青年団リンク ホエイ『麦とクシャミ』

麦とクシャミ

雲の脂』、『珈琲法要』ときてホエイをみるのは3作目だが、今回が一番おもしろかった。

太平洋戦争の戦況が厳しさを増す1944年、北海道の麦畑が広がる平野に突然火山が隆起した史実(当初はその事実は機密とされ、のちに昭和新山と呼ばれる)に題材をとった作品だ。見る前は、話題の映画シン・ゴジラ(見てないが)的に職務を遂行する人々の姿を描いた作品なのではないかと勝手に思っていたが、違った。

火山マニアの郵便局長、鉄道の保全・復旧にあたる満州帰りの陸軍の兵士、過去のある郵便局員、そして土地を失った入植者たち。描かれているのは人々がそれぞれの立場で天変地異と戦争に翻弄される姿だ。苛酷な状況でも人々はたくましく生き抜いていく。

火山による空震、噴煙、礫の飛来、そして火山そのものを舞台で表現するギミックの発想が素晴らしい。そのパワーとともに(主にそれをみているひとの言葉や表情を通して)美しさが要所要所で表現される。それがなんともいえず感動的だった。

役者では郵便局員柏を演じた伊東毅がよかった。

作・演出:山田百次、プロデュース:河村竜也/こまばアゴラ劇場/自由席3000円/2016-08-13 19:00/★★★

出演:中村真生、宮部純子、緑川史絵、朝比奈竜生、山田百次、伊東毅、河村竜也