ヨーロッパ企画『ビルのゲーツ』

ビルのゲーツ

ヨーロッパ企画初見。ふざけた雑なタイトルだなと思っていたら、隙なくしっかり作りあげられた上質なコメディーで驚いた。タイトルも雑じゃなかった。第一印象は劇団所属の役者の人がそろって役者というより芸人ぽいということだ。

あるITベンチャーの一団が世界に名だたる有名企業のビルに招待されICカードを渡される。緊張しながらカードをかざしてゲートをあけるとその向こうにあるのは階段。それをのぼるとまた同じようなゲートがあって……。やがてゲートを開けるのに課題を解くことが必要になる。この課題が面白い。その中からひとつ紹介しよう。

4人で橋を渡ろうとしている。橋は一度に最大二人しか渡れず、暗いのでひとつしかない懐中電灯を携行する必要がある。各人はそれぞれ渡るのに1分、2分、5分、10分かかる。二人で渡る場合は遅い方にあわせる。4人が渡り終えるのに最短で何分かかるでしょう。

これは数学パズルなどの本によくでてくる感じだが、やがてそれ以外の多様な課題が登場する。課題の順番、登場人物が答えにたどり着く過程、カードリーダーというギミックとのからめ方など非常によく練られている。

エンターテインメントとして文句をつける場所が見あたらなかった。ネタ的に時事的な風刺とからめやすいけど、そういう安易さを拒んでひたすら物語内部に留まり続けている姿勢もすがすがしかった。素晴らしい。

作・演出:上田誠/神奈川芸術劇場大スタジオ/指定席4500円/2015-10-05 13:00/★★★

出演:石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力、岡嶋秀昭、加藤啓、金丸慎太郎、吉川莉早