劇団、本谷有希子『遭難、』

遭難、

6年前の再演ということだけど、ぼくは初見。

生徒の自殺未遂があった中学校の職員室が舞台。一見しっかりしていて頼りがいのある女教師里見は、実は極端に自己中心的な性格で、自殺しようとした生徒からの手紙を無視していた。さらに、そのことを隠蔽するために陰謀をはりめぐらす。

里見先生というキャラクターのリアリティーにすべてがかかっている舞台。もともと演じるはずだった黒沢あすかさんが病気で降板してしまったため、男性である菅原永二さんが彼女の役を演じている。里見先生の心の闇はきわめて女性的なもので、それを、女役を演じなれている役者とはいえ、男性が演じたことが、奇妙な効果をあげていたと思う。立体的な実在感は薄れてしまっているんだけど、シュールな感覚がうまれてクライマックスの幻想的な演出に逆にマッチしていた。

戯曲としても、見せるところ、見せないところのメリハリがきいていてとても完成度の高い作品だと思う。

作・演出:本谷有希子/東京芸術劇場シアターイースト/指定席5800円/2012-10-06 19:00/★★★

出演:菅原永二、美波、佐津川愛美、松井周、片桐はいり