リクウズルーム『アマルガム手帖+』

アマルガム手帖+

まったく予備知識なしでチラシに書かれていた「美しき数式戯曲エンターテインメント」という惹句を見て見にいくことにした。どの辺が数式かというと、戯曲の一部の役名やセリフが数式みたいな形式で書かれている。数学的に厳密な数式ではなく、数学記号に接続詞的な役割をもたせたなんか不思議な記法だ。アフタートークでの話によると作・演出の佐々木透さんは上演ではなく戯曲を第一の成果物と捉えているタイプの人らしく、それをどう上演するかは特に決めてなかったそうだ。実際どうなったかというと、ブライアリー・ロングさんがフランス語と英語で数式をそのまま読み上げていた。彼女はまったく疑問をもたずそうしてそれがそのまま採用されたようだ。数式は字幕にも表示される。

ストーリーは、冴えない女子高生が恋をして美しく頭脳明晰な女性に変身して恋を成就させるというたわいない?ものなんだけど、それは女子高生が残した手帖の内容の一つの解釈であって、並行するもう一方の解釈では彼女は元の姿、成績のまま死んでゆく。

饒舌でちょっと哲学的なセリフが飛び交う。ふだん使う言葉じゃないので上滑りしてしまう危険性もあったが、生きたセリフにして笑いをちゃんととっていたのは、やはり役者たちの頑張りの賜物だ。数学教師役の榊原毅さんと母親役の西尾佳織さんが特によかった。数式の読み上げ、ダンス等で全編に渡って舞台を引っ張っていったブライアリー・ロングさんがいうまでもなくMVPだ。

戯曲は相当ユニークだと思うので、これで演出面の方法論がしっかりして洗練させられたら、かなりいい線いく気がする。

作・演出:佐々木透/こまばアゴラ劇場/自由席3000円/2016-01-10 19:00/★★

出演:タカハシカナコ、榊原毅、ブライアリー・ロング、SEI、西田夏奈子、西尾佳織