1998年以降のナイロン100℃の本公演は再演をのぞいてすべてみているので、当然この二つの戯曲も初演時に舞台でみている。『消失』は2004年、『神様とその他の変種』は2009年。特に『消失』の方はすごい傑作だったという印象が強く残っていた。ところが、細部どころかあらすじすらまったく思い出せず、われながら何のために芝居をみにいっているのかとあきれていた折り、文庫で戯曲が出版されたことを知り、読んでみようと思ったのだ。 ...
本書に所収されている『南部高速道路』という短編を長塚圭史が脚色・演出している芝居をみて、とてもよかったので、原作を読もうと思って手に取った。 ...
大病から回復したばかりで家庭も仕事もなくした初老の男性ネイサンが終の住処を求めてニューヨークのブルックリンで暮らしはじめる。あにはからんや、彼は色々な人々と出会い、これまでにない経験を重ねる……。 ...
子供のころ地面に落ちていた色とりどりの石を拾って宝物のように思ったりしたけど、一編一編がちょうどそんなきれいな小石みたいな短編集。内容も文体もふにゃふにゃしてない。硬い。硬質。物語は物語られない。博物館みたいに物語はガラスケースの中におさまっていて動かない。 ...
町田康の文章を読んでいると知らず知らずニタニタしてしまう。700ページ以上読み切る間ニタニタし通しだった。さすがにラスト近く、あまりにグロい描写が連続するあたりはそのニタニタも凍りついたが、それもやがて突き抜けた爽快感に変わる。 ...
『指輪物語』でトールキンが中つ国という世界を創造したように、この作品の中でも、人間を含む様々な種族が暮らし、別の力が支配する世界が創造されている。邦訳が上下巻あわせて1100ページ以上と分厚いのはこの世界の描写に紙幅が費やされているからだ。 ...
ぼくの中で古川日出男の作品は、好きな作品、嫌いな作品わりとはっきりわかれている。『サマーバケーションEP』は時折読み返したくなる作品のひとつだが、『聖家族』とか『ハル、ハル、ハル』は苦手だ。この本は読み始めてすぐに好きな作品に仲間入りしていた。そして、この二つのグループで何がちがうかといえば、そこに「LOVE」があるかないかじゃないかと思いいたった。 ...
文明崩壊後の極北地域を舞台に主人公メークピースの遍歴を描いた作品。類似のモチーフを扱ったコーマック・マッカーシー『ザ・ロード』みたいに徹底的なシビアな極限状況ではなく、その一歩か二歩手前。だから主人公には自由度があり、ストーリー展開が意外性に満ちている。ストーリーにひきこまれる反面、『ザ・ロード』に比べてしまうとよくも悪くも「軽さ」を感じる。それは訳者の村上春樹の小説と同じ種類の「軽さ」だ。だから彼は翻訳しようと思ったのかもしれない。 ...
妖精、ゾンビ、ホーンティドハウス、魔女、死者の霊、剣と魔法、エイリアンという昔ながらのB級ホラー、SFおなじみの道具立てが、インターネット、コンビニ、カルト的な人気を博す連続テレビドラマなどがある現代的な設定とまじりあって。今まで読んだことのない奇妙なファンタジーをつくりあげている。 ...
世の中に自分がわからないことがあるのを認めたくない質だ。もちろん、わからないものの方が圧倒的多数ではあるわけだが、ちゃんと時間をかけてがんばれば片鱗くらいはつかめるんだぞというポジションを確保しておきたい。もちろん、それはいつでも可能というわけじゃなく、頭がちゃんと働いている時間を選ばなくてはいけない。だから、起きがけで頭が朦朧としている朝の通勤時とか、仕事で消耗している帰宅時の電車の中とかは、最悪なコンディションなわけだ。 ...
奇才と名高いラファティの短編集を今更ながら読む。表題作を含む最初の数編を読んでいるときは、確かにアイディアは突飛だし、知的ギミックにもあふれているけど。結局ただの通俗的なSFなんじゃないか思ったが、読み進めるうちに評価が一変した。ルイス・キャロルばりのナンセンスなユーモアに深い思索がまぜこまれた独自の世界観の作品群だ。 ...
ファウルズという町ではほぼ年に一度人が空から落ちてくる。主人公は彼らを救出するためのレスキュー隊員のひとりで、どういうわけか支給されているユニフォームを身につけ、バットをもち、日々訓練にはげんでいる。といっても高速で落ちてくる人にバット一本で何ができるわけでもなく、今まで救出できた試しは一度もない。なぜ人が落ちてくるのかもたくさんの説が唱えられているものの結局のところまったくわからない。 ...
「読み終わったあと見知らぬ場所に放り出されて途方に暮れるような、何だか落ちつかない、居心地の悪い気分にさせられるような、そんな小説」ばかり1ダース集めたアンソロジー。確かに居心地は悪いけど、読み心地は絶品で、すらすらとページをめくり、あっという間に読み終えてしまった。 ...
3月の末に惜しまれつつ他界したイタリアの小説家アントニオ・タブッキの日本における最新の作品集。 収録されている短編はちょうど9つだし、タブッキ版ナイン・ストーリーズといったところか。『雲』という作品なんかは、戦場で傷ついた兵士が避暑地の海岸で小さな女の子と話すというシチュエーションで、まさにサリンジャー的だった。 ...
エナメル質が削り取られて神経がむき出しになった虫歯のように、身も蓋もなく悲しい喪失の物語。 物語の核心にある謎というわけでは全然ないので、決してネタバレにはならないと思うのだが、この作品について触れる人は、物語の状況設定を書かないことが不文律のようになっているようなので、ぼくもその顰みにならう。 ...
何となく手を出しそびれていたのはタイトルや帯の惹句から、一種のラノベなんじゃないかと思ったからだ。そんなことは全然なく、技術や人類の未来についてとても深く考えさせる硬質な物語だった。 ...
電車で前の席に座った男性がカバーもせずに読んでいるのをみて、それじゃぼくも読んでみるかと、渡されてもいないリレーのバトンを受け取ったのだった。 ...
これだけ夢中になった SF(いやSF以外も含めて)短編集は久しぶり。次の作品を読むのが楽しみでしかたなかった。 どの作品もほぼ近未来のディストピア的世界が舞台になっている。炭素エネルギーが枯渇し。遺伝子改良された動物や植物が跋扈し、ネジがエネルギーの蓄積手段として復活をとげ、貧富の差が著しく拡大している世界(『カロリーマン』、『イエローカードマン』)。永遠の生が得られるようになり出産が厳格に禁止された世界で、子供を殺すのが使命の警察官の物語(『ポップ隊』)。人間が退化したトログという両性具有の生きものがあふれ、残った人間も愚鈍化が進み、設備が徐々に壊れていく世界(『第六ポンプ』)、貴族制と奴隷制のもと、人体改造で楽器にされた少女の物語(『フルーティッド・ガールズ』)。などなど。荒唐無稽どころか、現代の延長線上に十分ありえる未来像だ。 ...
幽霊や妖精がでてくる怪奇物の短編集。オールドファッションなのはわかっていたが、だからこそ何か新しい発見があるんじゃないかと手に取った。 ...
主人公の警官がある身元不明の女性の殺人事件を捜査する物語で、そこの部分はとてもよくできた典型的なミステリー。特徴的なのは、物語の舞台だ。 ...