明後日というのは小泉今日子さん個人のプロデュース会社だそうだ(洒落た名前だ)。場内のアナウンスは小泉今日子さんが担当していた。 窓の外から建設中の塔がみえる高層マンションの一室。そこには元パイロットの高齢男性サワダが病気療養のためひとりで暮らし、通いの家政婦の玉田が毎日世話のためにやってくるほかは息子のミキオ、その妻のソノコが時折顔をみせる。 ...
2年前に上演しようとしてコロナで中止になった作品の新規まき直し。そのときとはかなり変更したらしい。でもコロナ前の2019年が舞台の物語だ。 ...
中央に白い机と椅子、棺のような箱が置かれ、その周りを客席が取り囲んでいる。ちょっとままごとの『わが星』を思い出した。 事故で10年以上植物状態でいよいよ人工呼吸器を外すという奇妙な時間差のある死の形をテーマにした作品。家族はもう思い出は何も残っていないと言う。だから進んだり戻ったりの日付のコールに続いて、展開されるのは思い出ではなく複数の視点からの過去の日々の断片だ。そこには昏睡中である患者のものも含まれる。類似項として、山で遭難して10年以上遺体が見つかってないケースの関係者も参加してくる。 ...
今年初観劇は久々のヨーロッパ企画。 今はなき香港の九龍城とそっくりな九十九龍城という魔窟が舞台。事件の捜査で二人の刑事が遠隔から九十九龍城の屋上の一角を監視する。彼らは謎の最新技術を使って壁の裏側までみることができる。肉屋の家族、パイフォンというバチものを作っている作業場、行方不明の兄を探しつつショーパブで踊る女性と彼女に親切にする「大家」。「大家」は看板の裏の補強材の上で眠る人たちから家賃を徴集している。刑事のうちひとりが無断で潜入捜査をはじめるのと時を同じくして肉が四角くなったり壁を通し抜けできたりする謎の現象があちこちで発生する。 ...
2018年12月以来の城山羊の会。前回のときにしばらくおやすみといわれてさみしく思っていたが実は昨年末も公演があったらしい。教えてほしかった。 ...
ナイロンとしては3年ぶりの新作公演とのこと。今回は徹頭徹尾100%混じり気なしのナンセンスコメディー。主人公は鈴木タモツという持病をもつ少年(でも39歳)で、実の母親に保険金目当てで殺されそうになるが助かって孤児院に入る。そこを訪ねてきた政府関係の組織の会長に見初められ、近々開催される世界の強者が競う大会に地域代表として参加することになる。出場予定の選手は謎の円盤に攫われてしまったのだ。それと並行して探偵が自分に依頼されるはずの4つの事件を追って探索し、図書館を経て孤児院にやってくる。 ...
80歳を目前にした女性というか彼女が住む築40数年の家が主人公と言った方がいいかもしれない。亡き夫の命日で家族が集まる日。彼女にはこの家を設計した建築家の姿が見え、話すことができるが、他の人には見えない。彼は現実の建築家の幽霊というよりこの家の精霊のようだ。 ...
タイトルと男ばかりの配役からギャングものを想像していたが、よい意味で裏切られた。 夢を共有する幼なじみのロクとシドは、とある療養施設で警備の仕事をし、施設内の同じ部屋に住んでいる。その施設には死者を蘇生させる研究をしているという噂があり、疑いをもっている先輩警備員モオリは、兄が施設にいるというトンビを連れてきて、二人の上階に住まわせる。部屋には施設の運営側の安西がたびたび訪れ特にシドに目をかける。モオリに影響を受け同じく疑いを強めていくロクと、運営に引き込まれていくシドの間には徐々に溝が広がっていく。 ...
なんと2010年以来の猫のホテル。30周年記念公演とのこと。劇中のセリフに、季節が変わるたび自分が置いていかれているような気がする、というのがあるのだが、みなさん驚くほどお変わりなく、相変わらず絶妙な笑いを繰り広げていて、誰も置いていかれてはなかったと思う。 ...
『ロミオとジュリエット』も含めて広い意味で心中ものは苦手だが演出家とキャストにひかれてみることにした。 二組のカップルが主人公。まじめ一方だった飛脚宿の養子忠兵衛は偶然遊女梅川と出会い互いに思い合う仲になる。折り梅川には身請け話が持ち上がる。忠兵衛と同郷の幼なじみ古道具屋の若旦那与兵衛はおひとよしでやさしいが商売に実が入らない。彼は忠兵衛に梅若の身請けの手付け金を貸してほしいと頼まれ快く店の金を渡してしまう。与兵衛はひとりで店を出て行こうとするが彼を慕う妻のお亀もついてくる。一方、忠兵衛は行きがかりで届ける途中の公金に手をつけ、梅川を身請けする。こうして二組のカップルの逃避行がはじまる。彼らのトーンは片やシリアス、片やコミカルで対照的だが、それでも終着点に待ち受けるのはどちらも「心中」だ。 ...
『砂の女』の原作を読んだのははるか昔で、ストーリーは骨格だけ覚えていた。タイトルに引きずられて女が主体的に男を監禁するような印象を持ち続けていたが、実のところ女もまた被害者で、砂を中心としたシステムが主体で、そのシステムの維持のための労働力として男が必要とされたのだった。 ...
