野田地図『キル』

野田地図『キル』

作・演出:野田秀樹/シアターコクーン/S席9500円/2007-12-28 19:00/★★★★

出演:妻夫木聡、広末涼子、勝村政信、高田聖子、山田まりや、村岡希美、市川しんぺー、中山祐一朗、小林勝也、高橋恵子、野田秀樹

「キルことは生きること」。モンゴルの平原では、ファッションデザイナーたちが自分のデザインした「制服」を世に広めるため、血なまぐさい群雄割拠の争いを繰り広げていた。若きテムジンはブランド「蒼き狼」を率いてめきめきと頭角をあらわす。やがて、父から引き継いだ「自由」の型紙(=地図)の外側に「愛」の世界をみつけ、そこで彼は絹という素材と、シルクという女性にめぐりあう。彼は、シルクの心をつかむため、遊牧民の「流れる言葉」でなく、「留まる言葉」による「てがみ」を送り、二人の間には文通がはじまる。しかしゆきかう美しい言葉は、読み書きのできない彼らに代わって、テムジンの部下結髪が代筆、代読したものだった……。

舞台にあるのは「留まる言葉」でなく「流れる言葉」で、それもものすごい速度で流れてゆく。それに遅れないようについていっているうちにいつの間にかその流れの中に巻き込まれてしまった。ラストシーンがとにかくすばらしくて、ぼくはその瞬間だけ輪廻を信じた。

渡辺いっけいの結髪が見たいと思っていたけど、勝村政信の軽快でエネルギッシュな結髪もよかった。妻夫木聡も初舞台と思えないほど堂に入った熱演だった。

今年最後にみた今年最高の芝居だった。