Wけんじ企画『ザ・レジスタンス、抵抗』

演劇活動開始当初より「青年団の山内健司さんとは別人の」と名乗り続けてきた城山羊の会の山内ケンジ(本名は山内健司)が満を持してその青年団の山内健司とタッグを組む。主演は山内健司、その他の俳優陣も全員青年団だ。 ...

ミクニヤナイハラプロジェクト『東京ノート』

ぼくは初演から4年後の1998年に戯曲の作者の平田オリザ自身の演出で見ている(そのあと2007年にも見ている)。その時はヨーロッパの戦争で有名な絵画が避難してきていて日本も戦争に巻き込まれそうになって徴兵の話まで囁かれているという状況が絵空事に感じられたものだけど、今や数年後のシナリオとして十分ありうる状況なのがすごい。 さて今回は「静かなる演劇」の代表作ともいえるこの作品をサンプリングして、役を複数人に割り振り、それを早いスピードでシャッフルしてゆく。大変賑やかな舞台になっていた。 ...

M&Oplays プロデュース『家庭内失踪』

定年を迎え悠々自適の生活の元教師の夫野村と年の離れた後妻雪子、そして婚家から出戻り中の先妻との間の娘かすみ。かすみの夫石塚は舞台に登場せず、代わりに彼からのメッセンジャーとして部下の若者多田が定期的にやってくる。実は多田は雪子に会いにきているのではないかと、かすみは疑いの目を向ける。そこに石津から送り込まれたもう一人のメッセンジャー青木が登場する……。 ...

テアトル・ド・アナール『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ構成の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“――およそ語り得ることについては明晰に語られ得る/しかし語りえぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語りえずただ示されるのみの事実にまつわる物語』

タイトルが長い! 何より哲学者、しかもその人生だけでなく哲学にもスポットライトをあてる演劇を作るという試みが素晴らしい。「およそ語り得ることについては明晰に語られ得る/しかし語りえぬことについて人は沈黙せねばならない」という彼の主著『論理哲学論考』の末尾のあまりにも有名な言葉。結構誤解含みで解釈されることが多い言葉だけど、この作品の中でその誕生の瞬間に立会って、意味を解きほぐそうとしている。語り得ないものについてはウィトゲンシュタイン独特の「独我論」を持ち出すべきなんだろうけどここでは神を使っている。それでも間違いというわけじゃないしわかりやすさを犠牲にしなくてかえってよかった気がする。神の象徴として携帯用のウイスキー瓶がテーブルに置かれた時背筋がぞくっとした。 ...

野田地図『逆鱗』

「人魚」についての物語。 野田秀樹が作り出す物語は、前半荒唐無稽ともいえる言葉遊びと比喩の奔流から、後半一転してシリアスなテーマが浮かび上がってくるという構造が共通している。前半軽快に浮いていた言葉が後半で繰り返されるときにはずしりと響くのだ。今回も、そうくるかという感じで、見事な展開だった。 ...

岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』

プリミティヴで奇怪な面をつけた俳優5人がひとりずつ舞台にあらわれ全員揃ったところで、一斉に足を踏み鳴らし、面の裏からどこから出しているかわからない奇妙な音を発し民族音楽のセッションみたいになる。それが収まるとともに突然一人が朗々と語り始める。 ...

ハイバイ『夫婦』

岩井秀人の自分史演劇化シリーズの最新作。今回は、理不尽な暴力で子供たちを押さえつけてきた父親の死が描かれる。電話で母から呼び出されて病院にいってみると父親は見る影なくやつれて死に瀕していた。彼は家族全員が揃ったその日のうちに亡くなる。その死の裏には医療ミスがあったんじゃないかと原因を追及する中で自身が有能な医師だった父親の職業意識に触れ、遅ればせながら心の中で微かな和解を果たすというストーリー。いや和解というより理解というべきか。もちろん、それで過去の暴力を赦すわけではまったくないのだが。それにしても、こういう崩壊した家族の物語は特別な感情なしに見られない。 ...

リクウズルーム『アマルガム手帖+』

まったく予備知識なしでチラシに書かれていた「美しき数式戯曲エンターテインメント」という惹句を見て見にいくことにした。どの辺が数式かというと、戯曲の一部の役名やセリフが数式みたいな形式で書かれている。数学的に厳密な数式ではなく、数学記号に接続詞的な役割をもたせたなんか不思議な記法だ。アフタートークでの話によると作・演出の佐々木透さんは上演ではなく戯曲を第一の成果物と捉えているタイプの人らしく、それをどう上演するかは特に決めてなかったそうだ。実際どうなったかというと、ブライアリー・ロングさんがフランス語と英語で数式をそのまま読み上げていた。彼女はまったく疑問をもたずそうしてそれがそのまま採用されたようだ。数式は字幕にも表示される。 ...

青年団リンク ホエイ『珈琲法要』

史実に基づいた物語。 19世紀初頭江戸幕府の封建鎖国体制が続く日本に対してロシアは開国を求めて度々南下してきていた。そこで幕府は弘前藩に命じて藩士、領民を動員して蝦夷地の警護に当たらせる。ロシアからの攻撃はまったくなかったが、寒さと栄養失調により彼らは次々と病に斃れてゆき、7割以上が死ぬ大惨事になった。 ...

ナイロン100℃『消失』

11年前の初演を見ているし、キャストはその時とまるっきり同じだし、3年前に戯曲を読んだばかりだし、新鮮味を感じないんじゃないかと危惧していたが、ぼくの忘却力は思っていたより偉大だった。初演同様いやそれ以上に鮮烈な観劇体験だった。というのには、11年前より現在のほうが戦争やテロ、またそれによる文明崩壊への恐れがリアルになっていることもあるかもしれない。 ラスト。6人の登場人物のうちの亡くなった3人の人物が舞台に一瞬だけ現れて、去った後影だけが残る演出に背筋がぞわぞわした。 兄のチャズ役の大倉孝二は実年齢が役の年齢に近づいた分、初演より役にはまって熱のこもった演技だった。 ...

