Q『地底妖精』

横浜の公演を見損ねたので初のQ。 主人公が人間と妖精とのハーフという立場からのマイノリティの社会論が展開されると思いきや、こういう展開になるとはまったく予想もしてなかった。 雑な二分法を使わせてもらうと、ものをつくる人には、世界を描きたい人と、自分を表現したい人の二種類がいると思う。...

青年団リンク キュイ『きれいごと、なきごと、ねごと、』

まったく予備知識なしにみたが、女子高生三姉妹の物語で、しかも演じるのが男性で、かつ4人で役を回していくというアクロバティックな舞台。男性役は当然女性が演じている。 長女愛雨はクールで落ち着いた性格、次女白雨は、溺愛されて育ち異性にモテる三女翠雨にただならぬ嫉妬を抱き、その三女はメン...

ミクニヤナイハラプロジェクト『曖昧な犬』

不条理劇といっていいのだろうか。男たちが窓のない部屋に閉じ込められて外に出られないというシチュエーション。最初二人なのだが、彼らの様子を外から見ていた男が何かの拍子にそこに入り込んでしまい三人になる。彼らは記憶は途切れ途切れで自分たちがいつからそこにいるのか、カメラでずっと監視さ...

ジエン社『物の所有を学ぶ庭』

初のジエン社。気まぐれで直前にみにいくことにしたのだが、大正解、こういう演劇にずっと飢えていたのだ。 地獄との通路が開いて人間に有害な胞子が飛びだし森が全世界に広がる。それとともに「妖精さん」と呼ばれる胞子に耐性をもった不思議な人たちが通路を通ってこちらの世界に避難してくる。死に場...

お布団『アガメムノン』

不勉強故、ギリシア悲劇についてはほとんど知識がない。『アガメムノン』も今日初めて知ったが、数少ないストーリーを知っているギリシア悲劇である『アンティゴネ』とおおきな共通点があることに気がついた。それは善悪の基準がひとつでなく複数あることを前提にしていて、それが物語を動かす要因にな...

岩松了プロデュース『三人姉妹はホントにモスクワに行きたがっているのか?』

岩松了が若手俳優たちとタッグを組む公演もこれで3回目。俳優陣は総入れ替えだが、自分と等身大の俳優の役を自分の芸名そのままで演じ、これからひとつの演劇作品を上演するための稽古中、というフォーマットは今回も共通だ。 彼らが上演しようとしている劇はチェーホフの『三人姉妹』だ。ただし、オリ...

青年団リンク ホエイ 『郷愁の丘 ロマントピア』

北海道三部作の第三作。幕末の蝦夷警備、戦争中の火山誕生ときて、今回は現代の夕張市内大夕張と呼ばれる地域を舞台にしている。大夕張はかつて炭坑で栄えたが、数十人の人命を奪う事故に続いて炭坑は閉山し、結局ダム開発で町は水没してしまう。 ダムを見下ろす高台の駐車場。そこにはかつて町にあった...

青年団リンク キュイ『前世でも来世でも君は僕のことが嫌』

キュイはこれまで短編を集めたやつしか観てこなかったので心構えとしては半分くらいアートをみにいくような感じがあったのだけど、今回は初の長編で、演劇をみているという感じになった。 簡単にいってしまえばループもの。ただし、ループするのは4つの別々の人物設定・シチュエーションの1日でそのど...

チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション

今日劇場に向かうときちょうど平和を訴えるデモ隊に遭遇したが、仕込みかと思った。 リクリーションでないほぼオリジナルキャストの舞台は遅ればせながら2011年にみている。そのときの感想はこちら。戯曲としてはほぼそのままなのでこのときの感想はそのまま通用するはずだ。 ではどのあたりがリクリ...

城山羊の会『相談者たち』

三鷹でやるときは恒例になっている劇場の担当者森本さんの前説はみがきがかかっている。でも拳銃で撃たれるシーンはなし。そう、今回は物語は比較的静かに飛躍なしに展開してゆくのだ。 50代の夫婦。不倫が発覚した夫がもちかける離婚にすすりなく妻。そこに帰ってきた娘。彼女は会社の先輩を一緒に連...

