Odéon - Theatre de l`Europe 《The Glass Menagerie》

The Glass Menagerie

以前長塚圭史演出でみたが今回はベルギーのIvo Van Hove演出。(原語は英語なのに)上演も全編フランス語で日本語と英語の字幕が表示される。英語以上にフランス語だと字幕に頼るしかなく、舞台よりそちらに注意をもっていかれたり、スペースのせいで細かいニュアンスが省かれたりするのはまあ仕方ない。

けっこう異色の演出だった。舞台にイスはなく登場人物はスタンディングか床に直に座る。ローラの脚の悪さをまったく感じさせず活発に動き回る。あと、これは自分で気がついたわけではないが、ラストシーンでロウソクを吹き消さない。

かつての華やかな娘時代を懐かしむアマンダ、人々を避けガラスの動物園の中に閉じこもるローラ、「映画」という名目の冒険にふけりこの家から出ていくことばかりを夢みるトム。それぞれの幻想の世界に現実の世界に生きるジムが希望をもたらすんだけど、それはひとときのものでいままで彼らをかろうじて支えていた幻想の土台を揺るがせ、むしろ圧倒的な絶望をもたらし、それが折れたユニコーンの角という象徴に集約される、という物語りの骨格はもちろんそのままだが、病気のセカンドオピニオンみたいなもので、違う演出で見ることにより、その作品のより客観的な姿が浮かび上がる。ジムの存在にもいかがわしさを感じたが今回は彼自身は掛け値なしに誠実な男だし、アマンダは昔を懐かしむだけの愚かな女ではないし、(何せメインキャストであるIsabelle Huppertが演じてる役だ)、ローラもある意味ふつうの等身大の女性だ。トムの巧みなレトリックでこの物語が悲劇であるように思ってしまっていたが、ロウソクを吹き消さないところとか、この舞台では喜劇としての側面を強く感じた。

もらったパンフレットでわかったのだけど、これはテネシー・ウィリアムズの実際の家族の話に近いようだ。姉の名はローラで精神を病み長期療養していたし、母はひとりで二人の子どもを育てた。トムが言う「この劇は記憶だ」というセリフも追憶劇という意味だけではなくテネシー・ウィリアムズの実人生が反映されているということだったのだ。

劇の内容とは離れるが出演者が4人とも国立演劇学校の出身というところに感心した。素人が感覚で演じることが尊ばれてしまう日本の現状からはかけ離れた環境だ。

作: Tennessee Williams, 演出: Ivo Van Hove/新国立劇場中劇場/A席7700円/2022-10-01 19:00/★★★

出演: Isabelle Huppert, Justine Bachelet, Antpine Reinartz, Cyril Guei