『黴菌』

『黴菌』

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/シアターコクーン/S席9500円/2010-12-25 18:00/★★

出演:北村一輝、仲村トオル、ともさかりえ、岡田義徳、犬山イヌコ、みのすけ、小松和重、池谷のぶえ、長谷川博己、緒川たまき、山崎一、高橋恵子、生瀬勝久

昭和20年、終戦の年。東京郊外で脳病院を経営する一家の没落を描いた、北杜夫の『楡家の人々』を彷彿とさせる物語。病院の院長をつとめる長男、売れない作家であり将校の影武者をつとめる次男、借金まみれの四男。幼い頃亡くなった三男の記憶が一家に影を落とし、武器の部品を製造する工場を経営する父親は若い愛人と離れに閉じこもっている。戦争中でも外の世界をよそに余裕のある生活を続けていた一家だが、終戦とともに風向きが変わる……。

物語としての完成度については、あらをさがせばいろいろみつかるが(というよりあえて陳腐な予定調和をさけている面もあって、そこは好感がもてる)、豪華キャストで、3時間以上の上演時間を感じさせない楽しい舞台だった。ただ、クライマックスで四男が過去の事実に気がついて号泣するシーンは、どこか不自然で、泣かせようとするために作り出されたエピソードに感じられてしまった。個人的にはあのラストシーンがない方がよかったかな。