ハイバイ『て』

20091003.jpg

作・演出:岩井秀人/東京芸術劇場小ホール1/自由席3300円/2009-10-03 19:00/★★

出演:猪股俊明、菅原永二、吉田亮、青山麻紀子、金子岳憲、上田遥、永井若葉、町田水城、平原テツ、大塚秀記、堀口辰平、用松亮

ハイバイ2回目にして劇団名の由来を知る。「ハイハイ」から「バイバイ」まで。つまり揺りかごから墓場までみたいなニュアンスらしい。

前回ハイバイを観たとき、ベタッとした(漢字で書くと「土着的」とでもいうべきか)感性を感じて、ぼくらの世代はいかにベタッとしたものから逃れるかというのが至上命題だったけど、若い世代はそういう縛りからもう自由になっていて、うんぬんかんぬんということかと思ったが、そうではなく代表の岩井秀人の生まれ育った環境が要因として大きいようだ。前回も今回も男性が女装をしておばさんの役を演じているが、それがとてもよくはまっている。ベタッとしているというよりおばさん的というべきだったようだ。

今回は、岩井秀人の自伝的な作品。父親の不条理な暴力が原因でバラバラになってしまった家族の、祖母の死をはさんだ前後の時間の流れを、カート・ヴォネガットの『スローターハウス5』的に、シャッフルしてみせている。ただ、それが作劇上大きな効果をあげているという感じでもなくて、むしろアドホックなところが魅力だったりする。

父親と子供たちの口論の噛みあわなさや、母親が妙な比喩で語る、父親が暴力をふるわなくなってもある種の雰囲気で威圧しようとしているという、(比喩に即していえば)男根主義的なところなどが、かなりリアルに感じられた。岩井秀人のおばさん指向は、その男根主義から逃れるためだったのだ。

一枚ペラのリーフレットにあった言葉。「皆さんの家族はどんなですかね。陰惨ですかー!」。陰惨ですよー!身につまされる。