お布団の哲学『対話篇』

プラトン『対話篇』の中の一篇『クリトン』が原作。誹謗中傷で死刑に処されようとしているソクラテスを脱走させるために友人のクリトンがやってくるが、ソクラテスは悪法ともいえども法という論理を振りかざして、それを拒絶するという有名な話だ。この舞台では、それが漫才の話に移しかえられている。 ...

お布団の哲学『想像を絶する』

二演目のダブルヘッダーの一本目。ひとり芝居だ。 二部構成。第一部では男性、第二部では女性が語り手で、本来二人の役者で上縁するところをあえて女性ひとりでやっている。しかも戯曲の言葉を細かく区切って暫定的な意味を浮上させつつ、次の言葉をつなげることによりそれを裏切っていくという興味深い演出。この演出自体が独立したエンターテインメントになっていた。 ...

『セールスマンの死』

戯曲は読んでいたがようやく舞台をみることができた。演出の長塚圭史さんがCINRA.NETのインタビューで「ほとんど演出の余地がないんです。ト書きまで細かく書き込まれているから、演出家が自分の色を出しにくい」と言っていた通りではあるが、だからこそ、戯曲をそのまま舞台に現出させるという地道な演出の力が求められているともいえる。 その演出のおかげで気づくことがいろいろあった。まず主人公ウィリー・ローマンの妻リンダはそれぞれの家族を一番愛情深く理解している一方で、実は彼の幻想の共犯者だったということ。そして、そういう幻想から自由ですべてが見えているのは仕事が続かず情けない長男ビフなのだ。ただ彼が何を言っても誰も真面目に聞こうとはしない。苦い真実をあえて知ろうとする者はいないのだ。 ...

KERA・MAP『修道女たち』

前回のナイロン本公演はいつもの本多劇場ではなく芸劇だったが、今回のKERA・MAPが本多。劇団員が3人でているし、むしろこっちが本公演のような気がしてくる。 ...

モメラス『反復と循環に付随するぼんやりの冒険』

お金がテーマということで、路上で1000人の人に「あなたにとって、お金とはなんですか?」とインタビューしたそうだ。そのときの映像が舞台にも投影されて使われていた。 ...

早稲田小劇場どらま館×遊園地再生事業団『14歳の国』

20年前の初演もみていた。うまく消化できなくて、そのときまだ芝居を見始めたばかりだったので、はじめてのうまく消化できなかった芝居だったかもしれない。それだからこそいまだに印象に残っている。 今回あらためてみて、かなりそのときのもやもやが晴れた気がする。消化できたというのではなく消化する必要がないものを消化しようとしていたのだ。 ...

阿佐ヶ谷スパイダース『MAKOTO』

メンバーが大量に増えた新しい阿佐ヶ谷スパイダースの第一作。 妻を医療事故でなくした水谷は、それが担当医師の個人的事情による過失だったということを知り精神の平衡を失う。水谷は、医師に会うため、オオカミタクシーに乗り込み、大久保に向かい、さらに渋谷を経由して代官山と、夜の東京を疾走する。このくだりが祝祭的でほんとうにすばらしい。町が目の前に浮かび上がってきた。水谷を気遣う入口、栗田など登場人物も愛すべき人たちだ。 ...

野田地図『贋作桜の森の満開の下』

坂口安吾の作品をベースにした、夢の遊民社時代から上演している野田秀樹の代表作だが、初見。予備知識なしでみた。 みたあとにいろいろ知識を仕入れたのだが、「贋作」とはいうものの、坂口安吾の作品『耳男と夜長姫』にかなり密接に基づいている。そこにタイトルになっている『贋作桜の森の満開の下』から山賊、鬼などの要素が移入され、さらに安吾のエッセイからヒダの国と大海人皇子のエピソードが引用されている。 ...

ホエイ『スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア』

青年団リンクがとれて独立した最初の公演。2014年の再演らしい。 僻地の中学校の教室でおきるオカルト的な騒動。演出や俳優陣のがんばりもあってテンションがあがりとてもおもしろかった。 ...

ナイロン100℃『睾丸』

タイトルのインパクトも大きいが、下北沢でなく池袋、実際の日本戦後社会がベースのストレートプレイという、これまでのナイロンからは驚きな舞台だ。 ...

