M&Oplaysプロヂュース『クランク・イン』

クランク・イン

2020年の年末に上演された朗読劇『そして春になった』の続編(もちろん見てなくても大丈夫)。あちらは女性関係が派手な映画監督の妻と彼の愛人である若手からベテランに差し掛かりつつある女優がある若手女優の「事故死」をめぐって手紙のやり取りをするという作品だった。

今回はそれから数年が経過し、当時中止になった作品の制作をやり直そうとしている郊外の撮影スタジオが舞台だ。登場人物は『そして春になった』に登場した女優羽田ゆずる、監督の並之木顕之、前回亡くなった堀美晴がやる予定の役を演じる若手女優、ベテラン女優、ゆずるのマネージャー、そして何やら謎の新人女優ジュン。

吉高由里子演じるジュンがとにかく謎だ。ゆずるのファンで女優を目指したというのは嘘ではないようだが、美晴のの死の謎の手がかりを探そうとしたり、美晴と同じアクセサリーを身につけていたりする。またストーリーと直接は関係しないが、彼女と話す人たちの記憶が微妙に混濁して、直前にあったことがなかったことになり、なかったことがあったことになる。彼女は主演の座をつかむことになるが、彼女の目的や意図がどこにあったのかは最後まで判然としない。

そういう不穏なストーリーに否定しようのない現実性を与える岩松了のセリフ回しがとにかくすばらしい。そしてジュンの役柄はあて書きのように吉高由里子のマッチしていた。彼女がそういうならそうだろうとという説得力を与えていた。

要素を分解するとあちこちあら探しできるのに総合的には文句のつけようがないという、不思議な作品だった。

作・演出:岩松了/本多劇場/指定席8000円/2022-10-08 18:00/★★★★

出演:眞島秀和、吉高由里子、伊勢志摩、富山えり子、石橋穂乃香、秋山菜津子