岩松了プロデュース『カスケード〜やがて時がくれば〜』

岩松了プロデュース『カスケード〜やがて時がくれば〜』

作・演出:岩松了/下北沢駅前劇場/指定席3800円/2011-03-26 19:00/★★★

出演:安藤聖、青山ハル、今村沙緒里、尾上寛之、小林竜樹、駒木根隆介、清水優、滝沢恵、田中慎吾、永岡佑、橋本一郎、裵ジョンミョン、松本ちさ、吉牟田眞奈

地震後初観劇。立ち見が出るほどの盛況だった。

チェーホフ『かもめ』を上演しようとする若者たちの群像劇。トレープレフ役の役者尾上が稽古開始早々に自ら命を絶ってしまったその一ヶ月後の稽古再開の日からはじまり、時間をさかのぼりながら、その死の周辺をえぐっていく。

岩松了はやはり群像劇がすばらしい。ひとりひとりのキャラクターがきわだっている。セリフまわしも相変わらずさえわたっていた。

一人をのぞいて名前がそのまま役名になっていたり、「イワマツトオル」という演出家に対する言及や、出演者の出身母体の劇団として「バンジー・ジャンプ」というどこかできいたような名前が出てきたり、舞台の上の虚構と現実の境界があえてぼかされたような感じなのがおもしろかった。

あらためて、演劇のパワーはすごい。今年はあまりたくさんみられないかもしれないと思っていたが、無理してでもみるべきだと思い直した。きっと、今日詰めかけた観客たちも、こういう心を揺さぶってくれるものに飢えていたのだろう。身体をゆさぶる地震ではなく。