シティボーイズ『仕事の前にシンナーを吸うな、』

去年やらなかったし今年もまったく音沙汰ないし、ひょっとしてもうやらないのかなと思っているところへ、突然の公演の情報。しかもかつてかつて数々の名コントを作りあげた三木聡が17年ぶりに返り咲く。これは万難を排していかなくていかない。 正味の時間が1時間足らずで短いのは理解する。平日の3...

M&Oplaysプロデュース『少女ミウ』

小劇場の岩松了はシアターコクーンなど中劇場の商業的な舞台の時とは別物だ。いや、不可解さというのは共通している。ただし、中劇場では登場人物の内面にとどまっている不可解さが小劇場では物語の前面にしみだしてくる。 舞台では二つの時期と場所を行き来する。 ひとつは震災、原発事故から間もない避...

イキウメ『天の敵』

前回みた『太陽』も不老不死がテーマで、今回もそう。前川知大さんは不老不死のオブセッションにとりつかれているのかと思いそうになるが、前回は過去作品の再演だったので、たまたまかもしれない。それに前作が種族的な不老不死だったのに対し今回は個人的な不老不死だ。 ジャーナリストが橋本和夫とい...

青年団リンク キュイ『TTTTT』

綾門優季の3つの短編戯曲を23人の演出家が演出するというオムニバス企画。近未来の東京という都市をテーマにした話という共通点がある。 『人柱が炎上』は国会周辺のデモの最中起きたテロ事件を周辺の複数の視点から描いたひとり芝居。一般のデモ参加者、警官、野次馬、被害者の元同級生など男女問わ...

KAAT×地点『忘れる日本人』

これまで見た地点はほぼ海外戯曲か海外小説をベースにした作品だったが、今回は日本の新進作家の新作の上演だ。地点にかかるとなんでも切り刻んでミンチにされて元の作品の形はかなりとらえにくくなるものなので、ひょっとして戯曲ではストレートな会話劇だったりするのかと思ったが、どうやら舞台でみ...

鳥公園『ヨブ呼んでるよ』

冒頭、主人公のみる夢の中から(インターバルを経て)別の人の夢(それが夢であることはあとからわかるのだが)に移る描写がとてもよかった。夢の中のおじさん、たかおちゃんのキャラクターがいい。 ゴミの山の中に暮らす醜く肥満した風俗嬢が主人公(それを演じる武井翔子さんは金髪とセンスの悪い衣装...

オフィスコットーネプロデュース『ザ・ダーク』

ホラーっぽいタイトルだがさにあらず。現代の家族劇。2004年にロンドンで初演されている。 とあるストリートに隣り合って住む、倦怠期の中年夫婦と引きこもりの息子、赤ん坊が生まれたばかりの若夫婦、そして幼児性愛の濡れ衣を着せられた男とその置いた母親。ふだんあいさつもかわさないこの3組の...

無隣館若手自主企画/松村企画『こしらえる』

冒頭は山縣太一による振り付きの現代詩の朗読のようなシーンからはじまり、暗転の後いきなりフレンチレストランを舞台としたべたな物語に切り替わる。行方不明のパティシエとスタッフ同士の不倫。台詞もクリシェの応酬で居心地の悪さを感じつつもこのベタさが癖になりそうになってきたところで驚きの展...

庭劇団ペニノ『ダークマスター』

アゴラの空間に年季の入った洋食屋のセットが出現していた。客席にはひとりひとりにイヤフォンが用意されている。 大阪のはずれのとある洋食屋。早めに閉店してマスターがひとりで酒を飲んでいるところに旅行者の青年が入ってくる。最初追い返そうとするが結局オムライスまでふるまう。そして唐突に自分...

野田地図『足跡姫 時代錯誤冬幽霊』

亡き中村勘三郎へのオマージュと謳った作品。そのオマージュは本人に直接ではなく主に歌舞伎を介して捧げられている。 今の歌舞伎の源流を形作った出雲阿国と猿若勘三郎(初代中村勘三郎)を彷彿とさせる三、四代目出雲阿国と淋しがり屋サルワカの二人が安寿と厨子王的な姉弟の設定で旅芸人の一座に加わ...

