『幸せ最高ありがとうマジで!』

『幸せ最高ありがとうマジで!』

作、演出:本谷有希子/PARCO劇場/指定席7000円/2008-11-01 19:00/★★

出演:永作博美、近藤公園、前田亜季、吉本菜穂子、広岡由里子、梶原善

場末にある家族経営の新聞配達店。開演後しばらく無言で配達前の準備をする人々が描かれる中に、永作博美演じるエキセントリックな女(最後まで指名が明らかにならないので以下永作博美演じる女と呼ぶ)が、わたしはここの店主の愛人で7年間不倫してましたと乗り込んでくる。実はそれは真っ赤な嘘で、明るい人格障害を自称する彼女が、誕生日の記念に無差別に家族崩壊をしてやろうと企てたことだったのだ。とはいえ、その家の人々は幸せとはほど遠い。家計は火の車だし、夫はずっと以前から従業員と不倫しているし、再婚したばかりの妻は人間不信で表面的にものわかりのいい妻を演じている。息子は学歴も友達も彼女もなく鬱屈していて、妻の連れ子である義妹にほのかな恋心を抱いている。不倫相手の従業員は典型的なメンヘルでリストカッターだ。

永作博美演じる女は破壊の神シヴァのようでそのパワーにひきつけられた。今回は新聞店の家族を丹念に描いていて、それはリアリティーを高めるにはとてもよかったと思うのだけど、もっと永作博美演じる女に重点をおいたほうがおもしろかったような気がする。

永作博美演じる女の行動は確かに不条理だが、一点のスキもなく自分が幸福だといっていて、だからこそ、何の理由もなく突然ふりかかってくる不幸というものにおびえていて、逆に自分がランダムに不幸をもたらす存在になることによりその恐怖から逃れようとしていると考えれば、そのあまりに破壊的な行動の理由がわかるような気もした。