ハイバイ『霊感少女ヒドミ』

霊感少女ヒドミ

独立した作品としての初演だった前回公演からキャストや映像を一新してのほぼ2年ぶりの再演。まだ記憶がそれほど風化してないはずなのに見にいったのは、前回冒頭10分を見逃してしまったからだ。実際はけっこう記憶の風化も甚だしかった。

ヒドミの部屋には悲惨な最期を遂げて成仏できずゾンビみたいになっている霊、三郎と虹郎が住みついている。三郎はヒドミのことが好きで、ゾンビは人間から愛されると人間になることができるときいてなお一層熱意をもやす。あこがれの男性ヨシヒロを部屋に連れてきたヒドミは、彼ら2人に隠れているよう言う。ところがヒドミの部屋で下着を盗んだり傍若無人に振る舞うヨシヒロをみた三郎は……。

前回みたときはまだ言葉が一般的じゃなかったが、映像を舞台にプロジェクションマッピングしてリアルな役者の演技と絡ませているのが特色。細部は前回と微妙に違っているが、大きな流れは同じだ。今回あらためていいなと思ったのは、三郎が昔の彼女とつきあいはじめる回想シーンだ。夜のOKストアの前に二人が言葉少なに座っていて、実際の会話と無関係に字幕で「あなたに嫌われたくないと思ってます」「わたしもです」というような抽象的なやりとりが非常にシュールでなおかつ微笑ましい。回想の映像の前ではリアルにヒドミとヨシヒロが同じ形で座っていて、二人がつきあうことが示唆される残酷さがたまらない。あと、ラストの永劫回帰的な余韻もちゃんと味わうことができた。冒頭からすべてみられてよかった。

前回のキャストはほぼあて書きのヒドミ役の上田遙、虹郎役の奥田洋平と素晴らしすぎたが、今回もみんながんばっていた。特に三郎役の富川一人がよかった。

作・演出:岩井秀人、映像:ムーチョ村松/アトリエヘリコプター/自由席3200円/2014-10-26 19:00/★★★

出演:石橋菜津美、富川一人、用松亮、平原テツ、柳英里紗(映像出演)、岩井秀人(ナレーション)