シス・カンパニー『桜の園』
シス・カンパニーとケラリーノ・サンドロヴィッチによるチェーホフ4大戯曲上演もいよいよ4作目。ぼくは最初の『かもめ』以外の3作をみたことになる。もともと『桜の園』は2020年4月に上演するはずがコロナのせいで中止になりようやくキャストをいれかえて上演することになったのだ。
『桜の園』は原作戯曲を読んだことがある。舞台でも『桜の園』と題された公演をみたことは二度あるが、どちらもかなり異色の演出・構成が施されてまった別物になっていた。だからちゃんと原作戯曲に沿った形での上演をみるのははじめてだ。
戯曲を読んだときとほぼ同じような印象を受けた。おそらくちょっと誇張されていたと思うが、悲劇的な要素は希薄で徹頭徹尾喜劇だ。だめな貴族階級がだめさ故に没落し、新しいエネルギッシュな中産階級が勃興していく。それを冷徹な視線で描きながら、桜の園で象徴される古き良き物が失われていく寂しさにも目を配る。その後の歴史を知っている者の目からすると中産階級は勃興しきれず、貴族にかわる共産党が圧政をしき、現在もプーチン一派とオリガルヒたちに牛耳られたままなので、複雑な思いを感じざるを得ない。
今回キャスティングが独特だった気がする。意図したものかどうかはわからいないが、全体的に年齢層が高めで、主要登場人物を演じた俳優で20代は大原櫻子さんのみ。30代もひとりもいなくてすべて40代以上だった。荒川良々さんのロバーヒンは意外なキャスティングだが、はまっていた。一番よかった気がする。
作:アントン・チェーホフ、上演台本、演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/世田谷パブリックシアター/S席12000円/2024-12-21 17:30/★★★
出演:天海祐希、井上芳雄、大原櫻子、荒川良々、池谷のぶえ、峯村リエ、藤田秀世、山中崇、鈴木浩介、緒川たまき、山崎一、浅野和之、猪股三四郎、矢部祥太、吉澤宙彦