五反田団とフランスの劇団ASTROVのコラボレーション。台本は前田さんが書いたが、演出は ASTROV の Jean de Pange が担当して、前田さんは稽古場にほとんど顔をださないようにしていたそうだ。日本側の出演者のちらしのコメントから、意思疎通をはかる上での苦労ぶりが伝わってくる。 ...
改装されてからはじめての芸劇。 前作『南へ』同様、日本人の影の精神史を描いた作品。『南へ』では自然災害と天皇制をテーマにしていたが、今回はオリンピックと満州、731部隊、そしてもうひとつ噂という名の言霊。エッグという架空のスポーツを媒介に現代、1964年の東京オリンピック、1940年の幻に終わったもうひとつの東京オリンピックと時代を遡っていく。そこでエッグはその本来の姿をあらわす……。というのは実は改装中の劇場(つまりこの芸劇のこと)で発見された寺山修司の幻の戯曲を元にした物語であり、入れ子になった二つの世界が互いに干渉しつつ物語は進んでいく。 実はあろうことか10分間遅刻してしまって、その10分間にこの物語の骨格にかかわる重大な場面が含まれていたので、実際みているときは、かなりちんぷんかんぷんの箇所があった(座席的にセリフの聞こえも悪かった)。観劇後にロビーで戯曲が収録された雑誌を買って、それで補いながら今この文章を書いている。 ...
中井美穂さんが出した「落語」、「師匠の部屋」というお題に沿って若手三劇団が競演するという企画。水素74%の田川啓介はそれに対して、共依存的な師弟関係をもってきた。暴力を媒介にしてちょっと同性愛的なニュアンスのある関係。師匠が弟子に教えているのは、落語でもそのほかの芸事や武道でもなく、生き方や考え方のようなもの。若いころに傷害事件を起こした弟子に対して、自分の頭で考えず、俺が考えるように考えろとたたき込み、それをマスターすればお前は俺になるんだ、という一種宗教的な帰依のような二人だけの世界を作りあげている。そこにあらわれるのが師匠の生き別れた娘。借金まみれで虚言癖のあるとんだくわせものなのだけど、師匠は娘との生活という世間並みの幸福を夢みてしまう。安定した関係性が、この娘の出言で突如不安定になり、物語が動き始める……。ラスト、ひとりきりで部屋の真ん中に座っている師匠の姿が想像力をくすぐる。 ...
前作『鎌塚氏、放り投げる』に続いて、世間から完璧な執事といわれる鎌塚アカシを主人公にしたシリーズ第2作。前作もそうだったけど、とことんエンターテインメントに徹しきろうという姿勢が潔くていい。全編笑いにあふれて、しかもチケット代に見合った上品さに仕上げているのはさすがだ。 今回の舞台は豪華客船。アカシが執事を務める公爵家の跡取り息子と、同じくらいの家柄の公爵家令嬢がお見合いをしようとする。ところが、破天荒な令嬢は、無理矢理、付き添いの女中と自分の服装と役割を入れ替える。そこにお見合いの邪魔をしようとする他家の人たちが乗り込んできて……。 ...
母と姉と共に祖母が住んでいた古い家に移り住むことになった中学生の輝夫。家がきしむ音や、大きなクモ、何かいる気配におびえる輝夫が、夜一人でマンガを読んでいると姿は見えないのにすぐそばで男の声が聞こえる。それは暗闇にひそみ人間を観察する使命をおびた種族の一人で、いずれ人間のすむ世界にいくつもりだといい、自分と話したことは誰にも言ってはいけないという……。 ...
ちょっとだけみてすぐ離れてしまったハイバイの芝居をまたみてみようと思ったのは、岩井秀人の役者としての面白さによるところが大きい。妙に弁が立って時折攻撃的になるんだけど、いがかわしくて小心で女々しくてという役を演じさせたらピカイチ、彼が出てくるだけでおかしくなってしまう。このおかしさは、実は彼が作、演出する作品全体を流れているものなのではないかと気がついた。 ...
病人を収容する国立の施設が舞台。そこでは代表のルートを頂点に専門職員、一般職員、患者という厳然としたヒエラルキーが存在し、患者は番号で呼ばれている。そんな中、患者6457号が死亡し6459号が出産するという想定外の事件が連続して起きる……。 ...
A県のK町。東京から360kmはなれたその町で、2012年7月9日午前7時39分通学のために最寄りのローカル駅に向かう女子高生が水たまりを飛び越えくしゃみをした一瞬を停止させて、その一瞬を何度何度も変奏曲というかラヴェルのボレロみたいに少しずつ肉付けをしていきながら物語っていく。その合間合間に間奏曲的に唯一の出演者にして語り手の自虐的(というか太宰治的?)なMCがはさみこまれるという構成。音楽的な高揚と、セカイ系的に日常と宇宙が結びつく想像力、そして数値への偏愛が垣間見える、『わが星』の系譜につながる佳作だと思う。 ...