『タニノとドワーフ達によるカントールに捧げるオマージュ』

カントールって集合論の人かと思ったら違った。タデウシュ・カントール。ポーランド出身の前衛的な演出家、美術家で今年が生誕100周年だったらしい。日本では主に寺山修司によって紹介されたそうだ。今回は彼へのオマージュということで庭劇団ペニノのタニノクロウに委託して新たに作り出された(というかワーク・イン・プログレスなので正しくは作り出されつつある)舞台だ。 ...

城山羊の会『水仙の花』

城山羊が三鷹でやるときにはつい期待してしまうが、今回も劇場の名物担当者森元さんが出てきて拳銃で撃たれてくれた。 城山羊の会はどの作品にも多かれ少なかれ暴力の香りを感じる。前作はリミッターを外しきった感じだったが、今回は血のにおいを花のにおいの裏に隠して、スタイリッシュになっていた。 ...

『God Bless Baseball』

日韓合同作品。舞台上では日本語、韓国語、そして英語が飛び交い、それぞれの翻訳が表示される。 岡田利規は日韓関係は扱わないと決めていたそうだ。 野球のルールがわからないという若い女性二人に男性がルールを教えようとするがどうもうまく伝わらない。そういう彼も少年時代のトラウマで今は野球が嫌いになっている。そこへイチロー(のニセモノ)があらわれる。韓国語を話す男性が実は日本人の役で、日本語を話す女性が実は韓国人の役でというギミックもあって、前半ひたすら楽しい。 ...

地点+空間現代『ミステリヤ・ブッフ』

どんな材料を使ってもみじん切りにして餃子になってしまうのが地点の芝居だ。今回はその餃子に生演奏がついている。 もともと地点の芝居は観念性はほとんどなくて、ほぼ身体性で構成されているのだけど、音楽が加わったことで、さらに際立った。途中、音楽的な興奮がとても高まる箇所があり、ちょっと感動した。そこをクライマックスにしてもう少し短く切り詰めてもよかったもしれない。 ...

パリ市立劇場『犀』

パリのテロ直後のタイミングでパリ市立劇場の公演を見ることになるとは。突進してくる犀から逃げ惑う人々にテロの恐怖を感じずにはいられなかった。演出家はテロの影響で来日できなかったそうだ。 ...

サンプル『離陸』

兄が弟に、妻と一緒に一晩過ごしてその夜起きたことを逐一漏らさず報告してほしいと依頼する。夏目漱石の『行人』から借りてきたシチュエーションだが、舞台は現代だし登場人物ひとりひとりの個性が際立っている。兄はもともとパフォーミングアーティストで今は大学で教えている。とても繊細で傷つきやすい人間だ。妻は元彼の教え子だった。奔放だが自分を空っぽだと思っていて外から来るものを拒まない。弟はフリーターで現在無職。小説家志望で一つの職を長く続けることができない。倒れた母の介護のために三人は一緒に暮らすことになる。夫婦の間には通常の性的関係はない(代わりに二人で奇妙なパフォーマンスを行う)。兄は女性に性的興味を持てないのだ。兄と弟の間にはホモセクシャルな愛情がある。 ...

カタルシツ『語る室』

イキウメ別館ということだが、ほぼほぼイキウメそのままの舞台だった。もちろんそれが悪いということは全くなくすごくよかったのだが、だったらイキウメでいいじゃないかと思ったのも事実だ。 ...

ヨーロッパ企画『遊星ブンボーグの接近』

SFっぽいタイトルでテーマは文房具というから筒井康隆の虚構船団的なものを想像していたら全然違った。 近くの遊星から地球に観光客にきている体長数センチの宇宙人ツアー客の一行。彼らが立ち寄ったのは平凡なOLが住む一室。テーブルの裏には彼らの身体くらいの大きさの文房具が置かれている。彼らの星では電子化が進んでいるため文房具は珍しいのだ。彼らが部屋を探検していると、予想外なことにその部屋の住人であるOLが帰宅する。あわてて隠れようとする彼らだったが……。 ...

KERA・MAP『グッドバイ』

太宰最後の未完の小説をベースにウェルメイドなコメディーに仕上げた作品。戦後数年後の東京。編集である田島は、田舎に妻子をおいたままで、闇商売に関わって巨額の財をなし、十人近くの愛人と付き合っていた。そんな彼が、愛人と手を切り、妻子を田舎から呼び寄せようとする。そのための策略としてどこからか見つけてきた超美人の女性に妻の役を演じてもらって愛人たちの元を訪ねることにする。その白羽の矢がたったのがキヌ子という闇屋で働くだみ声の女性だ(小池栄子がいい声を出していた)。そのたくらみがあたったのかどうか、彼は愛人たちに次々に別れの言葉「グッド・バイ」を告げられていく。そして思ってもみなかった相手からも……。 ...

チェルフィッチュ『女優の魂』

このテキストは小説として書かれたもので、それをそのまま上演しようと主演の佐々木幸子さんが言い出したことからこの企画がはじまったらしい。 長さ40分のひとり芝居。終始ある女優(といってもすぐ元女優だとわかるのだが)の独白という形で進行する。なぜ今は女優でなくなってしまったのかという理由は少しずつ明らかになるが、それが意外性に満ちていて、あっという間に引き込まれる。その物語を通して浮かび上がってくるのは作者の岡田利規の演劇観、芸術観だ。 ...