演劇ノート

岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』

プリミティヴで奇怪な面をつけた俳優5人がひとりずつ舞台にあらわれ全員揃ったところで、一斉に足を踏み鳴らし、面の裏からどこから出しているかわからない奇妙な音を発し民族音楽のセッションみたいになる。それが収まるとともに突然一人が朗々と語り始める。 ある島についての物語(isla というの...

ハイバイ『夫婦』

岩井秀人の自分史演劇化シリーズの最新作。今回は、理不尽な暴力で子供たちを押さえつけてきた父親の死が描かれる。電話で母から呼び出されて病院にいってみると父親は見る影なくやつれて死に瀕していた。彼は家族全員が揃ったその日のうちに亡くなる。その死の裏には医療ミスがあったんじゃないかと原...

リクウズルーム『アマルガム手帖+』

まったく予備知識なしでチラシに書かれていた「美しき数式戯曲エンターテインメント」という惹句を見て見にいくことにした。どの辺が数式かというと、戯曲の一部の役名やセリフが数式みたいな形式で書かれている。数学的に厳密な数式ではなく、数学記号に接続詞的な役割をもたせたなんか不思議な記法だ...

青年団リンク ホエイ『珈琲法要』

史実に基づいた物語。 19世紀初頭江戸幕府の封建鎖国体制が続く日本に対してロシアは開国を求めて度々南下してきていた。そこで幕府は弘前藩に命じて藩士、領民を動員して蝦夷地の警護に当たらせる。ロシアからの攻撃はまったくなかったが、寒さと栄養失調により彼らは次々と病に斃れてゆき、7割以上...

ナイロン100℃『消失』

11年前の初演を見ているし、キャストはその時とまるっきり同じだし、3年前に戯曲を読んだばかりだし、新鮮味を感じないんじゃないかと危惧していたが、ぼくの忘却力は思っていたより偉大だった。初演同様いやそれ以上に鮮烈な観劇体験だった。というのには、11年前より現在のほうが戦争やテロ、ま...

『タニノとドワーフ達によるカントールに捧げるオマージュ』

カントールって集合論の人かと思ったら違った。タデウシュ・カントール。ポーランド出身の前衛的な演出家、美術家で今年が生誕100周年だったらしい。日本では主に寺山修司によって紹介されたそうだ。今回は彼へのオマージュということで庭劇団ペニノのタニノクロウに委託して新たに作り出された(と...

城山羊の会『水仙の花』

城山羊が三鷹でやるときにはつい期待してしまうが、今回も劇場の名物担当者森元さんが出てきて拳銃で撃たれてくれた。 城山羊の会はどの作品にも多かれ少なかれ暴力の香りを感じる。前作はリミッターを外しきった感じだったが、今回は血のにおいを花のにおいの裏に隠して、スタイリッシュになっていた。...

『God Bless Baseball』

日韓合同作品。舞台上では日本語、韓国語、そして英語が飛び交い、それぞれの翻訳が表示される。 岡田利規は日韓関係は扱わないと決めていたそうだ。 野球のルールがわからないという若い女性二人に男性がルールを教えようとするがどうもうまく伝わらない。そういう彼も少年時代のトラウマで今は野球が嫌...

地点+空間現代『ミステリヤ・ブッフ』

どんな材料を使ってもみじん切りにして餃子になってしまうのが地点の芝居だ。今回はその餃子に生演奏がついている。 もともと地点の芝居は観念性はほとんどなくて、ほぼ身体性で構成されているのだけど、音楽が加わったことで、さらに際立った。途中、音楽的な興奮がとても高まる箇所があり、ちょっと感...

パリ市立劇場『犀』

パリのテロ直後のタイミングでパリ市立劇場の公演を見ることになるとは。突進してくる犀から逃げ惑う人々にテロの恐怖を感じずにはいられなかった。演出家はテロの影響で来日できなかったそうだ。 1960年にイオネスコが書いた作品。青年時代故郷のルーマニアでのファシズム勃興の記憶がベースになっ...

