劇団東京乾電池 ET×2『ゴドーを待ちながら』

いとうせいこう作の『ゴドーは待たれながら』を先にみてしまったこともあり、元ネタである『待ちながら』も見なくてはいけないと常々思っていてようやくその機会がやってきた。柄本兄弟によるウラディミール(ディディ)とエストラゴン(ゴゴ)。 不条理演劇の古典中の古典だ。古典に退屈なものなし、と...

劇団青年座『あゆみ』

様々な役者グループとともに何度も上演されて、早くも古典といっていいんじゃないかと思える作品だが、ぼくは初見。今年創設60周年を迎える新劇界の老舗青年座とのコラボ上演だ。 人間の歩くという行為にスポットライトをあて、ある平凡な女性の一生をおいかける。牧歌的で幸福な子供時代、上京と就職...

ハイバイ『おとこたち』

仲のいい同い年の男4人のたどる人生の軌跡を青春時代から死まで追いかけてゆく。山田は新卒入社した金融系の会社をドロップアウトしたあとAmazon的な会社に入社し、一生独身のまま過ごす。フリーターの森田は妻がでていったあと職場の後輩とつきあうが、妻が戻ってきて、三角関係に。やがて関係...

『十九歳のジェイコブ』

中上健次の小説をサンプルの松井周が脚色し維新派の松本雄吉が演出するという異色のコラボレーション。 日本人なのになぜかジェイコブという名前の青年がドラッグ、セックスにおぼれ無軌道に毎日を過ごしている。ジャズ喫茶でつるむ友人ユキは財閥の御曹司でありながら共産主義に傾倒し、一族が経営する...

FUKAIPRODUCE羽衣『耳のトンネル』

個人的にローチケはトラブルばかりで鬼門なのだが、今回もあろうことかチケットの引き替えに失敗した(まあ、直前に引き替えようとするほうが悪いのだが)。スタッフの方の厚意でどうにか潜り込ませてもらえた。 休憩10分込みで3時間の長丁場だが長さは感じなかった。いつものような一風変わったミュ...

三条会『セチュアンの善人』

観劇ダブルヘッダーによる疲労と、直前にワインを若干多めにのんでしまったため集中力を欠いていたことをまずお詫びしなくてはいけない。 それでもちゃんと内容は把握できた。神様がセチュアンの町でシェン・テという貧しい女性に出会い、彼女を善人と認め、これからも正しく生きていくようにとまとまっ...

青山演劇カウンシルファイナル『赤鬼』

みたことのない野田秀樹の名作戯曲をこれまたみたことのない新進気鋭の演出家の演出でという一石二鳥がまんまとあたった。 ある孤島に外国人の男が流れ着く。島の人間たちは彼を「赤鬼」と呼んで恐れ迫害する。そんな中、母親がよそ者だったため島の人間から「あの女」と呼ばれる女が、「赤鬼」と近づき...

イキウメ『関数ドミノ』

自動車が時速40kmで歩行者と衝突してしまう。ところが歩行者はかすり傷ひとつなし。助手席に乗っていた人が生死に関わる重傷を負う。まるで、透明な壁にぶつかったみたいに……。という奇妙な事故の目撃者が集められた場で、一人が奇妙な仮説をとなえる。世の中には「ドミノ」という自分の欲望や願...

ナイロン100℃『パン屋文六の思案 〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜』

岸田國士の一幕劇を数編とりまぜて上演する企画の第二弾。(ついこの間のような気がするが、第一弾はもう七年も前だった)。今回も七篇の小品を巧みにシャッフルして構成している。『恋愛恐怖病』の恋愛や結婚をおそれて友情を守ろうとする男女の関係は現代的だし、『麺麭屋文六の思案』でほうき星が地...

シベリア少女鉄道『あのっ、先輩…ちょっとお話が… …ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?』

2回目のシベ少。本編のストーリーは無駄にシリアス風味の学園青春もの。そこに、今回出演者としてクレジットされていない先輩劇団員3人が乱入して舞台上で好き勝手をして、ストーリー進行の邪魔をする。おかしかった。いい感じに笑いをもたらしてくれた。 ふだんは、ラスト30分前に今までのストーリ...

