養老孟司『バカの壁』

バカの壁

筆者が口述した内容を編集者が文章化した本。そのせいなのかなんなのか平易な割に読みすすめにくく感じた。他者への理解をはばむ「バカの壁」についてもっと深くつっこんだことが書かれているかと期待していたのだが、特に目新しいことが書いてあるわけではない。が、個性をのばすなどということより「共通了解」の方が大事だとか、無意識・身体・共同体の復権の必要性などはなるほどとうなずかせるものがあった(一神教が一元論であるというような話はちょっと単純化しすぎだと思うが)。

感想。自由と豊かさへの道をひた走った結果がマクドナルドとオタクかよと思えてしまう現状があって、それに対して時代錯誤的な道徳を復活させようと口走るバカな政治家がいるわけだが、そうではなく人間として当たり前に必要なことは何なのかを脳のしくみという視点からあらためて示したのがこの本だと思う。

自分を振り返ってみても、多くの壁を作って見えるはずのものを見ないで生きている。まずは壁があるのだということに気がつくところからはじめなければ。

★★