これまで第一篇『スワン家の方へ』、第二篇『花咲く乙女たちの影に』と、篇ごとに読み進めてきたが、今回は第三編の前半第一部だけ。というのも第6巻がでて、これで第三篇が完結したと勘違いしてしまったからだ。実は第三篇は三分冊で第7巻まで続くのだ。 ...
定冠詞をつけて『ザ・知識』と題された本。仮に今の文明世界が何らかの理由で滅亡して科学技術が失われた場合、一から復旧させるために必要な知識をまとめている。 ...
浮世離れした本が読みたかったのだが、のっけから富岡八幡宮の宮司姉弟間の殺人事件という生臭いというか血生臭い話題からだ。神社本庁を離脱していたということから、脳内で勝手に、開明的な女性宮司が守旧的な弟に刺されるという物語をねつ造していたが、実は姉弟そろって浪費家で神社に流れ込む豊富な金銭をめぐる争いが根底にあるみたいな話だった。 ...
タイトルには「中世」とあるが、扱われている時代はもう少し広くて平安末期から関ケ原の合戦まで。第一章が保元の乱と平治の乱、第二章が平氏の滅亡・鎌倉幕府成立と義経討伐、第三章が鎌倉時代の陰謀、第四章は鎌倉幕府崩壊から室町幕府初期、第五章は応仁の乱、第六章は本能寺の変、第七章は関ヶ原の合戦。それぞれの戦乱に関して「結果から逆行して原因を引きだす」陰謀論が紹介されている。そして終章は「陰謀論はなぜ人気があるのか?」と題して陰謀論の特徴と人々がそれを信じてしまう理由を分析している。 ...
表紙の写真を美術館ではじめてみたとき、この作品の語り手と同様、釘付けにされてしまった。着慣れない盛装で荒野の中のぬかるんだ道をどこかに向かおうとする三人の若者たち。彼らの目はまっすぐにこちらを見据えている。夢の中に出てきそうな幻想的な光景だ。 ...
6月にみた舞台の原作。舞台版は4人の文学者の弔いの場面から構成されていたけど、原作では41編の連作短編の中で明治の文学者たちが自由にいろいろな場所を動き回っている。そして寄せては返す波のように同じ人物やテーマが違う角度から何度も繰り返される。時に時空をこえ(石川啄木はブルセラショップの店長になり田山花袋はアダルトビデオの監督になる。夏目漱石は森鴎外にたまごっちの入手方法をきく)、この作品が雑誌に連載された1997年から2000年にかけての町に現れたり、風俗が紛れ込んだりする(明治ではなくそっちに「時代」を感じてしまうのがおもしろい)。 ...
収録作は以下の通り。過半数がアルゼンチンの作家の作品だ。 ルゴネス(田尻陽一訳)『火の雨』 - ARG キローガ(田尻陽一訳)『彼方で』 - GTM ボルヘス(鼓直訳)『円環の廃墟』 - ARG アストゥリアス(鈴木恵子訳)『リダ・サルの鏡』 - GTM オカンポ(鈴木恵子訳)『ポルフィリア・ベルナルの日記』 - ARG ムヒカ=ライネス(木村榮一訳)『吸血鬼』 - ARG アンデルソン=インベル(鼓直訳)『魔法の書』 - ARG レサマ=リマ(井上義一訳)『断頭遊戯』 - CUB コルタサル(鼓直役)『奪われた屋敷』 - ARG パス(井上義一訳)『波と暮らして』 - MEX ビオイ=カサレス(安藤哲行訳)『大空の陰謀』 - ARG モンテローソ(井上義一訳)『ミスター・テイラー』 - GTM ムレーナ(鼓直訳)『騎兵大佐』 - ARG フエンテス(安藤哲行訳)『トラクトカツィネ』 - MEX リベイロ(井上義一訳)『ジャカランダ』 - PER はっきり名前を知っているのは、ボルヘス、コルタサル、パスくらい。あとはせいぜい名前をきいたことがあるくらいだった。ラテンアメリカ文学といえばマジックリアリズム的な作品を期待してしまうが、収録されているのは、かなり幅広くとらえた「怪談」だ。 ...
画期的な本。 吃音に関しては、改善方法か主観的なつらさについてしか語られてこなかったが、本書では吃音をどうにかしようというのでなく、それがあることを前提に、客観的にどういうものなのか、的確な比喩を使ってわかりやすく説明している。 ...
プリーストのおかげで物語の中に入り込むように読む楽しさを再発見中。文庫で500ページ以上あるにもかかわらず一気に読んでしまった。 ...