鳥公園『緑子の部屋』

初3311。かつて学校の教室だった凝縮された空間での観劇。隣の「教室」でパーティみたいなことやっているからどうなることかと思ったが、開演と同時に撤収してくれた。 まず登場人物の一人が画集のあるページを開いて、そこにある絵がなぜ好きかを説明するシーンからはじまる。左隅の消失点から右に...

遊園地再生事業団『ヒネミの商人』

ぼくが演劇をみはじめたのは世紀末も押し迫ってからからなので、1990年代前半のヒネミシリーズには立ち会えてない。ヒネミシリーズは今はもうないヒネミという田舎町を舞台にしたサーガ的な作品群で、『ヒネミの商人』はそのヒネミシリーズの2作目だ。この作品単独ではヒネミという町が今はもうな...

地点『悪霊』

つい最近『悪霊』を読んだタイミングで今回の上演。グッドタイミングというしかない。 長大な小説だし、地点なので、ストレートな演劇化ではない。舞台には雪が降っていて、池に見立てられたとおぼしき中央の沈み込んだ穴のまわりを安部聡子さんがハイペースでジョギングしているシーンからはじまってま...

岩松了プロデュース『宅悦とお岩〜四谷怪談のそのシーンのために〜』

前作のチェーホフ『カモメ』を上演しようとする若者たちの姿を描いた群像劇から3年ぶりの岩松了セルフプロデュース公演。思いおこせば前回は地震の直後で不透明感漂う中での観劇だった。 今回も演劇を上演しようとしているというシチュエーションは同じ。題材は四谷怪談。その中から毒で顔がただれたお...

水素74%『荒野の家』

これまでシュールで抽象的な人間関係を描いてきた田川啓介が、若干リアルに寄って家族というものに向き合おうとした作品。 引きこもりの息子、共依存の母親、家庭から逃避している父親、嫁ぎ先から一時帰宅の娘の4人家族。父親は母親に内緒で大山登山スクールというスパルタ施設に息子を送り込もうとす...

射手座の行動『行動・1』

大雪の中転んで強かに腰をうちつけるもどうにか会場にたどりついた。こんな悪天候にもかかわらず意外にも盛況。 4編のコント集。ストーリーは独立しているが、一部の登場人物が共通して微妙な統一性がある。 新幹線の運転席に新婚の妻を連れ込む「こだま」、整骨院の院長の道ならぬ恋「ある院長の憂鬱」...

ミクニヤナイハラプロジェクト『シーザーの戦略的な孤独』

遅ればせながら今年初めての観劇。 シェークスピアの有名な戯曲『ジュリアス・シーザー』からタイトルはとっているが、実際はその中のこれまた有名なセリフ「ブルータスお前もか」の「も」について書いたという作品。だからシーザーもブルータスも出てこない。 2030年の日本。そこでは放射能に耐性を...

直人と倉持の会『夜更かしの女たち』

2013年最後の観劇。下北沢で観るのは久しぶりだ。 直人と倉持の会初回だが、竹中直人自身は脇にまわっている。スキャンダルに疲れて人気女優トワコが久しぶりに故郷に帰ってくると、ちょうど恩師の送別会兼同窓会が行われていた。誰からともなく、高校時代自殺した人気者の男子のことを口にし、その...

チェルフィッチュ『地面と床』

衰退と戦争のふちにある近未来の日本。ある家族を通して生者と死者それぞれの倫理の葛藤を描く。 母は亡くなって地面の下で眠っている。いや幽霊として歩き回っている。その姿は長男由多加の妻遥には見える。しかし彼女は霊の存在やささやかな要求を徹底的に無視する。対照的なのが次男由起夫だ。ことあ...

フェスティバル/トーキョー13『石のような水』

メロドラマだった。 松田正隆脚本の舞台をみるのは9年ぶりくらい。よく平田オリザとくんでいたときに見にいっていたがその叙情、美学(滅びの美学とでもいおうか)がすばらしかった。途中からグロテスクで過剰に観念的になってきてしまってあれと思っている間にこのコラボレーションがなくなり、観る機...