M&Oplaysプロデュース『いのち知らず』

いのち知らず

タイトルと男ばかりの配役からギャングものを想像していたが、よい意味で裏切られた。

夢を共有する幼なじみのロクとシドは、とある療養施設で警備の仕事をし、施設内の同じ部屋に住んでいる。その施設には死者を蘇生させる研究をしているという噂があり、疑いをもっている先輩警備員モオリは、兄が施設にいるというトンビを連れてきて、二人の上階に住まわせる。部屋には施設の運営側の安西がたびたび訪れ特にシドに目をかける。モオリに影響を受け同じく疑いを強めていくロクと、運営に引き込まれていくシドの間には徐々に溝が広がっていく。

岩松了独特の、相手の発話の根拠を揺さぶって、延いては存在の根拠を揺さぶっていくセリフ回しを思い切り浴びることができた。今回はその揺さぶりが、登場人物の感情や関係性だけでなく、物語の設定からも生まれていた。何を信じるかということによる社会の分断、あそこ(陰謀が進行し事件がおきる場所)とここ(日常)の間の乖離、「言葉じゃない」と言いながら死んでいった少年・・・・・・。舞台上だけでなく外に向けた比喩的な広がりを感じさせてくれた。

勝地涼さんよかった。

作・演出:岩松了/本多劇場/指定席7500円/2021-10-30 18:00/★★★

出演:勝地涼、仲野太賀、新名基浩、岩松了、光石研