奇妙な時間差のある死の形をテーマにした作品。家族はもう思い出は何も残っていないと言う。だから進んだり戻ったり...
不条理劇といっていいのだろうか。男たちが窓のない部屋に閉じ込められて外に出られないというシチュエーション。最初二人なのだが、彼らの様子を外から見ていた男が何かの拍子にそこに入り込んでしまい三人になる。彼らは記憶は途切れ途切れで自分たちがいつからそこにいるのか、カメラでずっと監視さ...
ぼくは初演から4年後の1998年に戯曲の作者の平田オリザ自身の演出で見ている(そのあと2007年にも見ている)。その時はヨーロッパの戦争で有名な絵画が避難してきていて日本も戦争に巻き込まれそうになって徴兵の話まで囁かれているという状況が絵空事に感じられたものだけど、今や数年後のシ...
まず構成に度肝をぬかれる。前半と後半にわかれていて、前半は屋外3箇所で上演されるパフォーマンスのうち好きなものを選んで観ろといわれる。会場は元学校で、屋外というのは校庭のことなのだが、倉庫の上、体育館のバルコニー、中央のモニュメント的なものの前の3箇所に役者たちがいる。この三角形...
遅ればせながら今年初めての観劇。 シェークスピアの有名な戯曲『ジュリアス・シーザー』からタイトルはとっているが、実際はその中のこれまた有名なセリフ「ブルータスお前もか」の「も」について書いたという作品。だからシーザーもブルータスも出てこない。 2030年の日本。そこでは放射能に耐性を...
なんだか前半寝落ちとかいうツイートが散見するので、どんな芝居か不安混じりで見にいったら、おそろしい早口で次から次へと繰り出される言葉の強度、それぞれのエピソードが喚起する物語の奔流で瞬きするのも忘れるくらいだった。 登場人物は3人。祖父が一代で築き上げた財閥を引き継いだ御曹司タイモ...