M&Oplays プロデュース『私を探さないで』

今回もかなり難解な作品だ。岩松了は、年をとってから晦渋なマスターピースを作曲したフォーレみたいだ。そのフォーレの曲が劇中で使われていた。 ...

劇団アンパサンド『デンジャラス・ドア』

再演らしい。 とあるオフィスの一室が舞台。女性スタッフ6人がいれかわりたちかわり入退室する。異常に気づくのは最近入社した新人ユウコだけだ。自動ドアでないドアがしばらくすると勝手に閉まるのだ。いやいやそれでもデンジャラスは言い過ぎでしょうと思ったていたら、驚愕のスプラッタホラー展開へ・・・・・・。 ...

KAAT DANCE SERIES『CARCAÇA -カルカサ-』

ダンスを見てると言葉と別の手段でなにかが伝達されているのを感じる。それはつまりコミュニケーションで、ダンスと演劇の共通点はこれまで思っていた以上に多い気がする。 ...

Shakespeare's Wild Sisters Group × 庭劇団ペニノ 『誠實浴池 せいじつよくじょう』

脚本も演出も日台共同とのこと。日本語と中国語がちゃんぽんで語られるが相互に理解可能という設定。 銭湯の廃墟が、戦死した兵士たちを慰めるための風俗店として再利用されている。この銭湯の舞台装置がすばらしい。規則に従い彼らはここで「プレイ」に参加する。彼らが今生に残した未練を解放するのが目的らしい。たまたまか、この夜参加した4人の男たちはみな女性に関する未練をもっていた。ひとりは幼い娘とあまり触れあえなかったことを後悔し、ひとりは病気の妹を自分の手で安楽死させたことを気に病んでいる。残りの2人は同じ女性を愛していてお互いを恋敵だと思っている。 ...

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』

場末の小劇場でドン・キホーテを演じていた老俳優が、自らがドン・キホーテであると思い込み、遍歴の旅に出てしまって困り果てている劇団の面々に診療所のナース名乗る女性から電話がかかってくる。行方不明の老俳優ヘンリー・クリンクルを保護しているというのだ。この冒頭部は文句のないおもしろさで、その先の展開を期待したが…… ...

宝石のエメラルド座『ライバルは自分自身 ANNEX』

「宝石のエメラルド座」というのは作品のタイトルの一部かと思っていたが、実際には団体名のようだ。実体があるわけではなさそうだが、名前を掲げることで今後の公演がやりやすくなるのかもしれない。かつての「演劇弁当猫ニャー」と比べると、まさに180度の転換である。 ...

『ザ・ヒューマンズ─人間たち』

アメリカ・感謝祭の日に再会する一家の物語。 郊外に暮らすエリックとディアドラ夫妻、認知症の祖母モモ、長女エイミー、そしてニューヨークで歳の離れた恋人リックと暮らす次女ブリジッド。彼らが小さなアパートに集い、穏やかな祝祭ムードで始まるが、物語は次第に不穏な空気を帯びてゆく。 ...

『リプリー、あいにくの宇宙ね』

リプリーというのはシガニー・ウィーバーが演じた映画『エイリアン』の主人公の名前。まったく予備知識なしで見たが、今回の作品は『エイリアン』へのオマージュを捧げた音楽コメディなのだった。 ...

イキウメ『ずれる』

イキウメのメンバーのみによる、男5人だけの芝居。 親の事業を引き継ぎ社長を務める輝は、問題行動を繰り返す弟・春に手を焼いている。春は入院していた施設から戻ってくると、佐久間という男とともに何やら怪しげな計画を企てていた。輝が秘書兼家政夫として雇った山鳥は、被災して避難所暮らしをしていた整体師を家に連れてくる。その整体師には、幽体を離脱させたり戻したりする不思議な力があった。彼には、幽体離脱した春の姿も見えている。 ...