出身地と離れた地方都市で二十年ぶりに再会した同級生山鳥芽衣、寺泊満の会話が物語のペースメーカーになる。最初ありきたりの近況報告なのだが、話すことがなくなり、それぞれが最近体験している奇妙な出来事にうつる。寺泊満は、ある手品師との出会いを機に世界の新しい見方を習得し、その本質的な美しさと醜さに驚き、律儀に仕事を続けることが馬鹿馬鹿しくなってくる。山鳥芽衣は「無」と書かれた荷物が届いた直後から家の中に闇が広がりはじめ、ついには部屋の中で何も見えなくなり、闇の中をさ迷ううちに500メートル離れたビルの屋上に移動する。家に戻ると見知らぬ少年が闇に中にいて、記録を確認すると何年も前から彼女の養子ということになっていた。 ...
二組の親と子の物語。親が子になにを伝えるかということがテーマだと思う。母は、50年間イタコ見習いの娘を不憫に思い、自ら伝説のイタコとなる。一方、父は神から盗み出した「言の葉」を息子に伝えようとする。父と母を年若の高橋一生と前田敦子が演じ、息子と娘をはるかに年長の橋爪功と白石加代子が演じるのがおもしろい。この二組は対照的で、考えてみると、人間は次の世代に、技術と物語を伝えてきたのだ。そう。「言の葉」は当然物語のことで、野田秀樹自身が演じるシェイクスピアとその息子フェイクスピアがその物語を駆動するものと当然思った。 ...
なんと今年初めての観劇。演劇という習慣がぼくの人生からドロップしそうな雰囲気を感じていたところで、偶然この公演をみつけてチケットをゲットした。 ...
とあるスペインの学生寮が舞台。そこに暮らす学生三人と講演のために訪れた高名な学者と画家。5人の人物はそれぞれ歴史的に名をなした人物をモデルにしているけど、その名前は劇中では明かされない。それぞれ歴史の流れの中で翻弄されながら、この学生寮の一室で人生が交錯する。 ...
例によってまったく予備知識のないままみたので、出演者の欄に名前を連ねていた松雪泰子さんがでてこないまま1時間足らずで終わってしまって謎だったが、実はAキャスト、Bキャストみたいに分かれていて、ぼくのみた方には登場しないのだった。 ...
もともとはユヴァル・ノア・ハラルの『サピエンス全史』の舞台化という話だったけど、幕が開いてみると、ダイレクトな舞台化というわけじゃなく、参考文献的な扱いになっていた。だが、インスピレーションの大きな源なのは間違いない。どうやって舞台化するんだろうと思ってたが、思った以上に「忠実な」舞台化だった。 怜悧に現生人類(ホモサピエンス)の誕生から現在までの歴史を展開していく『サピエンス全史』の語り口からみると、若干方向性が違う気もするが、なんとダンスつきの音楽劇だった。第一幕ではまず200万年前のホモサピエンス誕生以前の猿人たちのシーンから始まり、『サピエンス全史』で語られる「革命」のうち最初の二つ。まず7万年前の「認知革命」で人類が言語能力を取得するシーン、そして1万年前、「農業革命」で貧富の差が拡大し身分制度が発生したあとの社会のシーンが描かれる。休憩後の第二幕は1616年。異端審問のあとローマ近郊の宿屋にやってきたガリレオ・ガリレイを中心として「科学革命」の幕開きが語られ、最後にそれ以降の人類の発展の歴史が綴られる。原爆灯火や原発事故も出てきたけど、概ね明るい賛歌として幕が閉じられる。 ...
地方の限界っぽい集落の、老夫婦二人が住む家が舞台。息子を名乗る男から電話がかかってきて、今から部下が訪ねるから金を渡してほしいという。古典的な詐欺の手口だが、金を受け取りにきた蔵本は、夫婦二人や近隣の人々の話に逆に翻弄されてしまう。ここでは誰も彼もが多かれ少なかれ認知に問題をかかえているのだ。 ...
男二人、女一人の三人芝居。夫婦がこれから別居しようとしていて運び出す荷物を整理している。妻の方の荷物の一つである男の死体が、傍から引っ張り出されてくる。このままではまずいということで二人は捨てにいくための旅行の相談を始める。死体を車に積み込むと、やがて死体は平然と話し始める。彼は女の亡くなった前夫なのだった……。奇妙な三角関係の旅が始まる。 ...
長いブランクから二度目の観劇だけど、なんというか一度目より今日の方が、こういうものを求めて劇場に通っていたんだな、という気づきが大きかった。前回の芝居も申し分なくおもしろいと思ったのだが、ぼくが芝居に求めているものは微妙に違っているらしい。すぐに思いつくのは劇場のサイズだが、それ以上に役者の数が重要な気がする。たくさんの役者が入れ替わり立ち替わりというものより、少数の役者の演技に集中するのが好きなのかもしれない。まあ、このあたりはあまり言語化しすぎると、おもしろくなくなってしまう気がするので、これ以上深掘りはやめておこう。 ...