ナイロン100℃『ちょっと、まってください』

ナイロンの公演は2年ぶり、新作ということだと3年ぶりということになる。時の流れるのは速い。 登場人物はみんな白塗り。元ペテン師という執事を狂言回しとして、二組の家族がひとつになってまたわかれるまでの物語。 休憩をはさんで正味3時間以上の作品だが、まったく長さを感じなかった。別役実をお...

ヨーロッパ企画『出てこようとしてるトロンプルイユ』

なんかこういうリアルと夢や虚構が入れ子になって入り乱れる作品みたことあると思ったらF・K・ディックだった。ディック(実はけっこう笑えるところあるが)をベタに笑えるようにするとこういう感じかもしれない。 亡くなった画家の部屋を片付けていると、遺された作品のほとんどはトロンプルイユ=だ...

『24番地の桜の園』

今気づいたが、24番地というのは渋谷区道玄坂2丁目24番地、シアターコクーンの住所だった。 チェーホフ『桜の園』の変奏だが、原作のとの離れ方が予想と違った。予想では、原作の設定だけ残して人物や時代、場所設定を変えた翻案をやるのかと思っていた。実際は、人物、時代、場所は変えず、原作を...

『作者を探す六人の登場人物』

1921年に書かれた古典。だがまったく内容を知らず、タイトル通り六人の登場人物が自分たちを創造した作者を探す話だと思っていた。実際はかなり違っていて、ピアンデルロの既成の戯曲の稽古をしている劇団のもとに彼らがやってくる。彼らというのはとある劇作家が執筆中に放棄した作品の登場人物た...

イキウメ『散歩する侵略者』

イキウメの代表作といわれていてこれが4回目くらいの上演らしいのだがぼくは未見。だから黒沢清監督による映画も公開されているがまずは芝居をみたかった(今日見にきていた人の会話によると、映画と全然違うということだったが)。 別居中の夫婦の夫真治は三日間失踪した後海辺で発見され保護される。...

『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』

隣接するイースト、ウエストという二つの劇場で同じキャストがいったりきたりしながら別々の公演を上演するという果敢なスタイル。ぼくはそのうちイーストだけみたので確かなことはいえないが、おそらく演じている役の割り当てと細部の違いはあっても基本どちらも同じ物語が上演されているのではなかろ...

シス・カンパニー『ワーニャ伯父さん』

チェーホフの四大戯曲のうちの三番目。テレビで舞台映像をみたり、戯曲を読んではいたが、直接舞台をみるのは初めてだ。 悲劇ではなくむしろ喜劇なんだけど、主要な登場人物はほぼ例外なく絶望する。これほど絶望濃度が高い芝居もめずらしいのではないか。特にワーニャは、自分を含めて家族全員で献身し...

青年団リンクホエイ『小竹物語』

夏らしく怪談がテーマ。怪談の語り手のたまごたちがネット中継を試みるという設定(怪談部分は実際にライブ中継されている)。 怪談は内容(半分以上著作権者の許可を受けての怪談本からの借用とのこと)も、各演者のキャラづけと語り口もほんとうにおもしろかった。それに比べると外側の、演者間の人間...

『プレイヤー』

新設されたばかりの地方の公共劇場。そこで上演される新作の稽古場が舞台。若い女性が失踪しやがて人里離れた山小屋で死体が発見される。それとともに彼女が生前親しかった人々に奇妙なことが起きる。時折彼女としか思えない口調で話し始め、当人はそのことを覚えていないのだ。 サスペンスフルで観客を...

ハイバイ『ハイバイ、もよおす』

RPG的演劇のパロディ、大衆演劇のパロディ、そして異形の幼い少女のいたいけな心を描いた?『ゴッチン娘』という3つの中編からなるオムニバス。 こういういかにも小劇場的でハチャメチャなのりの芝居をみるのは久しぶりだ。どれもおもしろかったが個人的には合間合間の岩井秀人の語りがそれ以上にお...