サンプル『離陸』

兄が弟に、妻と一緒に一晩過ごしてその夜起きたことを逐一漏らさず報告してほしいと依頼する。夏目漱石の『行人』から借りてきたシチュエーションだが、舞台は現代だし登場人物ひとりひとりの個性が際立っている。兄はもともとパフォーミングアーティストで今は大学で教えている。とても繊細で傷つきや...

カタルシツ『語る室』

イキウメ別館ということだが、ほぼほぼイキウメそのままの舞台だった。もちろんそれが悪いということは全くなくすごくよかったのだが、だったらイキウメでいいじゃないかと思ったのも事実だ。 ある地方都市で幼稚園児一人と送迎バスの運転手が跡形もなく失踪した事件から5年。関係者は平穏な日常を取り...

ヨーロッパ企画『遊星ブンボーグの接近』

SFっぽいタイトルでテーマは文房具というから筒井康隆の虚構船団的なものを想像していたら全然違った。 近くの遊星から地球に観光客にきている体長数センチの宇宙人ツアー客の一行。彼らが立ち寄ったのは平凡なOLが住む一室。テーブルの裏には彼らの身体くらいの大きさの文房具が置かれている。彼ら...

KERA・MAP『グッドバイ』

太宰最後の未完の小説をベースにウェルメイドなコメディーに仕上げた作品。戦後数年後の東京。編集である田島は、田舎に妻子をおいたままで、闇商売に関わって巨額の財をなし、十人近くの愛人と付き合っていた。そんな彼が、愛人と手を切り、妻子を田舎から呼び寄せようとする。そのための策略としてど...

チェルフィッチュ『女優の魂』

このテキストは小説として書かれたもので、それをそのまま上演しようと主演の佐々木幸子さんが言い出したことからこの企画がはじまったらしい。 長さ40分のひとり芝居。終始ある女優(といってもすぐ元女優だとわかるのだが)の独白という形で進行する。なぜ今は女優でなくなってしまったのかという理...

庭劇団ペニノ『地獄谷温泉 無明ノ宿』

人里離れた辺境の湯治場に人形芝居をやる父と息子二人がやってくる。手紙で余興を依頼されたのだ。しかしそこは管理者のいない宿で、手紙を出した人も見あたらないのだった。帰りのバスもなくなり二人は仕方なく宿に一泊することにする。その宿にいるのは近所の村からきた湯治客のおたきさんという老女...

劇団野の上『東京アレルギー』

野の上ははじめてで、「の」の上だから「ね」かなとわけのわからないことを思っていたが、実はこの間みたホエイ『雲の脂』と作・演出の人が同じだった。野の上は津軽に本拠を置く劇団で俳優陣も津軽在住の人が多いそうだが、今回はオール東京キャストで限りなくホエイに近い気がする。ただ、舞台で話さ...

『かがみのかなたはたなかのなかに』

こどももおとなも楽しめる芝居という触れ込み。舞台の手前と奥に境界があって、向こう側が鏡の中という設定。手前の世界の海軍士官タナカと向こう側のカナタ。二人は互いの存在に気がつき、友人になる。毎日ピザの配達にやってくる配達員は実は女性でコイケと名乗った(長塚圭史の女装)。彼女にも鏡の...

水素74%+三鷹市芸術文化センター『わたし〜抱きしめてあげたい〜』

何公演かスキップして久々の水素74%。変わってなさに驚く。登場人物たちは誰もが他者からの全面的な無条件の承認を求めている。太宰治作品をモチーフにした演劇公演ということだが、ぼくが太宰をほとんど読んでないこともあってどこがそうだかよくわからなかった。 幻想の中でモトカノと戯れたり失業...

シティボーイズ ファイナル part.1『燃えるゴミ』

「ファイナル」と銘打ったシティボーイズ3人だけの公演。作・演出に五反田団の前田司郎を迎えて、五反田団的な日常感覚と宇宙的シュールさが直結する笑いと、老境ど真ん中のシティボーイズ3人のゆるさが共鳴していたのではないだろうか。団地のゴミ捨て場でゴミの番をする初老男性3人の物語。 クライ...