オリガト・プラスティコ『西へゆく女』

作:岩松了・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指定席4800円/2003-09-13 19:00/★★

*出演:広岡由里子、宝生舞、長塚圭史、八十田勇一、安澤千草、鈴木リョウジ、矢沢幸治、渡辺いっけい *

意外な組み合わせの脚本と演出。同じ作品を岩松了自身の演出で別の役者で9月19日から上演するという試みも珍しい。そちらの主演の岸田今日子が携帯電話の電源をお切りくださいという例のアナウンスをするという心憎い演出。

人里離れた山荘で暮らす女二人。一人は中年、一人は若い。そこに意識を失って運び込まれた青年。目をさますと彼は完全に記憶をなくしていた…。そこに現れる、園児を殺した罪に問われた元保母とその夫…。

演出がほかのひとであることをまったく意識させない、どっぷりと岩松了の世界に浸った舞台だと思う。岩松了の本では、さすがのケラも遊ぶことはできなかったらしい(いくつか多分台本にないと思われるギャグはあったが)。前半は、久々に岩松了の真骨頂が見られたという感じで、理屈と感情の合間を縫うような台詞、たたみかけるように現れる謎、もう気分が最高に高まったところで、時間が朝から夜に移った後半、ちょっとテンションがさがってしてしまう。スパイというような、日常性を離れたなんでもありの設定は使ってほしくなかった。それは観る方の想像力が足りないせいだといわれればそれまでだが、すべてが絵空事になってしまい、たったひとり死んだ人も、なぜ死ななければいけないか、その必然性がわからなかった。

役者ではわたなべいっけいと宝生舞がよかった。宝生舞はちょっとぷっくりしていたが。