酉島伝法『るん(笑)』

タイトルからちょっとふざけた作品を想像していたが、かなりシリアスなディストピアものだった。 世界観と登場人物が共通する、中編といっていいくらいの長さの作品が3篇収録されている。舞台はおそらく未来の日本。そこでは合理的な思考や科学知識が蔑まれスピリチュアルなものが生きる上での共通の基盤になっている。それは衆愚化といえるものではなく実際にスピルチュアルなものが効果をもつ世界になっているようなのだ。言霊がリアルな力をもち、龍が実際に生きて動いていたり、肉体が滅びても魂だけ「触れ合いの街」という別の街に旅立つことになっている。 ...

酉島伝法『宿借りの星』

ありきたりじゃない物語が読みたかった。ありきたりじゃないということにかけては、この本の右に出るものはなかなかないだろう。なにせ主人公マガンダラは四つ脚で歩行し、四つの目で前後を一瞥し、大きな尻尾があるという異形としかいいようがない姿をしている。マガンダラの種族はズァンググ蘇倶という支配的な所属だが、御惑惺様(おほしさま)と呼ばれる彼らの住む惑星には、ほかにもたくさんの種族がいる。かつてこの惑星は人類——卑徒(ひと)と貶められて呼ばれている——に支配されていたが、御惑惺様の力により彼らが集められ、卑徒をこの惑星から滅亡させたのだ。その勝利から数世代分の年月が経過し、惑星と社会それぞれにさまざまな衰えと退廃がみられるようになってきた。 ...

酉島伝法『皆勤の徒』

はじめてお金を出して買ったKindle本。 暴走するナノマシーン、人格のデジタル化、サイバーパンク的仮想世界、さまざまな異形に進化した人類、知性をもつ惑星など最先端のSFのアイディアがてんこ盛りの上に、「塵機」、「兌換」、「形相」など用語が独特で初見では字面からぼんやりと想像することしかできず、わからないままにSFというよりカフカ的な不条理小説として読み進めたのだった。巻末の大森望さんの解説を読んでようやく腑に落ちた。 ...