町田康『夫婦茶碗』

夫婦茶碗

『くっすん大黒』同様、とめどない堕落志向を持った男たちの物語。これを読んでいると何かをうまくそつなくやることはつまらないことで、ダメにしていくことのほうに美学を感じてしまう。『夫婦茶碗』ではそのダメさが主人公の精神まで侵食して、書きかけのメルヘン小説の主人公小熊のゾルバともどもなんかひどいありさまになっていくのだけど、その中で突如光だす妻への愛が、夫婦茶碗に結実するところはまさに詩だなと思ったのだった。

★★★