酒とつまみ『もうひとり』

去年の8月以来、9ヶ月ぶりの下北沢での観劇。 酒とつまみというのはナイロン100℃の村岡希美さんと元猫ニャーの池谷のぶえさんのユニット。 ...

青山円劇カウンシル♯6 ~breath~『いやむしろわすれて草』

2004年つまり9年前の作品の再演だからなのか、前田司郎というより平田オリザが書きそうな家族劇だった。入退院をくりかえす病弱な三女を中心にした四人姉妹の物語。にぎやかな子供時代と病室で過ごす現在が交互に淡々と描かれる。 ...

庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』

最初ペニノじゃなくベニノだと思っていた。ペニノだとなんだか間抜けな感じだし、なんかアレに似ていておかしいと思ったのだ。そうしたらほんとうにアレだった。椅子、チェスの駒、リコーダー、水筒、マスクの把手などあちこちにアレの意匠がちりばめられていて、思わず手を合わせたくなるくらい大量に出てきた。 ...

水素74%『半透明のオアシス』

母と二人の娘、そして妹の先輩の女、四人が登場人物。 いつもそうだけど、人と人の関係性が抽象化されて、地球じゃない空気の組成が違う星での物語かと思うくらい。だからその分背景の細かい書き込みは必須。それがないと単に説明不足でリアリティを欠いた話になってしまう。今回60分でとてもコンパクトだったけど、もっとふくらませるべきだった。セリフが今ここでの関係性の確認だけになっている。もっと外の世界に言及させないと。最後の急な転調も唐突すぎてついていけなかった。 ...

シティボーイズミックス PRESENTS 『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』

宮沢章夫さんとシティボーイズの組み合わせに強烈な懐かしさを感じてしまったが、ラジカルガジベリンバシステムを生はもちろん映像でもみたことがないので、その懐かしさになんの根拠もないのだった。しかし、本物であれ偽物であれ、実際にこの目でみなくてはすまないことには変わりがない。 ...

ナイロン100℃『ゴドーは待たれながら』(プレビュー公演)

おなじひとり芝居でも観客に物語を語りかけるスタイルの戯曲ならここまで苛酷じゃないだろう。ほとんどのセリフがひとりごと。しかも堂々めぐりを繰り返す。演じる俳優はほんとうに大変だ。そしてみている観客、とくに金曜日の仕事帰りの疲れ切った観客(ぼくのことだ)にとっても苛酷な体験だった。前半途中から、このまま眠りに引きずり込まれてしまったら二度と目がさめないんじゃないかと思うような恐ろしく理不尽な眠気にさいなまれた。 ...

ダックスーププロデュース『音楽家のベートーベン』

ナンセンスコメディをそつなくつくるひとはほかにもいるけど、自分の足元をゆるがすようにナンセンスを突き詰めているのは、今やブルースカイ改めブルー&スカイくらいかもしれない。 ...

ナイロン100℃『デカメロン21 〜或いは、男性の好きなスポーツ外伝〜』

2004年に上演された『男性の好きなスポーツ』の大改訂版。見てはいるがあらかた忘れている。今回は、前回のエピソードの断片を使いつつ、新たな要素を加えて再構成し、まったくちがうものに仕上がっていた……はずだ。全体的に一歩引いた冷めた視線から描かれている。エロスでなく「エロス」という感じ。少なくともとても新鮮だったし、ぼくはこっちの方が好きだ。 作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/CBGKシブゲキ/指定席6900円/2013-02-13 18:30/★★★ ...

FUKAIPRODUCE羽衣『サロメ vs ヨカナーン』

直前まで迷ってギリギリ千秋楽にみにいった。エロとダジャレが飛び交うミュージカル。明らかにぼくのテリトリーじゃない。幕が開くと、いきなり7人の男たちが妙な歌と振付で登場して、まちがったところに来てしまった感が強まり、これから二時間堪えられるか不安になったのだが、終わってみれば掛け値なしに楽しめた。どこがよかったのか、自分自身にもうまく説明できない。間違いなく素晴らしいのは音楽の使い方。人生の歌はよかった。あれで終わったほうが盛り上がっただろうに、そうせずに子供のエピソードで静かにほのぼのと締めたことも含めて、そういうシンプルで暖かい世界観も悪くなかった。なんだかくせになってしまう感じだ。 ...

サンプル+青年団『地下室』

サンプル旗揚げ前の松井周作品の再演。 舞台はおいしい水がヒット商品である自然食品ショップの地下室。水は店長の「息子」森男しか作ることができず、その製法には秘密があった。実は息子といっても血はつながっておらず、スタッフはほぼ全員性的関係を含めた擬似家族的な紐帯でつながっていて、一種カルト化しているのだった。新しい女性従業員の加入が原因で森男が水を作れなくなってしまったことから、この集団は崩壊へと向かっていく……。 ...

昨日の祝賀会『冬の短編』

短編集だし脱力系の歌が冒頭や途中にはさみこまれるから、気を抜いてみていると、にじみ出てくる毒にあてられる。思ったより骨太な芝居だったのだ。 ...