サンプル『ブリッジ 〜モツ宇宙へのいざない〜』

松の内の意味がよくわからないけど松の内が開けて今年初の観劇。6月に本公演の作品のワーク・イン・プログレスだそうだ。 人は誰も自分の腸にモツ宇宙を持ちやがて腸から裏返って人間を超えた存在になることができるという教義をもつユニークな新興宗教のセミナーという体で舞台は進行する。観客はその...

『ルーツ』

古細菌の研究者である小野寺は古細菌が生息するといわれる鉱山に赴くため鳴瀬という過疎の集落を訪ねる。鉱山は数十年前に鉱毒のため廃山となり、住民は差別にさらされひっそりと暮らしてきた。小野寺は最初拒絶されるが、徐々に村に溶け込み、古細菌研究は村発展のための希望とみなされる。しかし、小...

『シブヤから遠く離れて』

あまりにタイトル(ゴダールの『ベトナムから遠く離れて』のもじりだ)になじみがあって、観たことがあると勘違いしていた。内容をまったく思い出せないのもど忘れしているのだと思い込んでいた。実際は初演の蜷川幸雄演出版は観ていなかったわけだ。つまり今回の作者の岩松了本人演出版が初見。 もうひ...

城山羊の会『自己紹介読本』

初対面でお互いに自己紹介し合うというのは演劇でとても重宝され多用されるシチュエーションだ。この作品は唐突な自己紹介からはじまり、玉突き的に紹介が連鎖していくという、そのことをパロディー化したような構成になっている。 ミサオが公園のベンチで誰かを待っていると、突然増淵という見知らぬ男...

阿佐ヶ谷スパイダース『はたらくおとこ』

リンゴ農園そしてそのあとはじめた工場も失敗し、仕事がなくなりながらいくところがなく集まり続ける男たち。しかしとことん渋いリンゴを作るという夢は失っていなかった……。 強度が高い笑いからはじまるが、理不尽な出来事が連鎖して暴力がエスカレートしていきにっちもっさちもいかず破滅にむけてひ...

五反田団『pion』

男が女に交際を断られる。それでも男はめげずに友人関係を続けるが、女は動物園で檻の中の獣パイオンに運命的な恋をしてしまう。女は檻の中に入り込み、パイオンを人間にしようとする……。 人間と動物の違いは何なのかという問に対するひとつの回答。動物は血統というくびきから逃れられないが人間は場...

小田尚稔の演劇『是でいいのだ』

タイトルはドイツの哲学者カントの臨終の言葉から。彼の「あなたの意志の格率が常に同時に普遍的な立法の原理として妥当しうるように行為せよ」という有名な言葉が何度か引用されるが、決して上滑りしたり浮ついたりすることはない。2011年3月の震災を軸に東京で暮らすふつうの若者たちの日常と地...

ヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』

タイトルはハクスリーの『すばらしい新世界』のパロディーだが、ここでいう「新世界」は大阪の下町の新世界だ。新世界のさらにはずれにある大阪のおっさんたちが集う串揚げ屋が舞台。なにわの人情喜劇に転進かと思ったが、ちゃんといつものヨーロッパ企画だった。「新世界」にはダブルミーニングがかか...

遊園地再生事業団+こまばアゴラ劇場『子どもたちは未来のように笑う』

ちょっと考えると奇妙なタイトルだ。「未来のように笑う」。でも未来は笑わないし、そもそも未来が笑うというのはどういうことなのかわからない。この作品の中で子供たちは未来そのもの、つまりいい面も悪い面も不確定で未知なものとして扱われている。ある意味「無」そのものだ。無だからこそ、論理学...

青年団リンク ホエイ『麦とクシャミ』

『雲の脂』、『珈琲法要』ときてホエイをみるのは3作目だが、今回が一番おもしろかった。 太平洋戦争の戦況が厳しさを増す1944年、北海道の麦畑が広がる平野に突然火山が隆起した史実(当初はその事実は機密とされ、のちに昭和新山と呼ばれる)に題材をとった作品だ。見る前は、話題の映画シン・ゴ...