これまでみてきたなかで一、二を争う難解な作品。岩松作品はもともと登場人物の心の動きが、饒舌に本心を隠す形で難解になるのが味なのだが、今回はその本心がなかなか見えない。しかもストーリーも錯綜としている。 ...
舞台は銀座。かつて海でいまもカモメの菅がかいま見え、風向きによっては潮の香りがする場所。とある兄妹を主軸とする物語。彼らの家庭を崩壊させた父のかつての愛人葉子と兄アキオはいま親しい関係にある。兄に弁当を届けに来た妹イズミはそれを知る。というベースラインの物語は、銀座で暮らす若年浮浪者二人組のうちひとりとみが考えた創作だった。ところが、創作の登場人物たちが現実化し、創作をしたとみたちの姿が希薄化していく。 ...
2020年の年末に上演された朗読劇『そして春になった』の続編(もちろん見てなくても大丈夫)。あちらは女性関係が派手な映画監督の妻と彼の愛人である若手からベテランに差し掛かりつつある女優がある若手女優の「事故死」をめぐって手紙のやり取りをするという作品だった。 ...
明後日というのは小泉今日子さん個人のプロデュース会社だそうだ(洒落た名前だ)。場内のアナウンスは小泉今日子さんが担当していた。 窓の外から建設中の塔がみえる高層マンションの一室。そこには元パイロットの高齢男性サワダが病気療養のためひとりで暮らし、通いの家政婦の玉田が毎日世話のためにやってくるほかは息子のミキオ、その妻のソノコが時折顔をみせる。 ...
タイトルと男ばかりの配役からギャングものを想像していたが、よい意味で裏切られた。 夢を共有する幼なじみのロクとシドは、とある療養施設で警備の仕事をし、施設内の同じ部屋に住んでいる。その施設には死者を蘇生させる研究をしているという噂があり、疑いをもっている先輩警備員モオリは、兄が施設にいるというトンビを連れてきて、二人の上階に住まわせる。部屋には施設の運営側の安西がたびたび訪れ特にシドに目をかける。モオリに影響を受け同じく疑いを強めていくロクと、運営に引き込まれていくシドの間には徐々に溝が広がっていく。 ...
例によってまったく予備知識のないままみたので、出演者の欄に名前を連ねていた松雪泰子さんがでてこないまま1時間足らずで終わってしまって謎だったが、実はAキャスト、Bキャストみたいに分かれていて、ぼくのみた方には登場しないのだった。 ...
これまでベテラン俳優を使って数々のメロドラマを作りあげてきた岩松了が今回は20代主体の若手キャストで挑む。 染色会社の二代目社長の田宮慎一郎は結婚して一年の妻いずみや従業員たちと別荘に避暑に来ていたが、急な仕事が入り、いずみの相手をさせるため後輩の北島を呼ぶ。周囲の噂になる二人に対し、慎一郎はむしろ噂や忠告をする者たちを責める。 ...
1992年の初演から26年ぶりの再演とのこと。 田園都市線市ヶ尾駅からちょっと離れた一軒家に住む三兄弟。かつての田園地帯も今や車がけたたましくゆきかう場所になっている。そんな彼らの家を頻繁に訪れる近所の魅力的な人妻。いわば、彼女は三兄弟のアイドルだ。彼らはそれぞれ、まるでかつての騎士のように恋愛感情とは別の次元で彼女を崇拝しているのだ。 ...
岩松了が若手俳優たちとタッグを組む公演もこれで3回目。俳優陣は総入れ替えだが、自分と等身大の俳優の役を自分の芸名そのままで演じ、これからひとつの演劇作品を上演するための稽古中、というフォーマットは今回も共通だ。 ...
小劇場の岩松了はシアターコクーンなど中劇場の商業的な舞台の時とは別物だ。いや、不可解さというのは共通している。ただし、中劇場では登場人物の内面にとどまっている不可解さが小劇場では物語の前面にしみだしてくる。 ...
あまりにタイトル(ゴダールの『ベトナムから遠く離れて』のもじりだ)になじみがあって、観たことがあると勘違いしていた。内容をまったく思い出せないのもど忘れしているのだと思い込んでいた。実際は初演の蜷川幸雄演出版は観ていなかったわけだ。つまり今回の作者の岩松了本人演出版が初見。 ...