劇団アンパサンド『遠巻きに見てる』

オムニバスで見ておもしろかったので単独公演へ。 今回の作品限定かもしれないが、登場人物間の奇妙な人間関係にスポットライトをあてるところや、あて書きしているかのような役者と役柄のマッチングなどが、今までみてきたなかだと城山羊の会に似てると思った。 ...

こつこつプロジェクト『夜の道づれ』

三好十郎が敗戦から5年後の1950年に書いた戯曲作品である。戯曲の形式をとっているものの、必ずしも舞台上演を前提としたものではなく、実際に上演された記録も残っていないようだ。夜道を歩きながら二人の男性が対話を交わす構成であるため、演劇としての上演が難しかったのかもしれない。 ...

チーム徒花『月曜日の教師たち』

小劇場界のレジェンド的な人たちが集まって作りあげた作品。といっても肩に力が入ってはなくて、エンターテインメントに徹した、細かくエピソードをつみあげていく匠の技を堪能できた。 ...

お布団『XXXX(王国を脅かした悪魔の名前)』

駅から15分離れたマイナーな劇場だったこともあってか、道案内をかねて前提知識を解説する音声コンテンツが配布されていた。これは開演してすぐに世界観に入り込めるのでとてもいい試みだと思う。 ...

はえぎわ『幸子っていうんだほんとはね』

なんと15年ぶりのはえぎわ。 セットのない素舞台に役者が勢揃いしてバックステージツアーのシーンからはじまる。空っぽの舞台にたくさんの役者。そのアンバランスさにかすかに不安になるがちゃんと物語が始まった。 ...

ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』

初ヌトミック。4年ぶりの新作長編とのこと。生演奏の音楽が全面に出るところが特長でまさに音楽劇だ。基本モノローグで進行するので最初はチェルフィッチュの音楽特化版かと思った。でも社会批評性はないし、語られるストーリーはそこまで整理されてなくて荒削りな状態だ。 目指す方向性が違うようだ。 ...

『終点 まさゆめ』

今年初観劇。 安楽な老後生活が送れるという惑星《まさゆめ》に宇宙船で向かう船長一人と乗客7人。ところが事故で燃料が流失し1人を放出しなければいけなくなり、まさゆめの生活でで一番役に立たない人を民主的に話し合いと投票で決めることになる。 ...

シス・カンパニー『桜の園』

シス・カンパニーとケラリーノ・サンドロヴィッチによるチェーホフ4大戯曲上演もいよいよ4作目。ぼくは最初の『かもめ』以外の3作をみたことになる。もともと『桜の園』は2020年4月に上演するはずがコロナのせいで中止になりようやくキャストをいれかえて上演することになったのだ。 ...

スヌーヌー『海まで100年』

「静かな時間。今ここには誰もいない・の・ではないかと思う」という語りからはじまる3人の登場人物の朝の心象風景が語られる。彼らは横浜市鶴見区大黒町の物流センターに派遣社員として働いているという共通点がある(ちょうどそのあたりを通って劇場にたどりついたので奇遇な気がした)。彼らの物語るのは実際に起きたことではなく頭のなかで想像してみたこと、ひょっとするとこれから起きるかもしれないこと、そして決して起きないだろうことだ。 ...

城山羊の会『平和によるうしろめたさの為の』

フランス映画にありそうなセックスコメディー。ニュータウン的な地域の小さな公園が舞台。そこに6人の男女がかわるがわるやってきて、公共の場にも関わらず時々隠微な絡みが発生する。彼らの関係性は徐々に明らかになり、まず観客だけが共有する。それを知らない登場人物たちを見ながら観客はやきもきするという展開だ。 ...

テアトロコントspecial『寸劇の庭』

3つの団体による。短編2つ、中編ひとつのコント集。ジャンルでいうとどれもナンセンスコメディー。浮世離れした毒にも薬にもならない笑いのはずで、まあそういうのを求めてもいたのだが、今回はこのジャンルがあまりにピッタリ世の中とリンクしていて驚いた。今やナンセンスコメディーをやるだけで鋭い批評やメタファーになる時代なのだった。 ...