5月に主宰のイケテツこと池田鉄洋が、この表現・さわやかのほうに専念したいということで、古巣の劇団猫のホテルを退団したとのこと。出演者がかなり共通していることもあって、表現・さわやかは猫のホテル内のプロジェクト的な色彩が濃かったが、これからは名実ともに独立した劇団としてやっていくようだ。 ...
劇場がある場所も含めて何の予備知識もなく初マープとジプシー。 今までみてきたいくつかの劇団の芝居が頭にオーバーラップする。音楽の有機的な使い方はままごとの『わが星』だし、身体を酷使するする動きがあるところは東京デスロック?(一度しかみてないのであやふや)、役者がある役を演じていうセリフと物語の外から物語を説明していうセリフが混在するところと、不思議な振りつきで発話するところはチェルフィッチュに似ている。 ...
本多劇場の地下にある楽園という名の不思議な劇場。もともと飲食店だったものを改装したようだ。 スキラギノエリという架空の王国の王宮を舞台にした作品。妖艶な王妃、頼りない国王、問題児の王子、そこに異国から突然あらわれた家庭教師と、のっけからこれからどこへ連れて行ってくれるのかワクワクさせられた。 ...
もし江戸時代の剣豪と呼ばれた人たちが、現代の日本人みたいな柔和で小ずるい小市民的なメンタリティーをもっていたら、というところからうまれるおかしさと、前田司郎が演じる宮本武蔵の卑屈さと卑怯さのリアリティーがからみあって、奇妙な魅力をもつ時代劇だった。佐々木小次郎と武蔵の決闘があるものだとばかり思っていたが、その前に唐突に終わる終わり方もいい。 ...
原因がわからないまま高速道路で果てしない渋滞にまきこまれる人々。解決の見込みがないまま何日も経過し最初はいがみあっていた人々の間には連帯がうまれる。やがて一年の月日が流れ…… ...
初のイキウメ。 将来を嘱望される若きエリート会社員清巳は自宅の裏山から落ちてきた石に頭を直撃されしばらく会社を休み、その間に仕事からはずされてしまう。そんな中、清巳の一家と長いこと疎遠で、しばらくぶりに見舞いに訪れた叔父怜治の生き方に惹かれ、彼のもとに足繁く通うようになる。怜治は専業主夫で、ボランティアで引きこもりの若者たちに何やら教えている。世界からの呼びかけを聞き取り、そこから読み取った衝動のままに行動すれば、世界の調和が保たれるというのだ。怜治自身子供の頃からそれを信じていていまだに実践している。清巳は仕事をやめることを決意し、怜治の存在が清巳の一家に徐々に動揺させていくさなか、彼の教え子のひとりが事件を起こす。そして町にはこれまで例のない長い雨が降り続く……。 ...
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/本多劇場/指定席6900円/2012-04-28 18:00/★★★ 出演:犬山イヌコ、峯村リエ、萩原聖人、山西惇、大倉孝二、近藤フク、田島ゆみか、廣川三憲、松永玲子、長田奈麻、みのすけ、村岡希美、藤田秀世、水野小諭、猪股三四郎、小園茉奈、安澤千草、伊与勢我無、木乃江祐希 ...
作・演出:岡田利規/神奈川芸術劇場大ホール/自由席3500円/2012-04-21 14:00/★★★ 出演:山崎ルキノ、佐々木幸子、伊東沙保、南波圭、安藤真理、青柳いづみ、上村梓 ...
作・演出:平田オリザ/こまばアゴラ劇場/自由席2500円/2012-04-14 19:30/★★★ 出演:永井秀樹、二反田幸平、井上三奈子、端田新菜 ...
作:長塚圭史、演出:河原雅彦/PARCO劇場/指定席7350円/2012-04-07 19:00/★★ 出演:星野源、木南晴夏、野波麻帆、岡田義徳、福田転球、政岡泰志、伊達 暁、吉本菜穂子、山岸門人、湯澤幸一郎、河原雅彦、高橋和也、松澤一之、ブライアリー・ロング ...
作:テネシー・ウイリアムズ(翻訳:徐嘉世子)、演出:長塚圭史/シアターコクーン/A席7000円/2012-03-31 18:30/★★★★ ...
作・演出:松井周/川崎市アートセンター アルテリオ小劇場/自由席3500円/2012-02-25 19:00/★★★ 出演:古舘寛治、古屋隆太、奥田洋平、野津あおい、岩瀬亮、羽場睦子、稲継美保、川面千晶、菊池明明、とみやまあゆみ、師岡広明 ...