森岡正博『感じない男』
立心偏に生きると書いて「性」だけど、ちょっと世の中それに振り回されすぎだなと思うことがある。少なくとも男性にとっては、それはそれほど気持ちのいいものではない。だから、多くの男性はもっと気持ちのいいことがあるのではないかと妄想をふくらませ、身勝手な欲望を抱いたりするというのが、本書の洞察のひとつだ。男性としての自分の身体をきたないものと感じる自己否定の気持ちが、さらにその欲望を手に負えないものにしている。
この本のすごいところは、一貫して著者自身のメンタリティーを題材にして、赤裸々に語っていることだ。小説家なら別だが、大学の先生がそこまで書いて平気なのかと心配になってしまう。「制服」→「学校」→「洗脳」→「同一化」→「再生」というロリコン的欲望の分析は、普遍的にあてはまることではないような気もするが、単なる机上の論理でないリアリティーを感じる。
では、この「感じない男」の状態から脱出するにはどうすればよいか。著者はまず「感じない」ということを素直に認めるところからはじめるべきだという。男性としての身体を肯定して、虚脱感でなくやさしさを感じるようになること。それが目標だという。
著者のサイト - 生命学HP :: 生命倫理, ジェンダー, 現代思想, 哲学などの論文とエッセイ
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