本谷有希子『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)

正直、「女優になるため上京していた姉・澄伽が、両親の訃報を受けて故郷に戻ってきた。その日から澄伽による、妹清深への復習が始まる。高校時代、妹から受けた屈辱を晴らすために……」という裏表紙に書かれたあらすじにはまったく惹かれず、本谷有希子の芝居(それはほんとうに素晴らしかった)をみた興奮の余波で買ったのだが、いい意味で幾重にも裏切られた。

若い世代の作家で演劇出身だから、会話で読ませるタイプかと思ったら、地の文が濃密に饒舌に連なっている。決して洗練された名文ではなく、むしろぎこちないのだけど、その無骨なまでの力強さが、ぶっとんだキャラクターにリアリティーを与えている。

ストーリーもすごかった。意外なエピソードが次々と巧みに連鎖して結果として悲劇へと練り上げられていく。特にラストシーンは圧巻だ。よくできた悲劇は当然のようにおかしいので、ムヒヒと何度か気味の悪い笑いをもらしそうになって困った。