青年団リンク 玉田企画『宇宙のこども』

宇宙のこども

大学のサークルの仲間のひとりが卒業とともに故郷に帰るので、その送別会として温泉旅行にきた男女5人。そこはサークルのリーダー格の男加藤の実家の温泉旅館だ。加藤の姉がきりもりするスナックには加藤の同級生たちが働いている。同時多発的に盛り上がる何組かの恋模様……。

終始笑えて面白い、でも演劇的なカタルシスが得られない。何かが物足りないのだ。ポストパフォーマンストークでも話されていたけど、通常演劇は個人的なベタな物語と、背後の社会や世界をめぐる問題の二軸で描くものだけど玉田作品はそこをあえて前者だけの一軸で描いている。タイトルが示すように登場人物は成人はしているもののまだモラトリアム状態のこどもたちなのだ。加藤を演じた木下崇祥さんの身体の動きがまさにこども的な多動な動きをしていてそこはうまいと思った。

親の病気のために夢を捨てて故郷に帰らなくてはいけない里見は大学四年なのに就職を決めようとしない加藤を羨望の目で見つめ、不安じゃないのかと尋ねるシーンは唯一大人を感じさせるシーンだった。でも加藤は「うんこ」の話を持ち出してこども性を全肯定しようとする。それがこの作品の結論でもあるわけだけど、加藤はいざとなればこの温泉旅館を継げばよい。こどもでい続けるためには、なにか特権的な境遇が必要とされるのだ。

トークの中で玉田さんは次は大人を描くと宣言していたが、今のこういう作品に社会という軸をいれてもかえってありきたりになってしまうだろう。こども性を失わない作品を作り続けている演劇人というと五反田団の前田司郎さんが浮かぶが、そこになにかヒントはないかなとも思ったりする。

作・演出:玉田真也/こまばアゴラ劇場/自由席2500円/2014-11-22 18:00/★

出演:木下崇祥、小瀧万梨子、黒木絵美花、成瀬正太郎、重岡漠、村井まどか、墨井鯨子、鄭亜美、野田慈伸、折原アキラ