隣接するイースト、ウエストという二つの劇場で同じキャストがいったりきたりしながら別々の公演を上演するという果敢なスタイル。ぼくはそのうちイーストだけみたので確かなことはいえないが、おそらく演じている役の割り当てと細部の違いはあっても基本どちらも同じ物語が上演されているのではなかろ...
チェーホフの四大戯曲のうちの三番目。テレビで舞台映像をみたり、戯曲を読んではいたが、直接舞台をみるのは初めてだ。 悲劇ではなくむしろ喜劇なんだけど、主要な登場人物はほぼ例外なく絶望する。これほど絶望濃度が高い芝居もめずらしいのではないか。特にワーニャは、自分を含めて家族全員で献身し...
夏らしく怪談がテーマ。怪談の語り手のたまごたちがネット中継を試みるという設定(怪談部分は実際にライブ中継されている)。 怪談は内容(半分以上著作権者の許可を受けての怪談本からの借用とのこと)も、各演者のキャラづけと語り口もほんとうにおもしろかった。それに比べると外側の、演者間の人間...
新設されたばかりの地方の公共劇場。そこで上演される新作の稽古場が舞台。若い女性が失踪しやがて人里離れた山小屋で死体が発見される。それとともに彼女が生前親しかった人々に奇妙なことが起きる。時折彼女としか思えない口調で話し始め、当人はそのことを覚えていないのだ。 サスペンスフルで観客を...
RPG的演劇のパロディ、大衆演劇のパロディ、そして異形の幼い少女のいたいけな心を描いた?『ゴッチン娘』という3つの中編からなるオムニバス。 こういういかにも小劇場的でハチャメチャなのりの芝居をみるのは久しぶりだ。どれもおもしろかったが個人的には合間合間の岩井秀人の語りがそれ以上にお...
ぼくが今までみてきた芝居ととても近いところにいたのになぜか観る機会がなかったMONOだが、代表作が再演されるときいて遅まきながら観にいくことにした(ただし今回の公演はMONO名義ではなく客演主体だ) 観光資源も特産物もとくにない過疎の町が舞台。最近復活した青年会は7人だけで、しかも...
冒頭目をあけてくださいというまで目を閉じてくださいと言われる。それでゆっくりと流れるアンビエントな時間に身を委ね、細かな音に耳を澄ます準備ができた。 震災の翌年2012年の物語だ。いわゆる災害ユートピアというやつで、妻は未来に希望をいだくなるようになり考え方や性格が一変して朗らかに...
1月にやっていたワークインプログレスの本公演。続編かと思ったが、登場人物や設定はほぼ共通しているものの、前作で古屋隆太が演じ最後に死を遂げるドクターという教祖的なキャラクターの存在がなかったことにされ、そのかわりに古舘寛治が演じるジョージというまったく別のキャラクターが教祖になっ...
去年やらなかったし今年もまったく音沙汰ないし、ひょっとしてもうやらないのかなと思っているところへ、突然の公演の情報。しかもかつてかつて数々の名コントを作りあげた三木聡が17年ぶりに返り咲く。これは万難を排していかなくていかない。 正味の時間が1時間足らずで短いのは理解する。平日の3...
小劇場の岩松了はシアターコクーンなど中劇場の商業的な舞台の時とは別物だ。いや、不可解さというのは共通している。ただし、中劇場では登場人物の内面にとどまっている不可解さが小劇場では物語の前面にしみだしてくる。 舞台では二つの時期と場所を行き来する。 ひとつは震災、原発事故から間もない避...
前回みた『太陽』も不老不死がテーマで、今回もそう。前川知大さんは不老不死のオブセッションにとりつかれているのかと思いそうになるが、前回は過去作品の再演だったので、たまたまかもしれない。それに前作が種族的な不老不死だったのに対し今回は個人的な不老不死だ。 ジャーナリストが橋本和夫とい...
綾門優季の3つの短編戯曲を23人の演出家が演出するというオムニバス企画。近未来の東京という都市をテーマにした話という共通点がある。 『人柱が炎上』は国会周辺のデモの最中起きたテロ事件を周辺の複数の視点から描いたひとり芝居。一般のデモ参加者、警官、野次馬、被害者の元同級生など男女問わ...
これまで見た地点はほぼ海外戯曲か海外小説をベースにした作品だったが、今回は日本の新進作家の新作の上演だ。地点にかかるとなんでも切り刻んでミンチにされて元の作品の形はかなりとらえにくくなるものなので、ひょっとして戯曲ではストレートな会話劇だったりするのかと思ったが、どうやら舞台でみ...
冒頭、主人公のみる夢の中から(インターバルを経て)別の人の夢(それが夢であることはあとからわかるのだが)に移る描写がとてもよかった。夢の中のおじさん、たかおちゃんのキャラクターがいい。 ゴミの山の中に暮らす醜く肥満した風俗嬢が主人公(それを演じる武井翔子さんは金髪とセンスの悪い衣装...
ホラーっぽいタイトルだがさにあらず。現代の家族劇。2004年にロンドンで初演されている。 とあるストリートに隣り合って住む、倦怠期の中年夫婦と引きこもりの息子、赤ん坊が生まれたばかりの若夫婦、そして幼児性愛の濡れ衣を着せられた男とその置いた母親。ふだんあいさつもかわさないこの3組の...
冒頭は山縣太一による振り付きの現代詩の朗読のようなシーンからはじまり、暗転の後いきなりフレンチレストランを舞台としたべたな物語に切り替わる。行方不明のパティシエとスタッフ同士の不倫。台詞もクリシェの応酬で居心地の悪さを感じつつもこのベタさが癖になりそうになってきたところで驚きの展...
アゴラの空間に年季の入った洋食屋のセットが出現していた。客席にはひとりひとりにイヤフォンが用意されている。 大阪のはずれのとある洋食屋。早めに閉店してマスターがひとりで酒を飲んでいるところに旅行者の青年が入ってくる。最初追い返そうとするが結局オムライスまでふるまう。そして唐突に自分...
亡き中村勘三郎へのオマージュと謳った作品。そのオマージュは本人に直接ではなく主に歌舞伎を介して捧げられている。 今の歌舞伎の源流を形作った出雲阿国と猿若勘三郎(初代中村勘三郎)を彷彿とさせる三、四代目出雲阿国と淋しがり屋サルワカの二人が安寿と厨子王的な姉弟の設定で旅芸人の一座に加わ...
松の内の意味がよくわからないけど松の内が開けて今年初の観劇。6月に本公演の作品のワーク・イン・プログレスだそうだ。 人は誰も自分の腸にモツ宇宙を持ちやがて腸から裏返って人間を超えた存在になることができるという教義をもつユニークな新興宗教のセミナーという体で舞台は進行する。観客はその...
古細菌の研究者である小野寺は古細菌が生息するといわれる鉱山に赴くため鳴瀬という過疎の集落を訪ねる。鉱山は数十年前に鉱毒のため廃山となり、住民は差別にさらされひっそりと暮らしてきた。小野寺は最初拒絶されるが、徐々に村に溶け込み、古細菌研究は村発展のための希望とみなされる。しかし、小...