庭劇団ペニノ『蛸入道 忘却ノ儀』

開演前の説明では「儀式」と言っていたが、とある架空の宗教儀式を舞台化したもので、演劇というよりは音楽ライブに来たような感覚だ。陶酔感のある音響・音楽と、役者の苛酷そうな状況(中心部は90℃とモニターに流れた)が観客に一体感とグルーブをもたらす。これまで見た舞台で一番近いのは東京デスロック『再/生』だろうか。 ...

青年団『日本文学盛衰史』

青年団2年ぶりの新作とのこと。原作は未読なので(近日中に読むつもり)、以下の感想には今回の脚色と上演に対するものと、原作に対するものがシームレスに入り交じっているはず。 ...

モメラス『青い鳥 完全版』

劇場に着くまで、タイトルだけ借りた別作品だと思っていたが、メーテルリンクの有名な童話劇そのものの上演だった。チルチルとミチルの兄妹が最後に自宅で幸せの象徴の青い鳥を見つけるということ以外、実はくはなにも知らなかったことに気づいた。 ...

五反田団『うん、さようなら』

知らない間にやっていることが多くて久々の五反田団。 70代後半以上の「お婆ちゃん」4人の熱海旅行を軸に、時間軸をなめらかに行き来して、過去の親娘旅行、葬式、痴呆になった仲間との再会などのエピソードを通して、「お婆ちゃん」と呼ばれる時間の長さ、その中にさまざまな記憶が重層的に積み重なっていることを描き出す。 ...

イキウメ『図書館的人生 Vol.4 襲ってくるもの』

3編からなるオムニバス。各編は共通の登場人物がいたりして緩やかに関連しており、2036年、2006年、2001年と年代を遡ってゆく。 最初の『箱詰め男』は、アルツハイマーを患った脳科学者が自分の脳をコンピュータにアップロードする話。二番目の『ミッション』は突然どこかから自分の欲望と無関係な衝動がやってくる男の話。彼はそれを微妙な変化を引き起こすことによって世の中を最適化しているのではないかと思い始める。最後の『あやつり人間』は就職活動中の女子大生が母の病気などを背景に周囲の優しさに違和感を感じすべてをリセットしたいと思い出す。 ...

M&Oplays プロデュース『市ヶ尾の坂——伝説の虹の三兄弟』

1992年の初演から26年ぶりの再演とのこと。 田園都市線市ヶ尾駅からちょっと離れた一軒家に住む三兄弟。かつての田園地帯も今や車がけたたましくゆきかう場所になっている。そんな彼らの家を頻繁に訪れる近所の魅力的な人妻。いわば、彼女は三兄弟のアイドルだ。彼らはそれぞれ、まるでかつての騎士のように恋愛感情とは別の次元で彼女を崇拝しているのだ。 ...

PARCOプロデュース『ハングマン』

イギリスで死刑が実質的に廃止された直後、1965年の物語。死刑執行人だったハリーはパブの主人におさまり、表だって死刑廃止に反対したりはしていない。そんな彼が過去に執行した男が実は冤罪でその真犯人であることを匂わせる男がパブにあらわれ、直後にハリーの娘が行方不明になる。ハリーと妻が気をもむ中、再度男が店にあらわれる……。 ...

サンプル『グッド・デス・バイブレーション考』

劇団が解散し松井周さんのひとりユニットになって初のサンプル公演。といっても観客からすると大きな違いはない。 あらゆるディストピアの要素を詰め込んだような近未来。恋愛、歌、文字の読み書き、夢を語ること、思想は禁止。しばらく前まで禁止で国家が決めたマッチングパートナーとの人工授精で子どもを産んでいたが、今では野良セックスで生まれた子どもは国家が買い上げ遺伝子の実験に使われている。食糧は慢性的に不足し、一定年齢を越えた老人は「船出」と称して自発的な死を強いられている。 ...

ままごと『ツアー』

月曜の夜9時からのまさかの観劇。見に来る客はどれくらいいるのかと思っていたら、席はすべて埋まっていた。 子どもを突然死で亡くしたハルは自家用車であてのないドライブに出かける。そこで彼女は仲間とはぐれた外国の音楽家に出会う。二人はフェスが開催される湖に向かおうとするが、途中奇妙なものを目撃して……。 ...

Q『地底妖精』

横浜の公演を見損ねたので初のQ。 主人公が人間と妖精とのハーフという立場からのマイノリティの社会論が展開されると思いきや、こういう展開になるとはまったく予想もしてなかった。 ...