文庫化されてた。でも、久々に電子版を買って読む。 変愛小説集も3冊目。これまでは海外小説の翻訳だったが、今回は日本作家の作品だ。既存の作品から選んだのではなく、編者の岸本佐知子さんが作家に依頼し、書き下ろしてもらうというおもしろい成り立ちだ。 ...
『ありきたりの狂気の物語』と、もともとは一冊の本として出版されたものを、のちに、長すぎるだろうということで、分冊したもの。ときどき既視感ならぬ既読感におそわれたのも宜なるかな。 こちらは30編の作品が収録されている。やはりブコウスキー本人の体験がベースの虚構が薄い作品がメインだが、魔女にとらわれて身体を縮められる『15センチ』、機械仕掛けの人形との悲しく凄惨な恋『ファックマシーン』、人を洗脳して従順にする機械『気力調整機』、アメリカ大統領が連れていかれた先には……『卐』などSFといっていいような作品もいくつか含まれている。『レイモン・ヴァスケス殺し』は実録犯罪小説風だ。 ...
成人したばかりの主人公ヘルワード・マンがギルドに入会する儀式のシーンからはじまる。儀式のなかで彼は秘密を決してギルドの外にもらさないことを誓わされる。ヘルワードは見習員としてさまざまなギルドの経験を積む。その仕事は多岐に渡るが、すべてはただひとつのこと、彼らが住む都市を南から北へと移動させ続けることを目的としている。南は過去、北は未来と呼ばれ、時間単位は都市が動いたマイル数であらわされる。1マイル=10日だ。 ...
久しぶりの紙の本、久しぶりの日本の作家の作品、久しぶりの町田康。 一応小説と呼んでいいのだろうが、虚構の厚みが薄い作品。田宮(たみや→たみあ、逆から読めば熱海)に移り住んだ主人公が浜辺や沖合いの孤島(初島)、近所の牧場で開かれたイベント、文豪が泊まった旅館の跡の見学など、固有名詞が変えてあるので実際には使えないことを別にすれば観光ガイドと言ってもいいような内容。いつもなら日常のたたみをぶち抜いて虚構へと入り込むところを、おいたは主人公の自意識の中だけにとどめ、頑なに田宮という町の日常に留まり続ける。 ...
舞台となる夢幻諸島(The Dream Archipelago)の位置条件は地球上のそれと矛盾するので、地球外の惑星なのかとも思うが、文花や文明の到達度は、インターネットやスマフォ隆盛の現代のわれわれと極めて近い。あり得べき異世界と考えればいいのかもしれない。 ...
続けて三部作の完結編。でも、これまで二作の破綻含みののはちゃめちゃさからはほど遠い、まっとうな作品だった。まっとうといっても平凡とかではなく、とても質が高いのだ。神学論争や神秘体験などテーマに共通している部分はあるものの別物という印象が濃い。 ...
小惑星衝突による人類滅亡が間近にせまる世界を描いた三部作もいよいよ完結編。今回は衝突の一週間前から直前までが舞台だ。 ...
引き続いて三部作の第二作を読む。 前作『ヴァリス』が現代を舞台にしてSF要素が希薄だったのに対し、本作は形式的にはまちがいなくSFだ。辺境の惑星で自分のドームでひきこもり生活をしているハーブ・アッシャーに突然現地の山に住む神ヤーの声がきこえる。実はヤーは追放された地球の神で、ハーブの隣人ライビス・ロミーを処女懐妊させ、彼女とともに地球に帰ろうとしている。カムフラージュのため、ハーブには、おなかの子の父親として、一緒に地球に帰れというのだ。彼らはなんとか地球に帰り着くが、事故によりライビスは亡くなり、ハーブも臓器移植を待つ間10年間仮死状態になってしまう。しかしおなかの子は脳に損傷を負うもののエマニュエルと名づけられ成長する。 ...
小惑星衝突間近で混乱し急速に無政府化しつつあるアメリカで、ひとり事件解決に挑む刑事ヘンリー・パレスの活躍を描く三部作の第二作。 ...
同時刊行された『プロローグ』と『エピローグ』、ふつうなら『プロローグ』を先に読むが、円城塔作品なら逆だろう、とこっちから読むことにした。 ...
約2万年先の未来。最新の理論では1/6兆秒で崩壊するはずの構造から別の宇宙が誕生し、際限なく広がりわれわれの宇宙を侵食しはじめる……。 ...