ナイロン100℃『わが闇』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指定席6000円/2007-12-24 18:00/★★★★
出演:犬山イヌコ、峯村リエ、坂井真紀、岡田義徳、大倉孝二、長谷川朝晴、三宅弘城、みのすけ、廣川三憲、松永玲子、長田奈麻、吉増裕士、喜安浩平、皆戸麻衣
ナイロンとしてはきわめて珍しいことにというかおそらくはじめてではないかと思うが、オーソドックスでウェルメイドな家庭劇だった。
田舎の古い家屋で育った三人姉妹。一家がここに越してきてから31年目の冬から春にかけての物語。母親は姉妹が子供の頃自ら命を絶ち、父親は今や病で寝たきりになっていた。長女立子は父親と同じく小説家で身をたて、次女艶子は嫁いで家を出たものの今は夫と共に実家に身を寄せている。三女類子も家を出て女優になっていたが、スキャンダルが原因で13年ぶりに家に帰ってくる。
何か新機軸があるわけではない。ひとつひとつ丁寧にエピソードを重ねて、笑いと叙情のタペストリーを作り上げている。演劇の醍醐味は、ストーリーの物珍しさじゃなく、リアルな強度をもった場面に目撃者として居合わせることにある、ということを思い出させてくれた舞台だった。特に三女類子役の坂井真紀はたとえようもなく素晴らしかった。