酉島伝法『宿借りの星』ebook

宿借りの星 (創元日本SF叢書)

ありきたりじゃない物語が読みたかった。ありきたりじゃないということにかけては、この本の右に出るものはなかなかないだろう。なにせ主人公マガンダラは四つ脚で歩行し、四つの目で前後を一瞥し、大きな尻尾があるという異形としかいいようがない姿をしている。マガンダラの種族はズァンググ蘇倶という支配的な所属だが、御惑惺様(おほしさま)と呼ばれる彼らの住む惑星には、ほかにもたくさんの種族がいる。かつてこの惑星は人類——卑徒(ひと)と貶められて呼ばれている——に支配されていたが、御惑惺様の力により彼らが集められ、卑徒をこの惑星から滅亡させたのだ。その勝利から数世代分の年月が経過し、惑星と社会それぞれにさまざまな衰えと退廃がみられるようになってきた。

マガンダラは、いきがかりで誼兄弟を殺してしまい、住んでいた俱土(くに)から追放され、咒漠と呼ばれる荒野を彷徨うことになる。彼(性別は「おとんな」と呼ばれる中性的な性なので、「彼」というのもおかしいが)の行く手にはこの惑星をめぐるとてつもない陰謀と運命が待ち構えていた・・・・・・。

前作の短編集でも感じたけど世界観の造形の緻密さがすごい。初長編となる本作では生態系や宇宙論までもが創造されている。そういう細部の作り込みだけでなく、形は異形だけど人間以上に人間っぽい登場人物たちの生き様を描く、物語としての完成度の高さを感じた作品だった。

★★★