ダックスーププロデュース『音楽家のベートーベン』

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ナンセンスコメディをそつなくつくるひとはほかにもいるけど、自分の足元をゆるがすようにナンセンスを突き詰めているのは、今やブルースカイ改めブルー&スカイくらいかもしれない。

フリーター松木は恋人だった人妻涌井から関係の解消を告げられるが、彼女はこれからもべつの形で彼の役立つことをしてあげるという。それから彼の元に「モンゴルからのアイデア」と称して様々な生きるためのヒント的な何かが届きはじめる。その進行役を務める派手な中華服の男が、ふと「私はベートーベンじゃないですよ」という奇妙な一言をもらす。それをきいた松木はベートーベンの伝記を読んで、疑念を募らせていく。彼はやっぱりベートーベンなんじゃないかと……。

一番おもしろかったのは、モンゴルからのアイデアのひとつで、人が人を裁くということについて結論がでるまで真剣に考えて、答えがみつかったら家に帰ってもいいというシチュエーション。その場に集まった誰も一言も発せず、ただ顔に皺をよせて考えている。突然ひとりが表情を緩めて、ああそうか、などと軽くつぶやきながら、用意された弁当とお茶をもって退出していく。これは笑った。

タイトルにあるんだから仕方ないが、全体的にみるとベートーベンにこだわりすぎたかもしれない。ベートーベンだとわかってしまって以降それ以上の広がりがなくなってしまった。もっと自由でよかった。といいつつ、小道具的に使われたベートーベンの曲の断片に惹きつけられて、帰りに交響曲全集を買って帰ったのだった。

作・演出:ブルー&スカイ/こまばアゴラ劇場/自由席3500円/2013-03-23 19:00/★★

出演:池谷のぶえ、小村裕次郎、金子岳憲、延増静美、村上寿子、田村健太郎