定年を迎え悠々自適の生活の元教師の夫野村と年の離れた後妻雪子、そして婚家から出戻り中の先妻との間の娘かすみ。かすみの夫石塚は舞台に登場せず、代わりに彼からのメッセンジャーとして部下の若者多田が定期的にやってくる。実は多田は雪子に会いにきているのではないかと、かすみは疑いの目を向ける。そこに石津から送り込まれたもう一人のメッセンジャー青木が登場する……。 ...
ほんとうは先週見るはずだったのだが、仕事のトラブルでチケットをふいにして、再チャレンジした。 岩松了の1989年の戯曲だ。娘の結婚式の日の夜、畳に蒲団が二組敷かれた古い日本家屋の夫婦の部屋。いかにも小津映画的なシチュエーションだが、登場人物やその間の関係性はかなり異形だ。夫は謹厳な高校教師だが性的な欲望が強い。若い後妻である妻はその欲望を受けとめきれず落ち着ける居場所を求めてアパートを借りようとしている。そういう緊張感をはらむ夫婦の寝室にいれかわりたちかわり奇妙な人々が訪れる。体調を崩したバスの運転手、不安定で共依存的な妻の弟夫婦、近くのアパートにひとりで暮らす夫の妹、住み込みの家政婦、近所の飲み友達、そして妻の前夫。 ...
岩松版『家政婦は見た』かと思いきや予想もつかない展開。 弁護士水島慎一郎と経団連会長の娘瞳子はかつて瞳子が容疑者となった殺人事件の弁護で知り合い、無罪を勝ち得、その後愛しあうようになり結婚した。庭付きの古い洋館に居を構え幸福な日々を迎えているかのように見えたある日、昔の事件の真相を知っているという男が現れる……。 ...
16年前の初演は高熱をだしながらみた。芝居の内容はたいていしばらくたつと忘れてしまうのだが、この作品はまだ鮮明に覚えている。 ...
前作のチェーホフ『カモメ』を上演しようとする若者たちの姿を描いた群像劇から3年ぶりの岩松了セルフプロデュース公演。思いおこせば前回は地震の直後で不透明感漂う中での観劇だった。 今回も演劇を上演しようとしているというシチュエーションは同じ。題材は四谷怪談。その中から毒で顔がただれたお岩に対して伊右衛門にそそのかされた按摩の宅悦が不義密通をしかける場面にスポットを当て、この異形のカップルの恋愛譚にしたてようとしている。俳優陣は半分くらい入れ替わっているが主要なメンバーは共通。前回主演女優役だった安藤聖さん(役名も同じ)が劇作家になっていて、彼女の目に映るさまざまな異形のカップルたちが創作のよすがとなる。 ...
第二弾は見逃したので、第一弾以来のシダの群れ。阿部サダヲ演じる森本という男以外は新顔だが、劇中第一弾の登場人物に対する言及がある。わからなくても問題はないが、第一弾を見ていたほうが森本という不可解な男に対する理解は深まるだろう。 今回もゴッドファーザー的なヤクザたちの友情と裏切りの物語だが、小泉今日子演じる酒場の歌手ジニーがそこにからんでくる。第一弾では予定調和の物語を突き崩すパワーを放った森本の実存が、ジニーの存在によってかすんでしまい、単なるかわいそうで危険なアスペルガーに堕してしまった気がする。紋切り型を楽しむ企画とはいえ、ジニーの存在もあまりに紋切り型だった。 ...
2002年に岩松了自身の演出、竹中直人、桃井かおり主演でみたときは軽い芝居だと思っていた。今日観て思ったのは、岩松了の書くセリフの困難さだ。 ...
基本的に芝居の前には予習をしない。感動を最大化するには事前に余計な予備知識はない方がいいと思っていたからだ、でも、今回は多少なりとも補助線があればぼくの貧弱な想像力が正しい方向にジャンプできただろうとこぼしたミルクを嘆いてしまう。 ...
作・演出:岩松了/下北沢本多劇場/指定席6800円/2011-12-23 19:00/★★★ 出演:伊勢志摩、宮藤官九郎、足立理、夏川結衣、岩松了、宮下今日子、金子岳憲、津田寛治、上間美緒、橋本一郎 ...