『音のいない世界で』

欲をいえば。 と感想の冒頭に書きたくなる芝居だった。音楽や鳥のさえずりなどの「音」が失われてしまった世界、その音を取り戻すためにはぐれて別々に旅をする夫婦の物語。とてもよくできた大人のメルヘンだった。登場するキャラクターがそれぞれ個性的で子供がみても十分楽しめる内容だが、欲をいえばもう少し深みや苦さがあったほうがよかったと思う。欲をいえば、最後の歌はあまりにも耳慣れたあの曲じゃないほうがよかった。いくらアレンジや歌詞を変えても思わず腰が浮いてしまうメロディーは同じだ。 ...

『祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~』

今年の観劇納め。のはずが納まらないもやもやが残る舞台。4時間超の今年最大の失敗作というのもそれほどひどい表現じゃなくて、というのもあえて成功パターンをはずしにきてこうなっているからだ。その心意気は買いたい。 ...

『ポリグラフ 嘘発見器』

<img src=“http://i2.wp.com/asharpminor.com/wp-content/uploads/2012/12/polygraphe.jpg?resize=171%2C240" alt=“polygraphe” class=“alignleft” wp-image-3820” data-recalc-dims=“1” /> カナダのフランス語圏ケベックで活躍する Robert Lepage の映像作品の舞台化。未解決の女性惨殺事件の関係者3人が登場人物。被害者女性をモデルにした映画のヒロインに抜擢された女優ルーシー、ルーシーの隣人で偶然被害者女性の友人で第一発見者でもあったゲイ男性フランソワ、そしてフランソワの供述を嘘発見器でテストした犯罪学者デイヴィッド。デイヴィッドは旧東ベルリン出身で壁を越えてやってきた移住者だ。 ...

城山羊の会『あの山の稜線が崩れてゆく』

前作は架空の国の設定でリアリティが感じられず入り込めなかったのだが今回は現代日本の一般的な家庭が舞台。父、母、高校生の娘、の三人家族に、今日は家庭教師の先生(男)がきている。成績があがったお祝いにみんなで外食にいこうという話になるが、そこに予期せぬ訪問者がやってきて……。 ちょっと領土問題のメタファーが感じられた。 現実のこれがもしこうだったらとありえない想像をして、それによって幸福を確認するということは、多かれ少なかれ誰もがやっていると思うけど、それが現実になってしまうという悪夢。その悪夢特有の浮遊感にドライブされて、物語は進行していき、ブラックなユーモアに笑い転げている間に、唐突にラストのほのぼのなシーンに到達してあっけにとられる、あっという間の90分だった。 ...

イキウメ『The Library of Life まとめ*図書館的人生 ㊤』

開演直前に大きめの地震というハプニング。そのあと芝居の中にも大きな地震のシーンが出てくるというシンクロニシティー。 イキウメをみはじめて日が浅いので受け売りだが、『図書館的人生』というのは数編の短いストーリーをつなげたオムニバス作品のシリーズでこれまでに3作品上演されている。今回は2回にわけて上演されるその総集編の第一弾。 ...

ハイバイ『霊感少女ヒドミ』

映像と演劇がシンクロするハイブリッド演劇。リリカルな映像と詩情がすばらしい凝縮された60分間。散歩中に迷って10分遅れたのが痛恨だった。ぜひ、もう一度みたい。 ...

水素74%『バラバラ姉妹に憐れみを』

今回に限らず田川啓介の作品はみなそうなのだが、登場人物はみなだれかから掛け値なしの全幅の愛情を得ることを希っている。でも、求めた相手はまったく無関心で別の人に愛情を求める。というn=5のウロロボスの蛇的な構造がある。その円環の内側にはただ一人イマジナリーな女性が存在していて、彼女は彼らが求める全幅の愛情を与えてくれるかにみえる。 ...

青年団『アンドロイド版 三人姉妹』

ぼく的にも初のアンドロイド演劇だが、これまでのアンドロイド演劇は30分弱で通常の演劇と同じ時間くらいの尺ははじめてということだし、ちょうど今日が初日というはじめてづくしだった。そのおかげで平田オリザさんと、アンドロイドの技術を提供した石黒浩さんのアフタートークをきくことができたが、これが本編と負けず劣らずおもしろかった。アンドロイドやロボットに演技させるのには並々ならぬ苦労があるということだし、舞台に登場した2体のアンドロイドとロボットは科学研究費の支援で作られたもので、平田オリザさんの所有という形になっているらしいとか、いろいろ興味深い話がきけた。 ...

パルコプロデュース『ヒッキー・ソトニデテミターノ』

かつて自身が引きこもりだったという岩井秀人が、引きこもりの青年たちとその家族、彼らの社会復帰を手助けする団体の人々を多面的に描いた作品。自身の引きこもり時代を描いた『ヒッキー・カンクーントルネード』の続編ということらしいが、そちらは未見。 ...